僕は不動産屋のおっさんだった

今はもう抜け切っている。かつて僕は不動産業界で働いていた。いわゆる不動産屋のおっさんではなかったんだけど、僕が勤めていた会社は上場企業の子会社だったから、少し形態が違う。それにしても、縞の入った紺のスーツに水色のネクタイをして茶色の革靴とカバンで会社や外を歩き回っていた。本当にひたすら歩いていた。毎日革靴で歩いていた。足がめちゃくちゃ痛かった。髪が長いから切れと言われていた。

 

顧客と会う度に仲良くなろうと努め、酒を交わし、時には怒鳴り合い、毎日電話で怒鳴り合い、殺伐とした空気の中事務処理を行い、僕はそういう部署ではなかったけれど、取り立てもあり、ビルの壁に迫って脅すようなこともあり、裁判もあり、火事もあり、摘発もあり、死人も出て、そういう世界で生きていたことが今ちょっと信じられない。

会社に来ると毎朝社訓を唱える。月に一度のグループ合同朝礼では表彰やそれに対する各表彰者のコメント、数字の報告会、檄が飛ぶことも多く終わった後はすっきりしていたり青ざめていたり、各自顔色が変わる。会社の会議では報告数字や提案内容をクソ味噌に言われ、顧客からは電話越しで怒鳴られては監視のようなものを受けたり、デスクではひたすらパソコンの入力とメールのやりとり、そして電話しながら事務作業。だいたい3つぐらい同時にやる。それでも日付が変わるまで終わらない。各社の書式に合わせたレポートの作成や、web上においてもデータの入力、業界の人だったらわかると思うけれど、@プロパティというやつだ。なんか、そういうことしていた。そういう毎日だった。それを6年も続けていた。

人生ってなんだろうと思っていた。僕は会社に入る時「40年はここにいるつもり」だった。それがたったの6年で辞めてしまった。色んな事を思った。これがサラリーマンなのか?不条理、飛ぶ記憶、仕事が多すぎて記憶力が追いつかない、出会いとかあるのか?社内にも社外にもきれいな人はたくさんいた。不摂生で腹が出てくる。僕ももう歳なのだろう。カッターをクリーニングに出すか、自分でアイロン掛けるか、今日もタクシー帰りだ。終電なくて。鬼のように電話をかけてくる人をなんとかしてほしい。腹一杯になるまで食う、しかも早食い、昼は眠くて気絶しそうになる。今までにないぐらい酒を飲む。何度も吐く、歩けなくなってぶっ倒れることもある。このまま人生終わるのだろうか。