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6日目 夜行列車の旅

前回の続き

シャウエンには元々2泊する予定だった。今思えばかなり無茶な予定だが、コルドバからアルヘシラスへ、そしてタンジェへ向かいそのままタンジェに宿泊せずシャウエンで最初の一泊をしようとしていた。シャウエン行きのバスが少なくこの予定は流れたが、結果的にはタンジェ1泊、シャウエン1泊で良かったと思う。現実は天候が崩れたためタンジェシティに着いたのが夜9時台になり当日シャウエン行きというのは不可能だったんだけど、例えシャウエン行きに乗り継げたとしても体力的に無理があった。バスと船による13時間の移動は、飛行機や電車の13時間とはわけが違う。また、冬のシャウエンは2泊するには寒すぎたし、これ以上滞在してもやることがなかった。元々観光地だからついでに寄っておこうという程度のつもりだった。

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シャウエンで1泊した翌日、バスでタンジェへ戻る予定をしていた。来た時と同じ、バスは15時に観光客を乗せてバスターミナルへと来る。降りる観光客と入れ替わって僕らが乗り、タンジェへと戻るのだ。それまでの間、つまり15時までの間、僕らはゆっくりしていた。朝は寒くてなかなか動く気になれず、簡易な朝食をとりチェックアウトぎりぎりまで部屋にこもった。ホステルを出ると、まず帰りのバスチケットを買いに行った。予約なんかしていないから「もう席がない」なんて言われてしまうと全ての予定が狂ってしまう。急な坂を下ってバスターミナルへ向かい、無事にチケットを購入した。その後にもう一度シャウエンのメディナを訪れた。今日は昨日よりもさらに雨が強い。寒いだけでなく観光には不向きな天候となっている。

https://www.instagram.com/p/BCX63J7hvJh/

さすがに歩いていられなくなり、雨宿りも兼ねて喫茶店に入った。中にいる客たちはテレビを見たり、ただ茶を飲んだりコーヒーを飲んだり談笑している。ここではもうお決まりとなるミントティーを頼む。相場は7dh。ミントティーはなかなか出てこないが、雨が止む気配もないため丁度いい。そうは言ってもこの日のシャウエンの雨は、長く続くものではなかった。降っては止み、晴れたかと思うとまた雨雲に囲まれる。まさに山の天候だ。ミントティーを飲み終えると、店のおっさんに道を聞いた。実は歩いている場所に確信がなかった。地図を指差して

「今いるのはこの辺であっているか?」

と聞いたら、

「あっている。近くに展望台があるからついでに見てきなよ。景色がいいよ」

と返してくれた。

「近くってどれくらい?」

「7分ぐらい」

「この地図のどのあたりかな?」

「ここの橋を渡って真っ直ぐだ」

おっさんが言う歩いて7分の展望台は、チェコ好きさんが持参していた地球の歩き方の地図の枠外にあった。そんな場所まで7分で行けるわけがない。しかし具体的な道順を聞いて、展望台という場所にも行ってみたかったから向かうことにした。僕はおっさんにお礼を言った。

「シュクラン」

「ジャパン?アリガト、コニチハ、サヨナラ」

「アッフラン、アナ、カズ。フルソサイーダ」

「フルソサイーダ」

カナダに住んでいた時、学校にアラブ人がたくさんおりアラビア語の挨拶を少し使ったことがあった。日本語で挨拶をされたからアラビア語で返した。モロッコの国語はアラビア語とフランス語だ。向こうは笑っていた。

https://www.instagram.com/p/BCX7B6nhvJ1/

展望台、という場所はやはり7分では到底辿りつけなかった。僕らはバスの時間もあったため、そこに登るのは諦めた。その入口だけ写真を撮ったから、行く機会があれば訪れてみてほしい。

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多分この辺り

シャウエンの宿題 展望台

ホステルで預けていた荷物を受け取り、再びバスターミナルへ行った。バックパックを背負って雨の中あの急な坂道を下るのは心配だったけれど、その時雨は少しおさまっていた。バスを待っていたのは今回は西洋人旅行者が多く、バスは満席になった。そのままバスの中で1時間ぐらい寝た。シャウエンータンジェ間のバスは途中ティトアンという場所で休憩になり、トイレに行ったりタバコを吸ったりしていた。僕と入れ替わりでバスを出て喫煙しようとした西洋人の若者が、ドライバーに止められて戻ってきた。連れ添いの人に「ダメだと言われた」と愚痴っており、僕がついさっき喫煙していたばかりだからなんでだろうと思っていたら、すぐにバスは動き出した。若者は「ああ、なるほどね(make sense)」と言っていた。

https://www.instagram.com/p/BCX7L5mBvKK/

夕方6時頃、タンジェに着いた。着いた場所は、バスを乗ったバスターミナルとは違い、CTMの車庫みたいなところだった。ここは行きの際にも一度停車しており、大体の場所を覚えていた。バスターミナルからそう遠くはない。ターミナルの外にはタクシーの運転手が群がっていた。僕は「歩いて行くからいい」と断り、駅の標識に従って歩いていた。今日はこのまま夜行列車に乗る予定だ。タンジェから一気にマラケシュまで向かう。電車に乗るのは今回の旅行で初めてであり(ずっとバスか船で移動していた)、夜行列車に乗るのは5年前にインドで乗って以来だった。

