会いたい人はいますか

会いたい人はいるだろうか。有名人、芸能人、スポーツ選手、運命の人、死んだ家族、生き別れになった兄弟、今はどこで何をしているかもわからない戦友、歴史上の人物、人生がいろいろであれば会いたい人も様々だろう。僕にはそんな重い間柄の人はいないが、会いたい人というのを思い浮かべてみた。今回は二度と会えない人を限定に。

スポンサードリンク  

幼なじみ

彼女はおそらく僕の人生での始めての友人だ。僕らは同い年で、生まれた頃から5歳ぐらいまで隣の家に住んでいた。子供の頃の事なので、その子についてほとんど覚えていないが一緒に写っている写真が山ほどある。小学校へ上がる前に僕が引っ越し、僕らは隣人ではなくなり、子供だったため会うこともなくなった。その後地元の高校で再会したがろくに話すこともなくそのまま卒業した。
本当に一度だけ話した際に僕が目も合わせず無視のような形でかなり失礼な態度だったことを詫びたい。それ以上に昔のことを思い出したい、懐かしみたいというのがある。思い出というのは美化されているから、実際会って話したとしても「こんな奴だったっけ?」ってお互いガッカリするだろう。ただ彼女と会うなんてことはあり得ないし、年齢的にはおそらく結婚でもしているんじゃないかな。

空手の先生

僕は4歳ぐらいから空手を習っていた。僕には先生が2人いる。初め習っていた道場はなくなり、小学生の頃に別の道場へ移った。初めの先生は両津勘吉にそっくりだった。見た目も中身も職業空手家という感じの人だったが、何で生計を立てていたのかはわからない。今も一体どうされているのだろう。
もう一人の先生は僕が道場を移ってから辞めるまでの5年ばかりお世話になった。この人はガンで亡くなった。まだ40代だったと思う。この人たちに会っても何か話したいというわけではない。そもそも僕らは何も話してこなかったし、ただ稽古を受けていただけだ。だからもし会えたら、また稽古を受けたい。

塾の先生

僕は小学5年生から高校1年まで同じ進学塾に通っていた。中学受験のために空手を辞めることになり、その時間は塾に費やされることになった。進学塾には一人、変わった先生がいた。その先生は一浪して京大の工学部に入った人だが、おじゃる丸が好きで毎日見ていたり大学でスキーへ行って一人だけボードやっていたり、高校の頃は毎朝ビデオでZガンダムを見てから登校していたり(当時はGガンダムなどがやっていた)、スポーツが出来る人だけど目立つのが嫌だから25mプールの潜水で途中で立ったりなど、そういう変なエピソードにあふれていた。
僕はそれが面白くていろんな話を聞いていた。勉強に関する話もたくさん教えてもらったが、残念ながら実行することはなかった。この先生とは会社を辞める前に10年ぶりぐらいにメールのやりとりをしたが、辞めない方がいいという意見を長々と頂いてそのままになっている。正直、合わす顔がない。

バイトの先輩

この人は本当に珍しく息が合う人だった。息が合うってこういうことを言うんだと思った。大学生の頃僕はコンビニでバイトしていた。そこで働いていた人だが僕より5つぐらい上で元お笑い芸人、夜10時から朝の6時までコンビニで働きその足でカラオケに篭って毎日5時間ぐらいサックスの練習をして寝ない生活を送っていたというなかなか変な人だ。高校の頃はラーメンマンみたいな辮髪だったらしい。サックスだけでなくギターや音楽全般が好きで、特にBoøwyのファンだった。

映画もかなり好きな人で、僕も映画を見る方だからお互い好きな映画について話したらお互いが全く知らない映画ばかり見ていた。唯一被った黒澤明の乱について、僕はあまり意見を持っていなかったが彼は三郎が殺されるシーンなどの演出について大絶賛していた。彼はミステリや伏線回収といったシナリオの方にもかなり注目しており、韓国のオールドボーイやタランティーノの映画など展開や結末の予想が全くできない映画を好んだ。僕はだいたいSFか、全く逆の実話を元にした映画が好きだった。

僕とは見た目も性格も真逆だったが、一部の視点や笑いに関する哲学、一部の興味ある事柄などが全く、今までいたことがないぐらいに同じだった。自分と同じ視点を持っている人に初めて会った気がした。僕はバイトが終わってからもその人と話すために深夜コンビニに残ったりしていた。

いつまでコンビニで働くのか、今後どうする予定なのかとか聞いたことがあったが

「川添くんがやるっていうなら俺全然コンビ組んでもう一回お笑いやるよ?」

などと言われても僕はやる気がなくて。バンドにも一度誘われたが話が流れた。その後、会社員になった時も

「君は絶対続かないから一緒になんか面白いことやろうぜ」

みたいなことも言われていた。彼は全くのIT音痴で当時から携帯のメールを使わなかったぐらいの人であり、僕がキャリアを変えて連絡先がわからなくなった。facebookなんか絶対にやっていない。どう頑張っても会うことは不可能だが、会ったらとりあえず近況を知りたい。そして会話の中で音信不通だった間のお互いの引き出しを全部開け放ちたい。

見事に男性ばかりで暑苦しい内容になったが、僕の学生の頃なんて今と同じで生ける屍みたいなもんで、存在しているかどうかも曖昧だったから女の人に相手にされるわけもなく、そもそも知り合い自体めちゃくちゃ少なかった。ここに数人でも挙がったのが意外だった。まあ、今も全く変わりませんけど。

人生に取り返しはつかないです。会いたい人とは会えるうちに会っておきましょう。