「他人の顔」感想・書評

これは主に風呂の中で読んだ。風呂に入ってる最中が暇で、人によってはテレビを置いたりスマートフォンを持ち込んでいる兵もいるかもしれないが、僕はもっぱら本、というわけでもなく、たまたまこの本を風呂の中で読む時間が長かっただけ。

  • 物語の概要
  • 再生し続ける物語
  • 人間関係を構築する絶え間ない応酬
続きを読む

ヒトコトへの回答①

先日投稿フォームを設置して、「ちょっとそこのブログを見ているあなた」にひとことメッセージを募集したら何通か頂いた。順番に紹介していこう。

  • 1通目:行人
  • 2通目:仕事
  • 3通目:「カッコイイ」と「めんどくさい」
    • 「カッコイイ」と「めんどくさい」は両立できるのか
    • 「カッコイイ」と「努力」は両立なのか
    • 「かっこ悪」はイヤなのだけど、それなら必然的に格好良さとか努力とか必要なのか
  • 4通目:人付き合いが苦手
  • 5通目:生計
  • 6通目:海外での生活
  • 7通目:対話シリーズ
  • 8通目:パプリカ
  • ひとことどうぞ
続きを読む

オーストラリアに着いた頃の話

去年の6月、僕はオーストラリアにいた。パースという街に降り立ち、その日泊まるホステルを空港で探していた。オーストラリアに来たのはなんとなくだった。ここに知り合いがいるわけでもなく、仕事のつてがあるわけでもない。流暢に言葉が話せるわけでもない。予定や計画があるわけでもない。目標もない。ただ闇雲に、次の行き先をオーストラリアに設定していた。なぜオーストラリアにしたかというと、ワーキングホリデーのビザが取りやすかったから。あまり考えずに決めた。

https://www.instagram.com/p/5n3LxvBvGD/

6月のパースは冬だった。天気が悪く、よく雨が降っていた。空港からバスに乗って市街へたどり着き、予約したホステルまでの道を歩いた。ホステルにいたのは外国人ばかり。受付はフランス人の女性で、フランス訛り独特の英語を話した。あまり上手くない。彼女もワーキングホリデーで来ており、フリーアコモデーションという形で受付業務をする代わりに、ホステルのベッドを支給されていた。つまり無給である。部屋へ案内されると、そこには6つのベッドがあり、衣服やゴミが床に散乱していた。部屋にいたのはフランス人の男性、韓国人の男性、後から仕事を終えて帰ってきたのがアイルランド人、カナダ人だった。

https://www.instagram.com/p/5oyg0XhvHO/

そんな部屋でもホステルの宿泊料は高く、働かないといけないと思った。働くにあたっては携帯と、銀行口座と、TFNという個人番号のようなものが必要になる。同室のフランス人に「何かいい仕事はある?」と聞いたら「建設業」と返ってきた。建設業か、やりたくないなー。しかしオーストラリアでも日本の建設業のバイトと同じで、時給がよい。ホステルに泊まっている(というよりはむしろ住んでいる)多くの欧米人が建設業で働いていた。もともとホワイトカラーだった人や、ラジオ局でDJをやっていた人なんかもみんな「お金がいい」という理由で建設現場に毎日通っているのだ。

とりあえず携帯を買ったりTFNの取得に手間取って2週間かかり、その間は住む家を探したりしていた。ずっとホステルに泊まるのはお金がかかり過ぎる。さらにゴキブリが出たり、Wi-Fiが遅かったりとあまり環境が良くなかったため、早く出たかった。働くには携帯番号とTFNがいるという言い訳を建前に、仕事を探すこともしていなかった。めんどくさくて、何より働きたくなかった。みんな文句を言いながらも、毎日素直に職場へ向かうのが理解できない。いや、そりゃあ生活費が必要だからだろう。そういった割り切りが必要なのは頭ではわかっている。それでも嫌で仕方がない。

https://www.instagram.com/p/6oSr8ABvBe/

住むところが決まり、TFNも携帯も手に入れて、とうとう仕事を探し始めた。レストランやホテル、建設現場などをいくつか回った。海外から来た多くの若者がそういう仕事に就いており、取り柄のない僕はそういう場所でも雇ってもらえなかった。理由はいろいろあった。冬で観光シーズンじゃないから今は募集していないとよく言われた。他には経験不足があった。トライアルで落ちたこともあった。こういう場合は普通、運と根気で乗り切るんだけど、気力が続かなかった。英語が話せて若くて力のあるヨーロッパ人でも、履歴書100枚ぐらい配るのは当たり前と言っていたのに、僕は10枚ほどで諦めた。やる気が続かない。

