決断と若さについて

決断の早さというのは、何に由来するだろうか。
決断の早さというのは、性格の違いに由来することが大きい。何事にも興味を持ち、すぐに取り組む性格か、何事も吟味してから判断する保守的な性格か。
しかし、これは後から付加的に早めることもできる。早い決断がどんな場合においても優れているとは限らない。しかし早くて正確な判断というのは、いつどんな場合においても求められてしまうのが、つらいところでもある。

実地経験に由来する

決定力、決断力、判断力、そのスピード、由来の一つは経験にある。こちらは、"いわゆる経験"だ。例えば、一人で海外旅行を決める勇気が出ない、決断ができない、という場合、その決断を鈍らせる、遅らせる理由の多くは、経験が無いからだ。仮に、経験があれば、その決断にかかる時間というのはゼロにさえなるだろう。

若い人が判断に時間がかかる理由は、この圧倒的な経験不足に由来する。一度経験してしまえば、そもそも判断に要する時間というのが存在しない。
管理職に経験者が採用される理由もここにある。管理職は速やかな、数多くの判断、決断を求められる。ただ判断するだけでなく、その根拠や道筋を示さなければいけない。経験というのは、それを導くにあたっての大幅なアドバンテージとなる。

弱点としては、経験していないことを判断する際に誤差が生じる。判断が経験に由来するのだから、経験が無いことを判断する際は当たり前とも言える。
有能な人は、自らの経験や他人の意見を複合的に捉え、経験していない状況というのも想定して判断を下せる。その想定状況を、いかにリアルに構築できるかという点が、経験だけではない能力の分かれ目となるのだろう。

判断経験に由来する

判断経験とはなんだろうか。文字通り、たくさんの判断を下した経験だ。実地経験とは何が違うのだろうか。文字通り、現場は経験していないが、判断だけを経験したということになる。現場を経験しないで判断を経験できるのだろうか。この判断経験というのは、一部理論的な話になってくる。学問的な事柄になってくる。

判断経験を行う際には、実地経験が無いため、判断材料のとなる経験が無い。では何を元に判断するのだろうか。データと理論である。理論という計算式を組み合わせ、そこに現場の資料、データを入力することにより、理論上の現場を再現する。そして、数式から導き出された答えにより、判断を下す。そこに実地経験は不要となる。

おそらく、経営学という学問はこの手の分野であると思われる。現場を経験しなくても社長になれたり、補佐ができたり、若いのにマネジメントができたり、コンサルができたりするのはそのセンスと、理論のおかげだろう。明らかに経験ではない。

判断経験の強みは、軌道修正が容易な点にある。失敗に強い。そもそも判断経験というのは学問であり、経験が無い事柄に対して即座に判断を下すためのもので、失敗はつきものである。修正にあたっては式を組み替えればよく、データを入力しなおせば良い。経験に基づく判断だとこうはいかない。
特に、判断経験を多く習得し、判断慣れをした場合の判断速度と、その正確さは、あるいは修正の早さは、多くの物事を同時に多角的に進めるにあたって有効だろう。

もう一つは、実地経験を積むより僅かな時間で、あらゆる未経験の状況に対応できるという点にある。そのための理論であり学問であると言える。判断が必要な状況の大半は、未経験の未知なる状況であり、それらに効果的に打ち勝っていくことこそが科学である。
科学はそもそも、太陽のサイズを測ったり星との距離を測ったり、経験できない問題に対して答えを出すために生まれた。

弱みは、そもそも習得が容易でないという点、理論に組み込めない要素には対応できないという点だろうか。

願望に由来する

興味、関心、願望、欲望、それらの感情が乗ってくれば、判断は早い。興が乗ってしまえば、判断するにあたって経験や理論は関係ない。むしろ、経験や理論が不足した状況で前向きな判断を下すためには、興が乗らないと難しい。

こちらについては興が乗っているだけなので、判断の正確性や正当性なんてものは未知となる。しかし、物事を決めるスピードと突き進めるスピード、モチベーションなどは最も高いかもしれない。また、それらを失うのも早い。

強制力に由来する

強制力による判断というのは、正確性や正当性を損なうことが多い。半ば投げやりな状況とも言えるから、考えているかどうかも疑わしい。しかし、それも結果が動くという意味では判断となり、決断となる。要素としては申し分ない。

期限ぎりぎりになると、決断せざるを得ない。では、仮に期限がものすごく早ければ、決断もものすごく早いだろう。明日出発しなければいけない旅行の飛行機のチケットが取れていなければ、そもそも決断どころの話ではなくなる。強制力というのは、ただ物事を決めるという場合においてとても重要な要素となる。

若さを補うためには

経験や理論の不足している若い頃は、判断材料が乏しいため、決断が遅く、内容が稚拙になってしまう。それをカバーするには、センスか、好奇心か、強制力しかない。
物事を決めたり、進めるのが遅くて悩んでいる人は、いずれの要素を取り入れれば有効であるか、検討してみてください。