バイクは楽しいけどあまり人に勧められない

僕は20歳ぐらいの頃に中型二輪免許を取った。中免は400ccまでのバイクに乗れる。教習車はホンダのCB400SF、スーパーフォアと呼ばれている。しかしそれ以降400ccのバイクに乗ることはなかった。僕は免許を取ってから数カ月後にローンを組み、250ccのバイクを買った。1年ローンで25万円だった。当時は本当にお金がなかったから。

 

いわゆるバイク好きな人たちは、程度の差はあれど大体若いころ、高校生ぐらいで免許を取り、バイクを買う。そして友人たちと乗り回すのが定番だろう。僕の中学からの同級生でバイクに乗っていた人はみんなそうだった。16歳でSRとかに乗っていた。僕はそういうのじゃなかった。大学生の時に取ったから遅くはない。僕には移動手段がなかったのと、車は高いし原付きはスピード違反で捕まることが多いから中型にした、というだけ。

もっと言えば、隣に住んでいた人がハーレーに乗っていた。隣の人はおっさんで奥さんもいて子供も3人いるが、僕が子供の頃からの付き合いで「今度一緒にツーリング行こうぜ!」と誘われていた。タイミングが合わず一度もツーリングには行けなかったが、今実家にある僕のバイクは放っておくと壊れてしまうため、隣の人がいつでも乗れるように預けてある。彼は数年前にハーレーを手放していた。

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photo by fatboyke (Luc)

バイクを買って何をしていたかというと、毎日乗っていた。バイトへの通勤、それ以外もどこへ行くにもバイクで行った。雨の日はあまり乗らなかったけれど、何よりスムーズに移動ができ、渋滞もなく気軽に乗れた。当時京都には、バイクがタダで駐めれるところも沢山あった。大学まではバイクで5分だった。ツーリングには数えるほどしか行っていない。比叡山の山中越え、琵琶湖、周山街道、鯖街道、嵐山パークウェイなど、京都に住んでいればこの辺りが定番かな。貴船とかも行った。僕は一人で乗ることが多かったが、地元の友人とツーリングしたことも何度かある。

バイクに乗る感覚というのは、何度か書いたがジェットコースターを自分で運転するような感覚に近い。特に山道においてはそうだ。そして街中を走るよりも、信号がない、車も全然走っていないような道を走るのが楽しい。太陽が輝く中で風を体に受け、突っ切る。エンジンの馬力を体に直に感じる。そんなにむちゃくちゃスピードを出さなくても充分だ。馬に乗る感覚に近いんじゃないだろうか。オープンカーよりもバイクの方がすがすがしい。そしてただ真っ直ぐ走るのも乙だが、曲がるのも楽しい。バイクで曲がる時はバンクとかハングオンとか言って、膝を地面に着けるようにバイクを傾ける。これは教習所で習うが、最初は怖い。ただこの怖さが楽しさに変わる。何キロで曲がれるか、どこまで地面スレスレにバンクできるか、そういう乗り方をみんな楽しむんじゃないだろうか。マフラーが地面に擦って火花出たりして、危ないからやめよう。

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photo by Patrick Mayon

大学を卒業して就職し、僕は地元を離れた。引越し先にバイクを置く場所が無かったため、実家に放置したままとなった。1年ぐらい乗らなかっただろうか。そこからまた名古屋へと異動になり、2年ぐらい乗らなかった。もったいないから一度地元の京都から名古屋までバイクで行った。そして名古屋で借りていたマンションにバイクを置いて、また乗り始めた。洗車してバッテリーやプラグを交換してオイルは当然だけど、ミラーなども交換した。計3年も乗っていないともう乗れないもんだと思っていたが、なんとかなった。

その後また大阪に戻ったが仕事が忙しくて乗る時間もなく、2年ぐらい放置することになった。バイクには申し訳ないが、放置してばかりだ。所有者ならわかると思うが、会社員になったり仕事が忙しくなると全然乗る機会がなくなる。会社を辞めてからまた整備をお願いし、保険も更新して乗り始めた。大阪から地元へ戻る時もバイクで帰った。

今はトロントにいるから当然乗っていない。やっと本題に入るが、自分はバイクの楽しさを少し知っているつもりだ。しかしあまり人に勧める気にはならない。理由はやはり、死ぬからだ。僕の周りで死んだ人はいないものの、バイク事故で死んだ話というのは多く耳にする。友人が事故った話も、骨折程度ならよくある。ハイサイドと言って吹っ飛んだ人もいた。特に家族がいる人、子供がいる人なんかには勧められない。

しかし、僕の知り合いが言っていたのは「バイクはルールを守って正しく乗れば車より安全」ということだった。無茶をしなければ車よりも幅は狭いし勝手は効くし、事故に遭うことも少ないという意味らしい。ただその、事故に遭った時の被害は車の比じゃない。だから上手く乗る必要がある。そして無茶をするバイク乗りは本当に多い。若ければ余計に。今思えば何であんな乗り方をしていたのだろうと思うぐらいに怖い乗り方をしていた。これは当事者と、外から冷静に眺める目線の違いだ。

当時はそんなこと何とも思っていなかった。バイクに乗ることをやめた人ならこの気持ちは理解できるだろう。僕は一度転けて腕を折った程度で済んだが、曲がりきれず反対車線に飛び出ていたし対向車も来ていた。片側はガードレール、その向こうは崖、僕が飛び出た方はそのまま行くと山肌だった。まあ、危ないんだ。

安全運転に努めれば、バイクはただの乗り物としても楽しい。車とは違い、生身の自分が60km/hやそれ以上で移動するんだ。ロケットにまたがっているようなもんだ。さらに、燃費がいい。スーパーカブなんかはリッター60kmという驚異的な燃費で有名だけれど、僕が乗っていたバイクでもリッター33kmというコストパフォーマンスを叩き出してた。その大半はアテのない移動に費やされていただけだったが。しかし、やはりどうしても人に勧めようという気にはなれない。バイク乗りの健康と安全を、北米の彼方から今日も祈っております。

バリバリ伝説 (1) (KCスペシャル (635))

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