22日目、ドゥブロヴニク→モロッコ

前回の続き

ドゥブロヴニクの空港へ向かうには、シャトルバスがあった。しかしこのシャトルバスの停留所はモスタルから来た時に降りたバスターミナルか、山へと登るケーブルカー乗り場の2箇所しかない。つまり、どちらにしてもホステルからバックパックを担いで30分ぐらい歩かないといけない。ホステルの受付の丸坊主の兄ちゃんに聞いてみたら、

「バスターミナルに行ったほうがいいよ。あっちへは下りだし席もあるから」

ということだった。確かにこのホステルに来る時坂を登った。ならば戻りは下りだから楽だという話だった。ドゥブロヴニクを離れる日、僕は言われるがままにバスターミナルへと向かった。その道中、雨が降ってきた。僕は65Lのバックパックを背負い、右手には16Lのデイパックを提げている。ラップトップもデジカメも持ち運んでいるため、雨は本当に困る。重い荷物ながらも早足になった。幸いバスターミナルに着いてから雨が強くなった。バスチケットを買おうとすると、空港行き用の窓口があり「そっちへ並んでくれ」と誘導された。

 

バルセロナの空港へ

バスに乗るとまた雨は本格的に降ってきた。ケーブルカー乗り場に着く頃はそこそこ降っており、そこに並んでいた人は雨に打たれていた。そして空港行きのバスは座席が埋まった。空港まではそこからさらに30分ほど走っただろうか、思ったよりも遠く、山中を走る自動車専用道路だったため歩いてはとても行けなかった。空港に着く頃にはほぼ雨があがっていた。

モロッコへはバルセロナ経由の便が安かった。Vuelingという航空会社でスペインのLCCだそうだ。トランジットは数時間であり、バルセロナの空港で搭乗を待っていた。バルセロナの空港は無料Wi-Fiが30分しか使えなかった。スウェーデンのアーランダ空港でさえ3時間使えたというのに。そしてマクドナルド等にも専用Wi-Fiはなかった。僕はここでSolarisを読み終えた。SolarisはSF小説だけどあらゆる要素が詰め込まれており、特に恋愛の印象が強いため映画化された際にはその面がピックアップされ、本来の小説の意図を外れたそうだ。この小説を読み終え、僕は以前に見た映画のherに似ていると思った。人間とエイリアン、人間とコンピュータという違いはあれど、人間を模した、人間ではない決して埋まらない差を持った者との恋愛という点において、似た部分があったように思う。

モロッコへの飛行機に並ぶ人たちは今までと明らかに違う人たちだった。アフリカンなのだからその人種も言語も衣装も文化も全部違った。「これからアフリカに行くんだ」ということを実感しながら僕は飛行機に搭乗した。飛行機はガラガラだった。バルセロナからモロッコは非常に近く、1時間か2時間程度のフライトだった。

お金に困る

空港に降り立つ僕には全くの準備がなかった。情報を持っていなかった。空港でネットを使おうにもWi-Fiそのものがなかった。街までどうやって行くのかインフォメーションで尋ねると、シャトルバスが20ディルハムで出ているということだった。現金が必要となり、空港のATMでお金を下ろそうとしたら、なんと円建ての国際キャッシュカードが対応していなかった。これはまずい。とにかく財布に入っていた€6を両替所で両替し、街まで行くだけの現金は手にしたものの、このまま現金を手にすることができなければ滞在中何もできない。大変だ。不安な気持ちのまま僕は市内行きのバスへと乗り込んだ。

バスは市内の中心部まで来た。僕は空港からバスに同乗していた人に駅の場所を聞き、駅へと向かった。クレジットカードで切符が買えるようで「現金じゃなくてもいい!助かった!」と思ったがなんと、やはり円建てのクレジットカードは利用できなかった。最悪だ。そして駅にあるATMでも、国際キャッシュカードで現金を下ろせないか試してみたがやはり無理だった。どうしよう。とにかく僕は残り少ない現金で切符を買い、電車に乗った。駅のホームには足の長いゴキブリが歩いていた。

ラマダン中、ホテルを探す

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電車を降りた。時間は夜の11時。街は賑わっていた。そうだ、今はラマダンであり、ムスリムたちは夜に活動するのだ。この駅にもATMがあったため、僕は再度現金が下ろせないか国際キャッシュカードを試してみた。助かった。なぜかこのATMは利用できた。500ディルハム手にした。僕は宿を探そうと思い、駅にたむろしていた17・8歳ぐらいの少年たちに話しかけた。若い人なら英語を話すかもしれないという期待からだった。タクシーには声をかけたくなかった。

「ねえ、近くにホテルとかある場所って知らないかな?」

見事に通じなかった。モロッコはアラビア語か、もしくはフランス語らしい。英語はほんのすこしの単語ならわかるという少年が中にいたぐらいだ。でも彼らはすごくいい人たちで、スマートフォンを出してGoogle翻訳の画面を見せ、ここに打ってくれというように示してくれた。僕は携帯もWi-Fiも使えない状態だから、彼らにホテルがある場所を調べたいということが伝わると、Google検索でホテルが集まっている大体の場所を調べてくれた。僕は駅からまっすぐその方向に歩いた。ラマダン中、夜の街は本当に賑やかで、あちこちに人がいてカフェなどで水を飲んだりコーヒーを飲んだり食事をしたりしている。歩いて15分ほどで、いかにも高級そうなホテルが見えた。聞くだけ聞いてみようと思い、中に入った。

「部屋空いてますか?」

「ございます」

さすがに高級ホテルは英語が通じる。

「1泊いくらですか?」

「380ディルハム(約4,800円)」

高え!今までで一番高い。モロッコと言えば立派な観光地であり、こういったホテルに限って言えば決して物価が安くなかった。

「あの、もし良かったら近くの安いホテル教えてくれませんか…」

「いくらぐらい?」

「200ディルハム(約2,500円)以下で…」

ホテルで値段を聞いておきながら他のホテルのことを聞いていいものかためらったけれど、他に手がなかった。

「あそこのネオン見える?あそこだったら200以下だよ」

「ありがとう!ごめんね!」

ホテルのおっさんは親切に教えてくれた。本当に悪いことした。そして広場のようなところを挟んで向かい側にある、近くのホテルへと向かった。そこは言われた通りいかにも安そうだった。

「部屋ありますか?」

受付のおっさんは、何やら違う言葉を話していた。ああ、英語通じない。けれどうなずいているところを見ると部屋はあるそうだ。

「いくら?」

おっさんはカウンターに貼ってある紙を指さした。シングルで1泊120ディルハム(約1,500円)と書かれている。もうここでいいやと思った。お金を払うと鍵を渡され、部屋に入り荷物を置いた。一人部屋でトイレは共同、シャワー無し、そんなもんか。この時既に夜の1時頃。僕は安堵感と同時に疲労感を感じたため、寝てしまうことにした。

次回、23日目ラマダンを嘗めていた