「持たない幸福論」感想・書評

旅行中にid:phaさん著の「持たない幸福論:働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない」を読んだ。前回の著書である「ニートの歩き方」はブログに書かれていた内容のまとめ+αといった感じで既に読んでいた内容も多かったけれど(書き足されていたから読んで損はない)今回の「持たない幸福論」についてはブログやTwitter、その他の記事等で疑問だけ投げかけていた内容に答えを添えていることが多かったように思う。その答えというのが、僕にとっては凄まじかった。

ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法
 

 

結論の爽快さ

この持たない幸福論で導き出されている答えというのは、まるでミステリの解答のように斬新だった。労働や結婚、家やお金といった社会的なテーマばかり取り扱っているにもかかわらず、その斬新さに引き込まれた。これらのテーマというのは古くから語られ、現代社会の実情を反映した内容も既に多く語られている。語り尽くされている。そこから得られた答えというのは、一言で言えば妥協と根性、そしてお上を変えようという実現性の乏しいものだったように思う。そういう語り尽くされたテーマにも関わらず、phaさんの導き出した答えというのは今までに出揃った模範解答を根底から覆すような、それでいて「これだったらやれるんじゃないか」と思わせられるような爽快感さえ伴うものだった。これは前回の著書にはなかった。

結論に至るまでの過程を思う

労働、家庭、お金という決定的な答えのない不安定なテーマについて、そのような結論を導き出したというのは本当に真剣にいろいろ熟考したんだなあ、ということが伺える。ご本人も書かれている通り、この本を書くにあたって、というよりは普段からこれらのテーマに関連する著書をかなり読み込まれている。ここに載らなかったような、参考にならなかった数多くの文献もかなりたくさんあるに違いない。人生においてこれらのテーマが長くひっかかり、もがき苦しみ、真摯に向き合った結果がこの著書なのだろう。これは例え、挙げられている参考文献を片っ端から読み終えたとしても一朝一夕で書ける内容ではない。本だけではなく様々な人の意見と、自らの経験、実証を経て形になった痛切な答えではないだろうか。そしてこの答えには隙がない。多くの予想される反論に対する返答も既に含まれている。まさしく正論と言えるのではないだろうか。

リベラル?

この本を読んで感じたのは、リベラルだなあってことだった。古い制度や違う価値観を決して否定することなく、共存の可能性を示しているあたり、その多様性を肯定する形に持って行こうとしている辺りにリベラリズムを感じた。そういう政治思想の言葉でまとめてしまうのは違うかもしれないけれど、この本を読んで思い浮かんだのはシャンタラムの主人公、リン・シャンタラムの姿だった。ムンバイに滞在する彼の、人種や文化の違いを尊重した全てを分け隔てない公平に見る視線、そういうものを感じてしまった。全然関係ない話だけど。

一つだけあった大きな違和感

違和感と言うか、僕には無理だなと感じられた点が一つあった。それは著書に書かれていた内容の一つで「人を集めるのは簡単」という部分だった。何事においても、多くの人がこの点でかなり苦戦しているはずだ。「人を集めるのが簡単であればどれだけ楽だろう」って思うのは僕だけではないだろう。もちろんやり方が悪いということはある。それでも、これはphaさんの人徳によって成せる部分がかなり大きいのではないかと思う。そればかりはどう頑張っても自分には真似できないなーと思わされた。

おすすめします

それにしても、あらゆる社会問題を解決しようと奔走し、活躍されている人にこの本を読んで欲しいと思う。また、多くの悩める人たち、若者に限らず生きるということに手詰まりになっている人たち、この日本社会で息苦しさを感じ、明日を見失っている人たちに読んで欲しいと思う。この心血を注いで導き出された答えは、それが僕たちの明日の答えにはならなかったとしても、これからを生きるにあたっての大きなヒントになるに違いない。

 ※2015年7月1日現在、Kindle版は割引中で960円みたいです。定価1,296円(僕は発売日に買ったため定価でした)