旅立ちの時

旅立ちの時 [DVD]

旅立ちの時 [DVD]

 

っていう映画があるんです。リヴァーフェニックスが主人公を演じている。
主人公は左翼活動家の家に生まれ、住むところを点々とする高校生活を送っている。音の鳴らない鍵盤でピアノの練習を続けながら。

ある日音楽室で、音の鳴るピアノを弾くことから、彼自身の人生が始まる。

映画の紹介は終わり。

残り一週間を切った。やり残したことはないか?思い残すことはないか?と言えば、やり残したことしかないし、思い残したことしかない。
せっかく準備期間として半年とったけれど結局ほとんど何もしなかった。準備したのは最初の1週間か2週間だけ。1年あっても何もしなかっただろう。
お金は増えなかったけど退職金の50万と失業手当の50万はなんとか残ったので僅かな貯金と合わせて2年はなんとかなる。向こうではバイトしないといけないなあ。

荷物多すぎて入らない。とりあえず半年後に一度帰国する予定なので、夏物とかサンダルは全部置いていく事にした。それで服がかなり減ったはずなのに何故こんなに嵩張るのだろう。寝袋か。そうか寝袋か。

相変わらず泊まるところは1週間分で、住むところは決まっていない。向こうでやることも考えていない。なんとかなる精神は持ち合わせていないので、なんともならないしどうにもならない。どうにかしなければいけない。

さて、どうしようか。計画を立てていない。例えば、いつ、どういうプランで旅行するか、とか。大枠ぐらいは考えておきたい。どこで、どういう形で活動するか、とかも。

具体的なものは何ひとつ持ち合わせていない。抽象的なものさえ。それだけではない。才能もコネもカネもやる気も若さも言葉さえ話せない。何も無い暮らしの始まり始まり。
難民だと思えばいいんだ。そんなことを言えば難民に怒られるかもしれないけれど、難民からのスタートです。

あまり、軽い気持ちでいられない。何故か旅行気分でいられない。帰国後にどうするか、とか帰国する前提が抜け落ちている。僕の心境としてやはり「戻るところがない」という思いが強い。それは僕が、色んなものを失って、ここを出ていくからだろう。特に、日本への適応というものを失った。だから、ここにはもう戻ってこれないんじゃないかという思いが強い。少なくとも今のままでは。
そして、他のところに適応するには高いハードルがある。他の場所にも同様に、適応は出来ないだろう。そういうのはもう求めていない。自分に寄るしかない。故郷を失い、帰るところはなくなる。どこに居ても自分は余所者になる。
さようなら、かつて僕が暮らしていた場所。共に過ごした人たち。