旅行本読み比べ

シャンタラム

シャンタラムは僕は全然知らなかったけど有名な本のようだ。続編も出るという噂だ。
これは、旅行の本というわけではない。ちょっとイリーガルなムンバイ滞在記。
だから、旅行者目線ではない。10年単位の長期滞在を考えるなら、参考にもなるかもしれない。著者のように、ヒンディー語、マラティー語、ウルドゥー語を覚えるぐらい滞在するなら。
シャンタラムの面白さは、実体験を描ききれていないところにあると思う。あまりにもたくさんの詰まった要素があり、それらの中から凝縮された部分だけが書き出されているのではないだろうか。内容がとても濃い。展開も目まぐるしい。無駄がない。バランスもいい。それでいて3巻、1800ページもある。この本のベースはどれだけ濃い体験なんだ、と思う。
作品はおそらくほぼ実話で、作中に出てきたレオポルドカフェなども実在するようだ。各ブログや書評などで紹介されているように、この本は別格。ただ、読むべし。作中に出てくるアブデル・カーデル・ハーンの思想や言葉だけでも興味深くて一冊の本になるんじゃないかと思うぐらい。
"善行とは、宇宙の高度化を促すもの。悪行とは、それを妨げるもの"

蔵前仁一さんの本

最近出た「あの日、僕は旅に出た」は読んでいないけれど、そこの見出しに書いてあった。「バックパッカーの教祖」と呼ばれているらしい。この人の本は、5冊は読んだ。
特徴として何よりも、明るい。雰囲気がゆるくて、ほんわかとしている。旅行する前でも旅行中でも、この人の本は旅へのハードルを著しく下げてくれるだろう。 それでいて、決して非現実的な夢想をしているわけではない。めんどくさいことやトラブル、事件などをしっかり描いており、よく怒ったりもしている。それでいて尚、明るい。
この明るさはどこからくるのだろう。もちろん、ご自身で描かれているイラストの雰囲気や、文体から来るんだろうけど、僕が思うのは、それはおそらく本人の人柄とか、心の余裕から来るんじゃないかなあと思う。
この人は高学歴で、奥さんがいて、手に職あって、決して裕福な旅をするわけではないけど、その醸し出す雰囲気には落ち着きがある。それが無いバックパッカー、貧乏で明日どうなるかもわからず、帰るところもなく、逃げてきたようなバックパッカーが書く文章とは一線を画す。
文章が明るいと、読むのにもハードルが低い。気軽に読み始めて、読み進めることができる。旅行に対して明るいイメージを持つことができ、明るい気持ちで旅行することができる。また本人がイラストを描いてちょくちょく挟み込んでいるので雰囲気がヴィジュアルでイメージできる。漫画のようなイラストがさらに明るさを増幅させる。

あの日、僕は旅に出た (幻冬舎文庫)

あの日、僕は旅に出た (幻冬舎文庫)

  • 作者:蔵前仁一
  • 発売日: 2016/06/10
  • メディア: Kindle版
 

深夜特急

深夜特急について感想を書くのは3度目ぐらい。深夜特急の価値は、まず一つながりの長期旅行記であるという点。1年から2年の旅行記を続けて、それも何巻にも渡って書いた作品というのは、実は少ないのではないだろうか。知らないけど。僕が読んだ中では1つの旅行記で5巻も6巻も書いているのは他に知らない。
では、一つの長い旅行を長く書いていることに、何の価値があるのか。それは、時間の経過に沿った変化と違いを読み取れることにある。例えば、各地を各地毎に巡って書かれた本を読んだ場合、その各地毎の内容をピック アップして書かれる。同じ旅ではないから、その前後と比較されることは少ないんじゃないだろうか。それが一つの旅行記であると、順序立てて、雰囲気の違いを楽しめる。
その次に面白いと思ったポイントは、適度なトラブルと素人感にあると思う。シャンタラムのように、刑務所が出てくるといった過度の不安はない。適度にトラブルが起こり、不安な気持ちにさせられるが、通り過ぎて安心する。
旅慣れた玄人が、素人には到底真似できない旅行を紹介するということもない。つまり、旅の素人が身近な話として読めて、とても親しみやすい。そこに先ほどの、一つの旅行であるという要素が加わり、旅行者の成長を見ることができる。著者が、旅を続けていくうちに旅慣れていく姿というのは、まさに旅のロールモデルとなる。それが親しみやすさをさらに増し、バックパッカーのバイブルと呼ばれるゆえんであろう。 
深夜特急(1~6) 合本版

深夜特急(1~6) 合本版

 

他にもいろいろ読んだけれど、とりあえずこのへんで。