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Tower

満面の笑みと熱弁。その印象が強い。彼はいろんなものを食べては消化し、排泄する。好き嫌いがないのではないかと思い、あらゆるものを差し出すが、時には渋ったり断られる。好き嫌いはあるようだ。しかしその基準はわからない。彼なりのなにか、思うところがあるのだろう。これはどうか、それはどうかと差し出してみるが、その傾向はやはりわからない。彼に基準があるのかどうかもわからない。もしかするとある日は召し上がり、ある日は皿ごと返されるのかもしれない。同じものを二度出したことがないからわからない。彼はこれが嫌いなんだなと判断してしまうのが間違っているのか。それでも一度断られたものを再び出そうとは思わなかった。

彼は差し出されたもののほとんどを今まで平らげてきた。もしかすると彼の傾向を掴んで、嗜好を読み取った結果なのかもしれない。彼は平らげたものについて熱弁を振るう。品評を行う。いつも満面の笑みで、その味について仔細な、自分なりの意見を述べる。お気に召したようだ。安心しながらその熱弁に耳を傾ける。僕も自分の意見で答える。彼もそれに耳を傾け、頷く。議論にはならず、お互いがそれぞれの言いたいことを言いながら、同じ方を向いた評を積み重ねる。彼の意見を僕が補完し、僕の足りないところを彼が隙間を埋める。お互いに足りないところは、新しい別のものから取り込む。それをまた消化し、隙間を埋め、積み重ねる。

積み上げたタワーは、ある日姿を消している。初めから何もなかったかのように。その話をすると、彼は覚えていない。もう排泄したのだろう。そしてまた別のものを差し出す。彼が平らげると、満面の笑みで熱弁を始める。僕はそれに答える。また新しいタワーが積み上がる。基礎から固め、隙間を埋め、高さを増していく。