真夜中の、おそらく3時か4時頃だったと思う。

真っ暗で人通りも少ない、街の外を歩いていた。
ぽつぽつとだけある街灯が、かろうじて道を照らし、
時折通る車が我々のシルエットを形作った。

私と友人2人は飲んだ帰りで、電車もなく、
歩いて帰路をたどっていた。

街灯のついた電信柱の下に、サッカーボールが落ちていた。
酔っていたこともあり、友人はそのボールを見つけると
「あ、おい!ボールあるぞ、ヘイ、パース!」
と、その場で遊び始めた。
「こっち、パース!」
もう一人の友人と二人で、ボールを蹴り合った。
私はあきれて、そのまま先へ進み、
二人をほったらかしにして歩き続けた。背後で
二人が何か言っていたが、それも判別出来ないまま、
アルコール漬けのぼぅっとした頭で、黙々と歩き続けた。

二人はまだサッカーボールで遊んでいたようだ。
だいぶ距離が離れてしまったが、声とボールの音でわかる。
それ以外の音は無いぐらい、あたりは静まりかえっていたから。

その、ボールの弾む音がこっちに向かってきた。
背後の少し離れたところでそれは止まった。
「おーい!ボール取ってくれよ!」
かなり後ろのほうから友人が叫んだ。
蹴り間違えて遠くの僕のところまで飛んできたらしい。
僕は、振り返って、あたりを見回しボールを探した。
あいにく、ボールはまだ転がっていて、道路の端のほうへ
入っていくのが見えた。そのままそっちへ歩いていった。
すると、真横の道路端にある街灯の下を、
ボールが通り過ぎていくのが見えた。ボールはそのまま
私のいる場所よりも先へと進んでいった。
私はあわててまた元に振り返り、ボールを追いかけたが
道路は、玉が転がって初めて気づく程度の斜面だったらしく
ボールはまだその先を転がっていった。
私は走って追いかけ、ボールの転がるスピードからして
追いついていてもおかしくない位置に来て止まり、
道路の真ん中から周りを見渡してボールを探した。

そうこうしているうちに友人の一人が、向こうから
近づいてきていた。「おーいボールあったー?」と
やや距離が離れていたから、間延びした声で聞いてきた。
私は振り返り、返事をしようとしたら、ふと、
道路の端から歩いてくる子供の影が目に入った。
(ん?こんな時間に子供が?)そう思っている間に、
そのシルエットは目の前の道路を横断する方向に進んだ。
影は、道路の真ん中の方へ進む途中で急に、大きくなった。
子供だと思っていたそれは、ただ人がかがんだ体勢に
なっていただけで、起きあがり、我々と同じ体格で、
なにやら不思議な動きをしていた。なにか、踊りながら
歩いているように見えた。一瞬光の加減で目に映ったその
姿形は、ピエロの格好をしているように見えた。

ぞっと寒気がした。

(絶対おかしい…こんな時間に街中でこんな格好で、
キチガイだ…刺されるかもしれない…)
そう思った僕は、思いっきり走って逃げようとしたが、
もう、友人が向こうから、すぐ近くまで来ていた。
友人は僕を確認していたようで、まっすぐ、
こちらに向かって歩いていた。友人は気付いてないらしく
私は教えるため叫ぼうとしたが、声が出なかった。
叫んだらまず私の存在が気づかれて、
思いっきりこっちへ向かって来ないだろうか、
そういう考えが浮かんで、出かかった声を
飲み込んでしまった。

そこで目が覚めた。おはようございます。