死にたいほどの夜

死にたいほどの夜 [DVD]

死にたいほどの夜 [DVD]

 

家でやることがなく、オフラインの携帯をいじっていると、写真が目に付く。他に見るものがないから、保存されている写真に行き当たる。写真を削除していると、同時に写真に写った、写らなかった様々なことを思い出す。残った過去と残らなかった過去の痕跡を今両方削除している。

夢を見る。どんな夢か具体的には思い出せないけれど、過去の夢を頻繁に見る。あの日あの時の自分の夢。目が覚め、現実に引き戻されても、どちらが現実なのかわからない。少なくとも今の生活よりあちら側の方が現実的だった。

僕はあの、死にたいほどの夜から逃げてきたのだと思う。現実的で、整然として、規則正しい、真っ当な夜から。

今はもう記憶でしかない。夢や写真が追いかけてきても、足を掴まれて引き戻されることはない。目の前にある現実とはあまりにもかけ離れている。

今の生活がユートピアかといえばそんなことはない。どうしようもないぐらい寒く、朝は早く、目的はなく、明日もない。何も無い。僕はユートピアを求めているわけではない。

ただ僕は逃げてきたあの夜に、意味を、価値を見出せなかった。その時は苦悩が生きるということ、そのものなんだろうとさえ思っていた。恥をかくこと、堪え忍ぶこと、責め立てられること、もうそんな感覚もぼやけている。何も見えない。