5日目 シャウエンへ

前回の続き

シャウエンへと向かうバスは12時からのはずだ。事前にネットで調べていた情報によると国営のCTMというバスが評判良く、発車時刻もネットで見ることができた。

Transport Routes and Timetables | CTM

このCTMもスペインのALSA同様国中どこでも走っており、いろいろな場所へと行き来できる。肝心のバスターミナルだけど、ネットで調べてもなかなか出てこなかった。モロッコは元フランス領であり、今でもほとんどの人がフランス語を話す。こういったバスターミナルなどはフランス語でGareと呼ばれているみたいで、モロッコ各地においてGoogleマップなどでGareを検索すればバスターミナルをみつけることができた(電車の駅はVilleで検索したら出てきた)。

 

バスターミナルへ向かう前、我々はオテルコンチネンタルへ立ち寄った。僕は見ていないけれど、シェルタリングスカイという映画の撮影で使われたホテルらしい。元々は高級ホテルだったが今は老朽化が進んでか経営難で立て直しも効かずか庶民に手の届くホテル兼古くからある有名なホテルとしてランドマークになっているようだ。サイゴンで言うところのマジェスティックやサラエボで言うところのホリデイ・インみたいなものだろう。

タンジェの宿題 コンチネンタルに泊まる

荷物もあるためバスターミナルへはタクシーを拾った。10dhだから安い。タクシードライバーは途中で知り合いを乗っける。60代ぐらいの陽気なおっさんだ。その人は僕らが日本人だとわかったようで、タンジェのことやこれから行くシャウエンのことを教えてくれた。物価も安く古い伝統が残った街だから観光にはうってつけだとか。

「なんで僕らが日本人だとわかったの?」

僕はよくこれを聞く。

「俺は日本で働いてたんだよ。20年ぐらい前だけどな」

僕の頭にはビザのことがよぎった。どんなビザだろう。目の前のおっさんがビジネスビザでスーツを着て商社で貿易の斡旋をしている姿は想像できない。でも彼が英語を話す理由はそういうところから来ているのだろう。モロッコで英語を話す人は珍しい。

「だからあなたは英語を話すのか」

「お前も話すじゃねえか」

この返しはよくわからなかった。

バスターミナルは現地の人だらけで混み合っていた。外国人の旅行者はそれほど多くない。建物に入り、CTMのカウンターを見つけてチケットを購入した。調べていた通り12時から、45dhと荷物代5dh(これは2人分の荷物でも5dhだった)。それからバスが来るのを待った。途中暇で、バスターミナルの写真を撮っていたら色んな人から猛烈に怒られた。

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シャウエン行きのバスに乗るのは僕ら以外にカナディアンの老夫婦、ヨーロピアンの若者、アジアンのバックパッカー、他は現地の人だった。老夫婦はバスまで荷物を運んだ現地人に金をタカられて支払っていた。こういうところが世界三大ウザい国と日本人が言うモロッコらしいところだ。

タンジェからシャウエンまでは3時間、バスはどんどん山の奥地へと進んでいく。そのうち雪で覆われた山が見えてくる。これがシャウエンに着くまでずっと見えていた。僕以外にも写真を撮っている人がいた。冬の高地で寒い。

https://www.instagram.com/p/BCS6bN6hvBL/

シャウエンに着いたのは昼の3時だった。バスターミナルには並んで待っている人たちがいる。この時期にタンジェとシャウエンを行き来しているCTMのバスはこの一本のみで、ここで待っている人たちは同じバスに乗って僕らが来た道を戻り、タンジェへと向かう。待つ人たちは西洋人観光客ばかり。ここシャウエンとなるとさすがにバックパッカーが多い。大抵カップルか、女性は友達と連れ添っている。旅行中に知り合った人と一緒に移動することも多いそうだ。男性は一人でも平気だから全く一人で行動する人も多い。男同士で行動する組はあまり見かけず、それなら一人の方がいいのだろう。僕は男同士で旅行したこともあるが、一緒にいるのは移動の時だけで結局別行動をとったりしていた。

