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桜の季節だ

我々日本人は桜の季節に特別な思い入れがある。それは僕についても例外ではない。僕は生まれてから二十年以上も地元の桜を仰ぎながら春を迎えていた。大阪に住んでいた頃も名古屋に住んでいた頃も地元の桜を見ようと帰郷したことがあった。幾度かは間に合わない年もあった。今年は残念ながら拝めそうにない。トロントにも桜の木がある。咲くのは五月頃でこちらでも花見をする公園などがあるそうだ。しかし僕にとって特別なのはどうやら桜そのものではなく地元の景色に溶け込んだ桜だけだったようだ。それ以外の桜は季節を感じさせるものであってもそれ以上の何かを思い起こすものではなかった。僕の歩みと想いに溶け込んだ桜は山に囲まれた間に流れている川の両側に並木となったそれだけだった。かと言って僕は桜を見て大はしゃぎをしたりしない。花見もしない。花見をした記憶は幼少期に家族で夜にその川岸で食事をしたことと高校生の時に同級生40名ぐらいと同じ川で宴会をしたことぐらい。ただ水の流れに沿って桜の木の下を歩くことが花見よりも大切な時間だった。子供の頃からずっと。

Kamogawa - Letter from Kyoto