カナダにおけるフランス語の微妙な立ち位置

カナダでは英語とフランス語が国語だ。ほとんどの製品には英語とフランス語の名前や説明が併記されており、義務教育でも英語とフランス語を習う。表面上はそうだ。だからよく、カナダ人は英語もフランス語も両方話せると誤解する。ドイツ人が英語とドイツ語の両方を話すように。しかし実態は違う。

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英語とフランス語が国語と謳っておきながら、ほとんどのカナダ人は英語しか話せない。基本的にカナダ人のフランス語については、一般的な日本人の英語レベルの能力しか無い。カナダ唯一のフランス語圏、ケベック州を除けば。ケベック州は特殊だ。街の標識や店の看板、配られている新聞に至るまで全部フランス語だ。元フランスの植民地であり、住む人も殆どがフランス系移民であるケベックにおいてはフランス語がベースとなっている。中には英語を話せない人もいるが、だいたいの人は英語も話すバイリンガルだ。言葉も人も違えば文化も様式も違う。ここだけまるで別の国みたいに。

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こっちがトロント

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こっちはケベック

これだけ違うと「もう別の国でいいじゃないか」という発想も生まれる。ケベックの政党ブロック・ケベコワケベック州の独立をスローガンに掲げている。ケベコワ(カナダのケベック人)はカナダ人という意識よりも、フランス人の子孫という意識のほうが強い。何でも見てやろうを読んだ人は知っているかもしれないが、ケベック人が自分たちの文化を語るとき、カナダではなくフランスの文化を語る。音楽や文学や歴史、そういったもの。あの本からは50年ぐらい経っているが、今でもそういう感じはする。親しいケベコワがいないから詳しいことは分からないが。

ケベック独立運動 - Wikipedia

なぜケベック州が独立しないかというと、カナダ政府が引き止めているからだ。ケベックの州都ケベックシティーでは、要塞と街が一体になった地域がまるごと世界遺産に登録されていたりして観光客も多い。ケベック州で一番大きい街であるモントリオールなども外国からの旅行者、特にフランス人が沢山来る。ケベックはカナダにとって貴重な文化遺産であり、収益源なのだ。おそらくカナダ政府は、ケベックをカナダから逃さないためにもケベックの自治にかなり譲歩しているんじゃないかと思う。州が違えば法律が違うのはカナダの他の州もアメリカも同じだが、例えばケベック州ではアルコールの取り扱いに関する法律が弱い。トロントでアルコールの販売(レストラン等で出すのは除く)が決まった2社で独占されているが、ケベックは許可さえ取ればどこでも販売できる。販売時間の規制も無いんじゃないだろうか。(このあたりは実際あまり関係ないかもしれないが。)

カナダにおいて、実質ケベック州でしか使われていないようなフランス語が国語として位置してたり、全ての製品にフランス語の表記がされていたり「ケベックは飽くまでカナダの一部なんだ」という姿勢が見て取れる。フランス語の表記なんてほとんどの人にとっては邪魔でしかない。読めないんだから。僕はそういうカナダ政府からのケベック州への寄り添いのようなものが非常に無意味というか厄介事というか、無駄に感じる。

話は変わるがカナダには中華系移民が多く、しかも年々増えてきているため、銀行のATMなどで中国語を選択できるようになった場所を多く見かける。チャイナタウンなどでは店の看板にも中国語が表記されていることが多く、道路の名前を表示する看板も中国語で書かれており、その下に英語の表記がある。もちろん中国語はカナダの国語ではないが、実際英語を話せない中華系移民も多くこれは彼らに対する配慮でもあるのだろう。こういった中国語の取り扱いは私企業のサービスにおける選択と、行政が考える市民の利便性を考慮した結果であり、フランス語政策に見られるような無駄は感じられない。

僕はいっその事、フランス語表記なんてケベック州以外ではやめてしまえばいいんじゃないかと思う。無駄だから。もしかするとケベック州側がフランス政府に突きつけている条件がこのフランス語表記なのかも知れない。ケベックをカナダに属したままでいたいのなら、フランス語も国語とせよと。しかしそんなことをする意味はあるのだろうか。ケベック州もフランス語も古くからカナダの一部だった。僕はケベックの独立を応援しているわけではないが、このフランス語にまつわるルールに関してはそろそろ変えてしまってもいいと思う。ケベコワのほとんどは英語も使えるのだから、あまり意味を感じられない。