シャウエンのバスターミナルは、街の南西に位置する。そこから宿泊先に向かってバックパックを担いで歩く。バスターミナルから出るとタクシーの勧誘に会うが、宿泊先を地図で調べているため近いからタクシーは利用しない。しかしこのバスターミナルから市街地までの道が急な登り坂になっており、雨がぱらついていることもあって滑りそうで怖い。これが本当にかなり急で、車やバイクなんかはよく滑らずに通行するなあと思う。チェコ好きさんは登り坂にめっぽう弱いらしく、危険信号を発している。それでも宿は近くて、地図を見ながらすぐにたどり着く。チェックインを済ませ、荷物を置いてメディナへと向かう。途中のATMでお金を下ろした。シャウエンにだって銀行もあればATMもある。秘境の地ではない。

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メディナは、どこの街でもそうだと言えばそうだが道が細く入り組んでおり、おみやげ屋だらけだ。ここシャウエンの違うところと言えば、壁が青いことと雪山が見下ろしていることだろうか。あと魔法使いみたいな格好をした人がやたらと多かった。この服装はタンジェでも見かけたがシャウエンは特に多い。後に向かったマラケシュでは全く見かけなかった。気温が違うからだろうか。また、シャウエンのメディナは平地ではなく斜面に沿ったような場所に位置するため、階段や坂の上り降りが多くなる。そして僕らの行った時期は雨が多かった。

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魔法使い

メディナの中心にある広場に出ると見事に観光客だらけだった。日本人も見かけるが西洋人団体ツアー客も多い。年配の人はそういうのを利用しがちになる。あとはほとんどが西洋人の若者。バス停にはそこまで多くなかった観光客が、街中にはうじゃうじゃしていた。この広場は極端に多い。シャウエンには鉄道が通っておらず、バスで移動するなら必ず先ほどの坂の下にあるGareを利用するはずで、あそこにこれほどの人はいなかった。そもそもバスターミナルはイスの数や建物からしてそんなに多くの人が待てるスペースはなかった。広場にいる多くの人たちは、ツアーバスをチャーターして直接近くまで乗り付けているとでも言うのだろうか。

そのまま広場からさらに奥へと進んでいく。シャウエンの町並みは、初めこそ青く物珍しいが、これがどこまでも続く。ずっと同じだ。ただそれだけ、だと言い切ってしまってもいいんじゃないだろうか。町並みなんてどこもそんなもんだろう。これが好きだったらどこまでもこれが続いてそれこそが良いと思うに違いない。とりあえず写真を撮っていたら、地元の子供が写って彼らに消せと凄まれる。これはモロッコでよくある現象らしく、子供の写真を撮れば怒りだし、金をタカられるか消せと言われる。何言ってるのかよくわからないが剣幕が激しかったので僕は一応消したところと写ってないところを子供に見せてその場を去った。

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タンジェも寒かったが、シャウエンはより高地にある分より寒く、一通り歩いたところで暖を取ろうということになった。僕らは広場近くにある屋内のレストランに入った。時間にしてまだ夕方5時ぐらいであり、客は僕らの他にいない。猫がいるぐらいだ。シャウエンでは多くの猫をそこら中で見かけた。このレストランの席にも猫が座っており、ホステルの廊下(屋内)にも猫が紛れ込んでいた。街中でもいたるところで猫を見かける。猫についてもモロッコの他の地域ではあまりない、シャウエンの特徴だったと言えるかもしれない。僕らはその観光客向けレストランで観光客のようにタジン鍋とミントティーを頼んだ。タジン鍋の中身はラム肉と玉ねぎとプルーンであり、このプルーンが甘く食事という感じがしない。肉も玉ねぎも味がない。どうもこれがタジン鍋のオーソドックスな味らしく、店が悪いとかそういうわけではなさそうだ。僕にとってはただの郷土料理以上のものではなく、とても美味いと思えるものではなかった。何故これが持て囃されるのだろうか、全く意味がわからない。

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レストランを出ても雨が降っていた。いくら食事をとろうともまた寒くなってしまう。シャウエンは一通り見たからもうホステルへ帰ることにした。帰り道のコンビニで飲み物とお菓子を買う。小腹が空いた時の夜食として。ホステルに着いても、結局部屋が寒い。エアコンは全く効かない。冬のシャウエンで寒さから逃れることはできなかった。

次回、6日目 夜行列車の旅