9・10日目 モロッコからヨルダンへ

前回の続き

これからの予定は、まず昼の12時にホステルのチェックアウト、そこから駅に向かい、電車に乗り3時間かけてカサブランカへと向かう。カサブランカに一泊して次の日の早朝から空港へと向かい、アンマンへ飛ぶ。アンマンへの飛行機はエティハド航空、アブダビ経由となる。アンマンには深夜到着し、空港で3時間ほど寝る。また次の日の早朝、アンマンの空港からタクシーでバス乗り場へと向かい、バスで3時間半かけてペトラへ向かう。カサブランカも空港泊するという手があったけれど、さすがに連日の空港泊は身体がもたないと思って宿をとった。とにかくまた移動に次ぐ移動になる。

 

マラケシュ最後の朝は朝食をゆっくりとり、昨日と同じように日の当たるロビーでくつろぎながらマラケシュの思い出に浸っていた。道に迷ってこわかったなーとか、道に迷って不安だったなーとか、道に迷って焦ったな―とかそんなことばかり思い出していた。ホステルからマラケシュの駅までは、来た時と同じようにタクシーで行くことにした。タクシーがたくさん停まっている駐車場で「30dhまで駅まで行ってくれる人いない?」と聞いて回った。何人かのドライバーには渋られ、小型車のドライバーが行ってくれるということになった。

駅に着いた時間が午後1時頃、そこからカサブランカ行きのチケットを買った。片道90dh。クレジットカード差込口のある券売機はあったにもかかわらず、現金しか使えなかった。電車に乗り込みカサブランカに着くまでの3時間、僕は寝たり本を読んだりしていた。読んでいた本はチェコ好きさんから借りた村上春樹の旅行記、雨天炎天。ギリシャのアトス島と、トルコの外周を一周する旅行記だった。これを読んでいると、この旅行、もしくは先日までのマラケシュ・メディナなんて屁でもないような旅行に思えてくる。村上春樹は大学生ぐらいの若い頃からよく日本や海外を旅していたみたいだ。雨天炎天が書かれた頃、ちょうど27年前の1990年に発売された本だから、彼が40歳の時の旅行記になる。僕が40歳になったときこんな旅行をする自信はない。危険で、不潔で、不便で、一歩間違えればという内容だった。

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

 

電車には現地の人、比較的裕福に見える人たちが同じ車両に座っていた。タンジェのマクドナルドで見たようなヴィトンの旅行かばんを持った母と子、パーマのかかった髪をまとめ、黒縁メガネで洋服を着た若い大学生風の女性。彼らは皆フランス語を話し、フランス語で書かれた本を読んでいた。僕らは同じ車両だったから、子供にメントスをあげたり一言二言会話をしたけれど、英語は全く通じず身振り手振りのやりとりだった。

カサブランカには前も一度来ていたけれど、特に見るところがないという印象だ。いくつかはあるんだろうけれど、モロッコの他の場所に比べれば特筆するようなところはないんじゃないだろうか。カサブランカはモロッコで一番経済規模の大きな街であり、他の街に比べて近代化が見て取れる。その象徴が駅を出たすぐのところから走っているトラムだろう。日本にトラムはないが、例えば日本のバスなんかと比較しても余程近代的なカサブランカのトラムは、そこに全然似つかわしくなかった。メディナもあるにはあるが、規模が小さく人も店もマラケシュほどではない。こちらではメディナの外の新市街がメインと言える。カサブランカに着いた時はもう夕方であり、そのままホステルのチェックインをして日記を書いたり洗濯したりゆっくり落ち着いて引きこもっていた。食事は電車に乗っている時の車内販売で食べただけ、夜は食べていない。

次の日の早朝、空港へ向かう。10時に飛ぶ飛行機だったから8時頃には空港にいた。カサブランカの空港ではチェックインの手続きにものすごく並ぶ。なぜこんなに長時間並ばないといけないのか観察していた。まず、システムダウンがあった。この復旧に30分ぐらい待った。そういうのを除けば、基本的にチェックインの手続きが遅い。簡易な手続きになっていないのだろう、システムが古いのかもしれない。いつまでたっても航空会社の受付と乗客がアラブ人同士で言い合っている。単に乗客が自分勝手なのか飛行機に乗ることに慣れてないのか、荷物が多すぎたりオーバーしていたり何かが足りないのか口論していたり列が全然進まない。割り込んだりする人も時々いる。まるで中国人の列のようだが、そこまではひどくない。