このモロッコの夜行列車について、Googleで検索してみてもらえればわかるが、やたらと評判が悪い。物を盗まれたというレポートが相次いでいる。よりによって何でそんな電車に乗るのかというと、単に日程の関係だった。モロッコで行く予定をしていたのはシャウエンとマラケシュだけ、ここが非常に離れている。直接は行けず、シャウエンからタンジェまでバスで3時間、タンジェで電車に乗り換えマラケシュまでは9時間かかる。この距離を埋める手段は夜行列車が一番最適に思えた。移動ばかりだ。僕らはタンジェの駅を目指して歩いていた。地図は持っているし、一度だけ見た標識に従って歩いてはいるが、今いる場所や道があっているのかわからない。不安だ。さらに暗くて遠い。

タンジェの駅はここにある

バスを降りてから20分ぐらい歩き、ようやく駅が見えてきた。道はあっていた。駅に着くと寝台車の切符を買った。一人370dh(約4,200円)ちなみにバス代や電車代はころころ変わるため、別の時期に別の値段を提示されたからといってボラれているわけではない。寝台の切符を買うにあたって後でわかったことだけど、寝台はファーストクラスが4人一組のコンパートメントになっている。それより少ない人数の部屋はない。つまり、僕らみたいに二人組だと、残り二つのベッドに全然知らない人が寝る。その4人一組が一室となる。何が言いたいかというと、地元のモロッコ人や全然知らない人と同じ部屋になるのが不安だったり嫌だったら、途中で知り合った旅行者や駅で見かけた旅行者などに声をかけ、4人一組で同じコンパートメントの切符を買った方が安心かもしれない。もしくは旅行の楽しみも広がるかもしれない。寝台列車の評判の悪さを警戒するんだったら、信用できそうな旅行者同士固まると気持ちが落ち着くだろう。ただ現実として、地元の人が危なくて旅行者が安心できるなんてことは全く無い。

ONCF Espace Voyageurs

時刻や路線などは公式サイトで確認できる。あまり先(半年後など)の運行表は出ていない

夜行列車は夜10時頃から発車するため、夕食をとっておこうということになった。駅の近くにマクドナルドがあったから、もうそこでいいと思ってマクドナルドに行った。タンジェのマクドナルドはめちゃくちゃきれいな作りだった。テラスがあり、入り口にはガードマンが立っている。客層も富裕層ばかりで賑わっている。ヴィトンやグッチといった西洋の高級ブランド品に身を包み、子連れが多い。子供でさえカナダグースのダウンを着たりしている。ここでは我々が一番みすぼらしかった。物価の違いから来るのだろう。この人たちがホームレスで溢れかえるトロントのマクドナルドの現状を知ったら驚くだろうな。

彼らは列に並ぶということを知らず、事前にメニューを見て何を注文するのか決めておくという習慣もなく、僕の順番が回ってくるまでかなり時間がかかった。30分ぐらい。このときまだ7時台で、電車の時間までまだまだあるから時間を潰そうということになった。マクドナルドにはwi-fiがあったが、チェコ好きさんのiPhoneは拾えたのになぜか僕の携帯では拾えない。時間を潰すのも大変だ。ちなみにモロッコの主要駅にもオープンのフリーwi-fiがあるものの、僕が拾えたのはカサブランカの駅だけだった。意外と近代的だよモロッコ。

https://www.instagram.com/p/BCX7ZZghvKp/

タンジェの駅

マクドナルドをあとにして、再び駅に戻ってくる。この時間からはもう夜行列車以外なく、駅で待っている人たちは皆夜行列車に乗る人たちだ。ほとんどが地元の人で、僕らみたいな旅行者は見かけない。乗車時間になり、列車に乗り込む。寝台車両は一番奥にあった。トイレはあるものの、きれいな作りではないため事前に駅で済ませておいたほうがいい。コンパートメントは思った以上にきれいで、インドで乗った車両なんかよりずっと良かった。エアコンも効いており、乾燥はするが今まで泊まったホステルよりもずっと暖かい。今日は人が少ないようで僕らのコンパートメントには他の乗客がおらず、2人で貸し切りとなった。二つ隣のコンパートメントでは、若い西洋人女性の旅行者が4人一組で乗車しており何やら盛り上がっていた。乗車直後にワゴンセールでコーヒーやお菓子、サンドウィッチなどの販売が来た。

僕はこの夜行列車でゆっくり寝た。移動中にゆっくり寝られるのは久しぶりだった。飛行機でもバスでもあまりよく寝ることが出来なかった。途中、このコンパートメントのドアが開けられて泥棒が入る夢を見た。事前情報にあまりにも怖気づいていたみたいだ。実際には強盗など何もなかった。

早朝に目覚める。電車から写真を撮った。朝にもワゴンセールが来て、サンドウィッチとコーヒーを買って食べた。8時過ぎにマラケシュに着いた。マラケシュの駅はでかかった。

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電車から撮った景色

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コンパートメントの中

次回、7日目 マラケシュの迷路