顔を思い出せない

僕は基本的に記憶力が乏しく、以前にも名前が覚えられないというようなことを書いたと思う。僕は顔も覚えられない。顔も名前も覚えられなければ致命的じゃないかと思うかもしれないが、おそらくこの現象というのは僕だけではなく、多くの人が共通して経験したことがあると思う。脳外科医かどこかへ行けば名前があるんじゃないだろうか。僕は気になる人の顔が思い出せない。

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それは男とか女とかは関係がない。普通よりも親しくしている人や、よく会話している人、また話したい人、気になっている人などは他の人に対するよりも強く意識しているはずだけど、何故か顔が浮かばない。もちろん会えばすぐに思い出す。「ああこんな顔だった」と。しかしさっきまで会っていたにも関わらず、すぐに記憶から消し飛ぶ。どんな格好で、どんな顔をしていたっけ。これは僕が幼い頃から顕著だった。

例えば、僕が小学生の時に空手を習っていた頃、大学生のとても気のいい兄ちゃんがいた。僕は子供だったからその人と馴れ合っていた。その人は大学生だけど、たまに師範の代わりに指導したり、組手の大会などにも出ていた。帯は緑帯。僕は今となって当時の彼の顔をおぼろげに思い出すことができる。確か、柳葉敏郎と唐沢寿明を足して二で割ったような顔だった。当時はそれを思い出すことができなかった。空手は週に2日しかなかったから、会って話し、ということをしていたはずだけど、うちに帰るとその記憶から顔というのが組み立てることができなかった。そして僕は大会のパンフレットを持っていたから、彼の顔を選手名鑑から見つけ、ああこれだ。でも「あれ、こんなだったかな」と思う。写真の顔というのは実物の顔と少し違う。

こういうのは友達にはない。肉親などにもない。今の顔がどうなっているかわからないというのはあるけれど、顔が思い浮かばないということはない。親しいからと言って顔が浮かばないわけではない。顔が思い浮かばない人というのは、大抵何かを意識している人だ。無意識な相手というのは大体すぐに浮かぶか、概要も全く浮かばないかのどちらか。

特に、何か話したいことがある相手に多いように思える。この人とこの話をしたい、というようなことを考えているときは、相手の顔が思い浮かばない。本当にもう全然浮かばない。無理に思い出そうとして頭に思い浮かべていた顔が、実際会ってみると全然違ったりする。それは良いとか悪いとかではなく、見ると「ああ、この人こんな顔だったな」と思い出す。僕は前のバイト先のメンバーとか同居していた人とか語学学校にいた外国人とかけっこうみんな顔をはっきり思い出せる。本当に忘れている人を除けば。

そしてやはり、思い出せない人がいる。知っているはずなのに、雰囲気は浮かぶのに、顔が浮かんでこない。服装や髪型まで思い出しても、顔が浮かばないことがある。多分その人たちは僕にとって特別な人だ。