チェックインが終わってから何か食べようかと思ったが、明日から別の国に行くためモロッコ・ディルハムを使い切っていた。クレジットカードは使えず(モロッコでは結局使えた事例のほうが少ない)、諦めて飛行機の搭乗を待つ。ここでも、まだ時間になっていなくても並ぶ並ぶ、彼らはただ並ぶのが好きなのだろう。若い、それこそ10代と思わしき金持ちアラブ人の女の子が何人か目立つ。アブダビの人間なのかモロッコ人なのかはわからない。とにかく全身ブランド漬けのよくわからない格好をしている。若いから仕方ないだろうけれど、センスどうこうというよりはただ金持ってるということしか伝わってこない。

飛行機は初のエティハド航空で設備が良く、CAが異常に美人揃いだ。今まで乗った飛行機でそういう例は少なかった。誰か綺麗な人がいることは珍しくないが、今回はほぼ全員、それもタイプの違う美人を揃えてきた。それもなぜかヨーロピアンが多い。アブダビの航空会社だがアラブ系のCAは少なかった。給料が良いのだろうか。どうでもいいが、カナダに居た時「キャビン・アテンダント(CA)っていう言い方はするか?」とカナディアンに聞いたことがあり「フライト・アテンダントとしか言わない」と言われた。

https://www.instagram.com/p/BCgJRWmhvAz/

アブダビに着き、2時間のトランジットの間にレストランに入った。僕はコーヒーとパンのセットみたいなのを頼んだら、かなりでかいのが出てきた。チェコ好きさんはスープを飲んでいた。入ったレストラン、レストランというよりはジャズバーのようなところであり、それも知らない種類のジャズを流していた。流していたというのは、でかい画面がいくつかありライブ映像を流している。よくわからない音楽だったけれど僕はその映像を見入っていた。

https://www.instagram.com/p/BCgI_AEhvAS/

アブダビからアンマンまでの飛行機は小さいものだった。以前アンマンのクイーンアリア空港に来たのは7年前、当時はまだ工事なんかを行っていたけれど今はかなり綺麗になっている。よく覚えているのはATMが入国審査の前にしかなく、入国を過ぎてしまうと使えなかったことだ。今は入国後のロビーにもちゃんと設置されている。当時はまだwi-fiなんてもの自体それほど普及していなかったが今は当たり前のように使える。充電もできる。空港に着いたのは夜中の2時半、アンマン市内までは空港から45分ほど、ペトラ行きのバスは朝6時半発の予定だ。3時間ほど空港で寝るつもりでいたが、イスしかないためそんなにうまく寝ることも出来ず、両替をしたり充電したりネットを使ったりしていた。僕ら以外にも同じように朝を待っている人が何人かいた。

朝5時頃、空港の外にあるタクシー乗り場に行った。タクシー乗り場ではチケットを売っているおっさんがいて、そこで行き先を言う。「アンマン市内のJETTバス乗り場まで行きたい」と言ったら伝わったみたいで若いドライバーをあてがわれ、チケットを渡しタクシーに乗った。まだバスも走っていない早朝ということもあってか、料金は20JD(約3,150円)と高めだった。昨日までモロッコ・ディルハムという通貨を使っていたため貨幣価値がよくわからなくなっていたが、全体的にヨルダンの物価は高めだった。特に観光地のレストランやタクシーなんかは日本とそれほど変わらない。庶民価格はだいたい日本の半分ぐらいだった。

タクシーに乗りアンマン市内へ向かっていると、ドライバーが「JETTバスの乗り場はどこの乗り場だ?アブダリか?」と聞いてきた。事前に調べていた情報だとそこで間違いないと思う。「アブダリであっている」と答えた。このJETTバスのバス乗り場がわからなければこのままペトラに行くことも出来ず、ヨルダンでの予定は全て狂ってしまい途方に暮れる。ここは外せないところだった。事前にネットで調べてはいたが、いろいろな情報が錯綜して不確かであり結局バスターミナルがどこかはっきりしなかった。結論として我々は、空港から乗るタクシードライバーに賭けるしかないということになっていた。どちらにしてもこの時間ではタクシーで向かう以外に手はなく、タクシードライバーが知らなければ地図を用意してきていたからそれを見せて向かってもらうつもりだった。確証のない地図ではあったが。

アンマン市内に入った。早朝で車は全然走っていないが、こんなにデカかっただろうかというぐらい道路網が発達している。6車線も8車線もあり立体交差に高速道路、確かに以前来たときも車は多かった。アブダリのあたりに来たが、JETTバスのターミナルがどこかわからない。ドライバーはそのへんにある店の兄ちゃんに訪ねている。兄ちゃんは向こうだと指差してタクシーはそちらの方向へ移動する。僕らも窓から外を見てJETTバスの看板を探す。少し走ったところにそれはあった。

ジェットバスのチケットを買うオフィスとターミナル 

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南の方にキングアブドゥラⅠモスクが見えている

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キングフセイン通りに沿っている

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事務所の外観、この前にバスも停まる

次回、10・11日目 ペトラ遺跡へ