働いてどうするんだ、何のために働くんだ。オーストラリアまで来て学生のバイトみたいなことをやって、やりたくないことを、なんのために。生活のため、生活費を稼ぐため、そんなことのために、などと考えていると足が動かなかった。目標がない。目的がない。生活のためって、じゃあなんのために生活するんだって思えてきた。生きるため、なんのために生きるんだ。

家の前にある大きな公園には、アボリジナルピープルが集まっていた。彼らは毎日そこに集って、朝から夕方までピクニックのように過ごしていた。ときどき通りがかりの白人オージーに金をたかったりしている光景が見られた。この季節は、よく雨が降った。雨の日に彼らは一体どうしているのだろう。夜はどこで寝ているのだろう。オーストラリアの大平原で生活してたアボリジナルの人たちは、建物の中で暮らすという習慣がなく、室内という狭い環境にいると閉所恐怖症に陥ってしまう、という話を聞いたことがある。

https://www.instagram.com/p/6pMiqaBvJ0/

彼らは一体何がしたいんだろう。僕は何がしたいんだろう。仕事も見つからないままそんなことばかり考えていた矢先、一人の人と話したことがきっかけで、一緒に旅行することになった。遠くスペインから中東にかけての長期旅行だ。しかし僕にはまとまったお金がない。向こうもあいにく、旅行の日程を設けるために時間がかかるということだった。その期間は半年。半年かけて、この旅行のためだけにお金を貯めようと思った。僕は郊外にある、日本人が経営する農場に連絡した。街から50km以上離れたところにある農場で、もしここで働くとなれば、また住む場所も何もかも全て変わることになるため、あとに連絡する先として残していた。ここで引き受けてもらえなければ、別の職場をあたろうと思った。

農場では今働く人を募集していなかった。しかし2週間後でよければ連絡してくれたらいいと言われた。その間にも他の求人に応募した。履歴書を配り、メールを送り、応募はしたが音沙汰がなく、再び農場へ連絡した。とりあえず引き受けてくれるということだった。短期雇用でまかなっている職場では、戦力にならないとわかると2、3日で簡単にクビになる。なんとかしがみつこうと思った。

https://www.instagram.com/p/6Z4zUphvNj/

もし旅行が決まっていなければ、僕はそのまま日本に帰っていたかもしれない。事実、旅行が終わってからまたオーストラリアに戻ったけれど、働くこともなくブラブラしていただけで、1ヶ月のビザを残して帰国してしまった。目的意識を持つということ、具体的な目標を持つだけでこれだけ違う。具体的な目標さえあれば、歩を進めることができる。それはある種のまじない、暗示のようなものに近い。意識すること、自分を騙すことさえできれば何でも暗示になり、なんだって目的になる。それが僕のように旅行といった一過性のものではなく、何か未来に繋げることができれば尚一層良いと思う。目標が次の目標に繋がり、連鎖的に未来を描けたら、ずっと前に進んでいられる。その"仕組み"が大事であり、中身はなんだっていい。何からでも学ぶことができ、何からでも気づくことはあり、何からでも未来に繋がる。夢や未来は結局、なんだって描ける。

https://www.instagram.com/p/5Qz5F7BvCo/

ネットニュースで振り返る2016年

2016年も残り少なくなってきました。前回の岡田斗司夫ゼミを見ていると「私が選ぶ2016年10大ニュース」という内容をやっており、真似しようと思いました。自分の場合はネットから気になったものを、10大と言わず1月から順にさかのぼって振り返ってみようと思います。全てがニュースというわけではなく、ネットで話題になったトピックを取り上げる形になるため、あれが入ってないこれが入ってない、何でこれが入っているのか、という個人の嗜好満載になります。では早速見ていきましょう。

  • 1月
  • 2月
  • 3月
  • 4月
  • 5月
  • 6月
  • 7月
  • 8月
  • 9月
  • 10月
  • 11月
  • 12月
  • どの話題が気になった?
続きを読む

「素晴らしき日曜日」感想・評価

先日、黒澤明の映画について書いた日記にコメントが有り、「素晴らしき日曜日」という映画をおすすめしてもらった。黒澤明の映画はサムライ映画だったりシリアスな映画ばかり見ていたが、今回見た「素晴らしき日曜日」は言わば日常系だった。 どんな映画か全然知らずに見たから良かった。Wikipedia等にはネタバレがあるので、ここにはネタバレにならない程度の概要と感想を載せておこうと思う。

