人を見限る瞬間

見限るという言い方は偉そうだけど、こいつちょっと無いな、って思う瞬間は誰しも多々あると思う。それ以降付き合いが疎遠になったり、関わりが薄れたり、相手からすれば突然何があったってことだけど自覚がない。そういった人の「こいつ無いな」っていう行動や許容範囲というのは、それぞれのポリシーが違うように異なってくる。

 

待ち合わせに来なかった

最近「こいつ無いな」と思い連絡取らなくなったのは、時間についてだった。以前、ある人と約束をして落ち合おうって話になった。家に来ることになっていたが、いつまで経っても現れない。時間は遠に過ぎている。当然電話をする。出ない。時間をおいて2,3度電話をするが出ない。1時間後ぐらいに再び電話をすると出た。

「すいません遅れて。今日はちょっと行けそうにありません。」

非常に腹が立った。まず「遅れて」じゃない。僕が電話した。もうずっと遅れたままだ。もし遅れたり人を待たせるのを悪いと思っているなら遅れる前に連絡するべきだし、「遅れた」なら「遅れてすぐ」連絡入れるべきだ。そして行けそうにないなら「行けそうにない」とわかった時点で連絡するべきだ。にも関わらず、向こうからは連絡さえ来ていない。その間に僕は何度も連絡した。腹立っていたけれど用事があったから

「今日でなければいつ落ち合えるのか」
「次は無理とわかった時点で連絡して欲しい」

そういうことだけ伝えてその場は終わった。

時間に遅れた

別の日。また同じ人と待ち合わせをしており、相手が近くに来ているのに僕は普段から電話に出ないため電話が鳴っていることに気付かなかった。

「ごめん、気づかんかって」

「電話出てくださいよ気づくようにしといてくださいよ遅いですよ何分待ったと思ってるんですか

着信履歴を見てみると10分ぐらいだった。

「それ、お前が言うの?」

僕は前回のこともあり腹が立ってそう言い返したが伝わらなかったようで

「もう今日用事あってすぐ行かないといけないんです」

彼はそう言ってすぐ立ち去っていった。もう彼とは関わらないと決めた。僕は人のこういう態度というのが許容できない。つまり彼の「自分は平気ですっぽかすくせに他人が10分遅れるのは許さない」という態度。仮に僕が1時間2時間遅れて挙句の果てに約束の場所に行かなかった、などであれば話は別だけど、10分で気付いている。現場にも向かっている。1時間以上待たせて連絡もよこさず挙句の果てに「今日は行けない」と抜かした人間が、たかが数回電話に気づかなくて10分遅れを許容できず文句言ってくるなんて、クズが取る態度だ。こういう「自分はよくて人はダメ」という態度を取るクズが許せない。

前回彼に言ったのは何も「絶対に時間厳守!必ず連絡するように」などと求めていたわけではなく「連絡しないまま放ったらかし、挙句来ないなんて有り得ない」という態度を示していただけだ。こいつは俺が連絡していなければそのまま放置していただろう。それを勘違いしたのか、怒られて腹が立ったのか、たかが10分遅れたことに文句言ってくる始末だ。こういう人に「お前が言うな」と言っても通じない。そして世の中に「お前が言うな」が通じない人というのがそれこそ腐るほどいる。そういう人というのは「自分だけは特別」「自分だけは尊重されるべき」「自分は何やっても許される」「でも自分を不快にする人は何人たりとも許さない」などと思っているのだろうか?そんな人とは金輪際関わりたくない。例えばよく、他人に対して「挨拶をしろ」と言う人がいる。彼らはどんな場合でも必ず自分から挨拶しているべきである。そうでない人間が絶対に他人に対して「挨拶をしろ」などと言ってはいけない。自分がやっているからと言って人に求めていい訳ではないけれど、自分がやってもいないことを他人に求めるなど論外だ。そして「挨拶しろ」と言う人に限ってひたすら人からの挨拶を待っている。さぞ偉くなったんですねー。

お姫様態度

基本的に、接客などに文句を言う人が好きじゃない。僕自身が愛想が悪いため、他人の愛想や態度をあまり気にしないということもあるが「愛想が悪い」「接客がなってない」などと言う人は何様だろうと思ってしまう。気に入らないのは仕方がない。そういうこともあるだろう。だったら利用しなければいい。それにしてもこの人は「他人は自分に愛想よく振る舞うべき」「自分には良い態度を取るべき」という前提が存在するようだ。僕はそういう態度をお姫様態度と呼んでいる。人が他人に対していくら愛想良くしようと勝手だけど、他人が自分に愛想良くしないと許せないという態度は、正気の人間ではない。

彼らは自分が日常的にお姫様のように扱われて然るべきだという思想があるみたいだ。全く理解できない。僕にはそれがないから、人が愛想悪かろうと態度悪かろうと気にならない。さすがに危害を加えられたり、上の例のように自ら態度悪い人間が「お前の態度はどうなんだ」みたいな文句言ってきたら「お前がそれ言うの?」と思って腹が立つけれど、ただ愛想が悪い、態度が悪い、というだけで腹を立てたりはしない。それはどんな状況でも同じ。キャバクラのように愛想や態度も含めて商品というサービスはあるけれど、僕は基本的にそんなものにお金を払うことはしない。そういったものを含まない商品やサービスに金を払った際に「自分は丁重に扱われるべき」などとは思わない。もちろん提供されるべきサービスが滞っているとかそういう場合に「どうなっているの?」とは言うけれど「愛想が悪い」「態度が悪い」などという文句を口にすることはない。どんなに愛想が悪かろうとサービスの範囲内で適切な結果を提供してくれた方が、僕はうれしい。お金で愛想を買っているつもりはないから、そんな対応は望まない。

チップ制度

ここトロントは欧米諸国に含まれるため、チップ制度が根付いている。このチップ制度について初めはめんどくさいと思っていたけれど、後々合理的だなと思った。つまり、愛想でチップを稼ぐということは、チップがいらなければ愛想悪くてもいい、ということになる。もちろん仕事上必要なことを行うのは前提だけど、過剰な接客を求める客に対して態度を悪くしてもチップが無くて済むだけの話だ。その客はもう来なくなるだろうし、店側としては店員にも愛想良くしてチップ稼いでもらったほうが印象が良いから、あまりそういう態度を続けていると首になるかもしれない。しかし、チップにまつわる行動というのは基本的に店員個人と客の間で取り交わされる。実務上の差し障りがなければ店は部外者であり、客に愛想がどうとかとやかく言われる筋合いはない。少なくともチップ制度によって、店員は客を選べる、態度を変える自由が存在する。チップを払うも払わないも客の自由であり、その金額について相場があったとしても「これだけ愛想よくしたのにチップ少ない!」などと言う店員は存在しない。逆に先にチップを払って「こんだけ払う分の愛想よくしろ!」と言う客もいない。接客や愛想が欲しければ、そういう店に行ってください。僕はそういうのを人に求めるのはどうかしていると思うし、仮に自分に愛想を求められても、僕の陳列棚にそういった商品は置かれていない。金もらっても断る。

僕自身、愛想が悪いとか従順じゃないとかいう理由で今まで何度も見限られてきた方だ。それ以外の理由もたくさんあるだろう。でも僕はそんな理由で人を見限ったりしない。人はコマや奴隷、召使いではないから。そして自分はお姫様や王様ではないから。それよりも「自分はよくて人はダメ」とか「自分は丁重に扱われるべき」と信じているクズたちを見限る。