村上春樹談義

期間限定だった「村上さんのところ」も終わったみたいだ。質問内容に興味を持てなくてほとんど読まなかったけれど、一応質問を送った身として労ってもいいだろう。お疲れ様でした。もちろん僕の質問は読まれてません。そしてこの質問回答集から抜粋したベストセレクションみたいなのが電子書籍として発売されるそうだ。前回の少年カフカみたいなもんかな。小説ではなく、この手のファンブックみたいなのが売れるっていうのはすごい。10代のアイドル写真集ではない。60代の、見た目も普通のじいさん。 

少年カフカ

少年カフカ

 

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ノーベル賞候補

さて、村上春樹についてこのブログで何度も触れてきたけれど、現在日本人でノーベル文学賞に最も近い人だと言われている。先日Twitterで見かけたニュースでは、1964年のノーベル文学賞候補には4人の日本人がいたそうだ。谷崎潤一郎、三島由紀夫、川端康成、西脇順三郎という詩人の人まで。それをどう見るか、日本が成長したと見るか衰退したと見るか、またはノーベル賞の在り方を疑うか、僕は詳しくないから知らないけれど、村上春樹の文学賞に対する考え方について多くの質問があり、返答もあった。

村上春樹の人となり

作品と作家を同一視してしまうことはよくある。特に私小説ばかり書いている人の小説を読んでいると同じような主人公ばかりで、おそらくこれは作家の投影なんだろうなんて勝手に想像して作家そのものを重ねてしまう。村上春樹に関しては創作以外にもエッセイやノンフィクションを書かれており、作家と作品を重ねることはあまりない。またそういったのを読んだことがない人も今回のようなお悩み相談で、作品から離れた作家としての村上春樹個人をよく知ることができただろう。

学生結婚、ジャズバーの経営、海外で執筆しており、アメリカ文学の翻訳まで手がけ、更にはアメリカ在住。アメリカの大学で講師もしていた。その本は世界中で読まれており、実際ここトロントにおいても、村上春樹の名を知るカナディアンは多かった。実際に著作を読んだことはないだろうけど、その程度の人でも知っている。若い人やカナダ以外から来た外国人たちはあまり知らなかった。おそらく本を読む人自体が少ない。大阪のシェアに泊まりにきたノルウェー人やカナディアンは著作も読んでいた。彼らは日本に関心があったから当然知っている。春樹チルドレンと呼ばれる外国人の作家たちも存在する。極めつけにノーベル賞候補、もっと付け加えればマラソンも走る完璧超人。

そんな村上春樹がどんな少年時代を過ごしていたのか、どういった人なのか、なんとなく知れる良い機会だったと思う。彼が歴史上どの程度名を残すかは知らないけれど、少なくとも同時代を生きるファンにとって、ネットを介してとは言え接点を持ち、本人から直接返答を得られる機会があったことはかけがえのない出来事だと思う。昭和の文豪に今から手紙を書くことはできない。外国の作家にファンレターを書くのも僕には不可能だ。

村上春樹の作品

僕が読んだのは非常に少なく、初期三部作と世界の終わり、ノルウェイの森、スプートニクの恋人、国境の南、太陽の西、海辺のカフカぐらいになるんだろうか。ああダンス・ダンス・ダンスも読んだ。ねじまき鳥と1Q84はそのうち読みたいとずっと思っている。村上春樹が海外で受ける理由の一つとしては、その翻訳しやすい文章だと言われている。読みやすい。文章としては読みやすいけれど、その中身を芯に捉えることが難しいと言われている。僕は本を読むときにその内容の意味とかをあまり考えずに読んでしまい、何が言いたいとか気にしないまま読み終えて次に行ってしまうんだけど、そういった意味を捉える、読み解くという点については村上春樹の本は難しいそうだ。僕個人の印象としても、彼の書いた本になんらかの答えを見つけた経験がない。ただ、なんだろう、彼の本には夢が詰まっていると思う。いわゆる一つのテーマパークのようなもので、その夢の中には理想的な生活、喜びや恐怖、嘆きや哀しみ、痛み、喪失というものが詰まっている。村上春樹の本を読むということは、そういうテーマパークに出かけるようなもんだ。

「村上さんのところ」は5/13まで公開されているそうだから、気になる内容があればそれまでの間にPocketなりEvernoteに保存しておけばいいと思う。

村上さんのところ コンプリート版

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