「梅原大吾 勝ち続ける意志力」感想・書評

日本人格闘ゲーマーとして初めて企業スポンサーがつき、名実ともに"プロゲーマー"になったウメハラこと梅原大吾さんの著書「勝ち続ける意志力」。ずっと気になっていて、ついにKindle版で買いました。

ウメハラと言えば、サンフランシスコで行われたストリートファイターⅢ3rdストライク世界大会における逆転劇が有名で、僕も大学生の時に初めてYouTubeで見ました。プレイはもちろん神がかっていて凄いのですが、海外の世界大会ということもあってか、その盛り上がり方にびっくりしたのを覚えています。


背水の逆転劇

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ゲームを介した成長論

本書では、17歳で世界チャンピオンになった彼が「どうやって世界チャンピオンになったか」についてはほとんど書かれていません。それよりも、31歳の今でも世界の頂点に居続ける彼の「常に世界一に居続けるには」更に、常に自分の成長を追い求めること、強くなることへの探求について書かれています。

この、勝ち続けること、常に成長し続けることに対する姿勢は「得意な戦法は捨てる」「勝ちやすい手段は捨てる」「運が悪くても、相性が悪くても、どんな状況でも、勝てるように努力しないと成長は止まる」といった徹底ぶり。

この本では何度も繰り返し「成長」について書かれています。「大会は目標であって目的であってはならない」。世界一という立場は彼にとって後からついてきたもので、それにこだわると成長が止まる。
彼の成長方法は一言「努力」に尽きます。その努力のしかたも尋常ではありません。詳しくは本を読んでください。ただ、努力についても、間違った努力はやるべきでないと書いています。努力自体が目的になったり、努力が億劫になるようなやり方、休みを求めるような努力では成長できないと説いています。前向きな努力でないと成長に繋がらないと。

彼の努力するスタンスはゲームに限らず成果を発揮します。彼は一時期ゲームの世界を離れ、麻雀のプロになるべく修行を始めます。そこではゲームで世界一になるまで培ったものが通用しませんでした。また一から勝つための努力を始めます。そして3年で、ほぼ最強に近いところまで登り詰めます。彼が凄いのは単にゲームの腕前ではなく、勝つため、勝ち続けるための努力のしかたであることが証明されます。

その麻雀も、頂点まで後わずかというところで辞めてしまいます。そのあたりも詳しくは本を読んでください。

ゲームという分野の挫折

彼はもともとゲームが好きでゲームの道を歩んできましたが、その事自体に常に葛藤があったそうです。子供の頃にテレビゲームやゲームセンターが好きで毎日遊んでいても、いつか誰もがそこから離れていきます。しかし彼はその道を極めるべく努力し続けました。遊びは遠い昔に越えていました。スポーツや勉強、芸術などそれぞれの分野でみんな努力し、成長し、賞賛される。

「何故俺はゲームなんだ。」

彼がゲーム好きで、ゲームに対する本気の取り組みが揺らぐ事はなかったのですが、それが世間一般に認められる事はありませんでした。その自分の努力が、姿勢が、取り組みが、ゲームという分野がいつか認められるだろうと信じてその道を歩んでいましたが、挫折します。

そして麻雀、介護の仕事を経て、またゲームの世界に戻ってくることとなり、2009年、再び世界大会でチャンピオンになり、アメリカの企業からスポンサー契約を持ちかけられ、プロゲーマーとなりました。おまけにギネスにまで載ったそうです。

ウメハラが誰よりもゲームを楽しんでいる

この本で書かれている、成長するための努力の姿勢は、ビジネスやスポーツ、その他あらゆる分野で応用できるという書評を読んだ事がありますが、僕が思ったのはゲームと言えども「世界一」の基準で書かれていますので、まず真似できません。本人も人それぞれの強さや基準があると言っています。

人生の早い段階で、努力や勝負から降りてしまった僕にも楽しく切なく読めました。

何かの道を極めたいという人、とくにマイナーで一般的な賞賛を得られない分野を選んだ人には大いなる励みになります。同時に、その覚悟を問われます。