続きを読む

BuzzFeedに載ってた「パパ活女子大生」は労働者の鏡

マジ偉いと思った。俺には絶対できない。

「私にはパパが4人いる」 月100万円を手にする“パパ活”の実態に迫る

詳細は記事を読んでもらったらいいと思うけど、内容は16歳の頃からおっさん4、5人を回して月100万以上稼いでる女子大生(20)へのインタビュー記事。パパ活って言うらしいですよ、いましたねー昔から、愛人契約で月20万とかやってる知り合いいました、それの強化版でしょうか。

続きを読む

日記

銀行へ行ってきた

先日、外貨小切手取立(クリーン・ビル)の手続きやってもらおうと思って新生銀行に行ったが、業務そのものを行っていなかったため別の銀行に行った。この手続は口座を持っていないとやってくれないため、そのためだけに口座を作るのもバカらしく、あらかじめ口座を持っている都銀でやってもらうことにした。京都市は都銀の支店が著しく少なく、四条烏丸に集中している。

平日の昼間12時台、整理券の番号は3人待ち程度だったが、30分ぐらい待ったような気がする。体感だから、実際は15分かもしれない。窓口ではなくブースの順番を待つため、一人ひとりが長い。周りを見渡せば年寄りばかりだ。銀行は老人が蓄えた金で回っているのだろう。順番が回って来るまで、僕は安部公房の「他人の顔」を読んでいた。トイレに行きたかったが、行っている間に番号を呼ばれると困るため我慢していた。

続きを読む

社交性という名の仮面について

自分は極めて内向的な人間である。社交的ではない。それは能力の無さであり、同時に性格でもある。つまり、社交的であることを良しとしない性格。望むべくして内向的であるということ。「もし自分に社交性があれば」「社交的な人間になりたい」とは全く思わないという意味である。それどころか、社交的な人間をちょっと鬱陶しいとさえ思っているところがある。だから、社交的な人にはあまり惹かれない。内向的な人に惹かれ、自分もそうありたいと思っている。

続きを読む

12月日記

f:id:kkzy9:20161206193914p:plain:w300

スマートフォン表示にフッター固定メニューをつけた

メニューっていうかもはやメニューじゃないんだけど、このフッター固定メニューを人のブログで見かけたから、検索したら提供されており拝借した。もともとのメニューはホーム、人気記事、カテゴリ、TOPへ戻るボタンといったメニューらしいメニューだったんだけど、ホームは実質ホームじゃないし、人気記事は記事下の部分をまとめただけだから一つでいい。それらをaboutページ、フォローボタン、シェアボタンに変えてカテゴリとTOPへ戻るボタンはそのまま残した。カテゴリ分けが細かい人は大変だと思う。

はてなブログスマホ画面にホーム・人気記事・カテゴリ・トップへ戻るの複合メニューバーをつけるカスタム - Yukihy Life

続きを読む

タックスリターンのお金を日本に送金できない

オーストラリア絡みの日記もこれで最後かなーと思っていたらトラブル発生。トラブルというか、不注意によるミス。重大なミス。今年の6月頃、オーストラリアのワーキングホリデーを終えて日本に帰国した。タックスリターンという税金の返金手続きを現地で済ませ、向こうの口座に寝かせていた。当時オーストラリアドルのレートはあまりに悪く、レートが上がってから円に両替すればいいやと思って何も調べずそのまま帰国した。これが全ての間違いだった。

  • カレンシーオンラインが使えなかった
  • オーストラリアの銀行から送金できなかった
  • おまけ:スーパーアニュエーション
続きを読む

「スプートニクの恋人」感想・書評

「スプートニクの恋人」を再読した。ああ、このパターンかと初めに思った。「スプートニクの恋人」を初めて読んだのは大学生のときで、話の大筋は記憶していた。そのあと村上春樹の小説をいろいろ読んでから改めて読み返すと、新鮮な気持ちで、ある意味使い古された視点からこの本を読むことになった。

一人の男性が一人の女性を失う物語である。現実がいつの間にかファンタジーと交じり合う物語である。これだけで「国境の南、太陽の西」「海辺のカフカ」「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」と被る(他にもあるだろうけど今は思いつかない)。「スプートニクの恋人」が他の物語と違うのは、失われる女性のことを事細かに書いたところだった。彼女がどういう人間だったのか。何を抱えていたのか。彼女自身の口からも、彼女が残した文書からも語られている。「すみれ」というモーツァルトの歌曲から名付けられた女性を中心とし、彼女を失ったKという男性の物語。感想は「スプートニクの恋人」とその他村上春樹小説を読んだ前提で書いています。

  • 「あちら側」と「こちら側」
  • ミュウについて
  • ギリシャについて
  • すみれは帰ってきたのか
  • 他の作品と比べて
続きを読む