村上春樹:直子について

これまでも散々ノルウェイの森について日記で触れてきた。僕が初めて読んだのは17歳のときで、僕にとっては「村上春樹=ノルウェイの森」だという風に。実際、他に読んだ本は少ない(ノルウェイの森、鼠シリーズ、ワンダーランド、スプートニク、海辺のカフカだけで、ねじまき鳥もアフターダークも1Q84も読んでいない)。

僕にとってノルウェイの森は、登場人物:直子の記録だという認識を持っている。直子には、モデルがいると言われている。詳しくは知らないが、軽く触れているところがあった。
村上春樹の早稲田時代を歩く-東京紅團

緑は村上春樹の奥さんがモデルだと書かれている。本当かどうかは知らない。この直子という人物は、1973年のピンボールにも出ている。本編には直接関係のないエピソードとして、犬の駅の話が差し込まれている。僕はノルウェイの森を先に読んでいたから、ノルウェイの森の一登場人物だと思っていた直子を、ピンボールで見かけたときにとても驚いたのを覚えている。なんでこんなところに出てくるのだろう。そして、めくらやなぎと眠る女にも出てくる。これは、いとこの耳について、直子が言っていためくらやなぎの話を思い出すという内容だ。これは、逆に直子が出てくると知って、気になったから読んだ。 

めくらやなぎも、ピンボールの犬の駅も、ノルウェイの森には出てこない話なので、それぞれ別の話から、同じ直子という人物を結びつけることができる。直子はこういった複数の小説に、所々記録されている。その中でも、蛍、およびそれを含むノルウェイ森が唯一、直子を真正面から取り扱った記録となる。僕が直子に関心を寄せられるのは、過去に自分の近くに、似た人が居たからだと思う。ワタナベくんは、一人の大学生としてはあまりにも非現実的すぎて、感情移入できなかった。緑は典型的な、小説のキャラクターとして読めた。ただ、直子だけが、身の回りにいる人物のように思えて仕方がなかった。どうしても、直子と、昔の知り合いが重なって見える。

そのあたりは、各自の人生経験の違いだろう。永沢さんを身近に感じる人がいれば、突撃隊を親友に思える人もいるかもしれない。それがたまたま僕は直子だった。見逃せない人物だった。直子とワタナベくんとの関係は、キズキと三人でいたころ、それから二人で東京の町を歩いて回ったころに、完結している。

参考:ダ・ヴィンチ調べによる村上春樹の人気TOP5と、「直子系」について

ベトナムの監督により作られた映画ノルウェイの森については、それほどいい評価を聞かなかった。僕は最初キャスティングを聞いたとき、緑と直子は逆ではないかと思った。実際見るのは大分後になったけれど、評判ほど悪くなかったように思う。菊池凛子はもっと派手な印象だったのが、落ち着いた、起伏のある直子を演じていた。