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19日目 ルクミをどうぞ

前回の続き

明日は飛行機に乗って日本へ帰るだけであり、実質今日が旅行の最終日となる。書き残していることとして、まだユダヤ人に関連することが多く残っている。一つは、旅行中に読んだもう一冊の本「非ユダヤ的ユダヤ人」に関連した内容になる。これは古い本であり、著者はもう亡くなっているがアイザック・ドイッチャーという人でトロツキーの伝記が有名だそうだ。この「非ユダヤ的ユダヤ人」にかかれていた内容と今回の旅行とを絡めて、後日まとめたいと思う。

アイザック・ドイッチャー - Wikipedia

非ユダヤ的ユダヤ人 (岩波新書 青版 752)

非ユダヤ的ユダヤ人 (岩波新書 青版 752)

 

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もう一つは、ギリシャにおけるユダヤ人コミュニティについてここで触れておこう。ギリシャにおけるユダヤ人コミュニティは、セファルディとロマニオットというグループがいたそうだ。セファルディは以前の旅行記でも述べたようにスペイン人という意味で、スペインの異端審問から逃げてきたグループでありここギリシャにも多く存在した。もう一つのロマニオットというグループは、バビロン捕囚の時代(紀元前600年とか)からギリシャに住んでいたそうだ。そしてギリシャにおけるユダヤ人はその86%がホロコーストで死んでいる。残った人たちもイスラエルが建国されると移住したみたいだ。

ロマニオット - Wikipedia

アテネでユダヤ人に関連する場所を訪問するようなことはなかった。3日目は日曜日であり、蚤の市を見に行くことにした。その道中、お菓子屋があったので中に入る。前回の旅行記でも紹介した「雨天炎天」の中に、ギリシャのアトス島で食べたルクミという洋菓子が出てきた。それが売っているのではないかと思い、見てみることにした。本によるとルクミは寒天のようなものに砂糖をまぶしたお菓子ということで、それらしきものが並んでいた。このうちのどれかなのか、様々な色をしている。僕はお菓子屋の店員に「ルクミはどれだ」と聞いた。店員は「全部そうだ」と答えた。ここで買っていくことにした。量り売りをしているようで、入れ物の大きさを選ぶことができる。小さな箱を選び「いろんな種類のを詰めてほしい」と店員に頼んだ。色とりどりのルクミが入った箱を受け取り、代金を払った。€5程だったと思う。

買ってすぐ、店の前で箱を開けて食べた。本に書かれていた通りめちゃくちゃ甘い。食感は餅のようで、日本人には馴染みやすいと思う。味の種類はフルーツ、ニッキ、チョコレートなど昔の人から今の子供向けまで幅広い。蚤の市までの道中、ルクミを頬張りながら歩いていた。

ロクム - Wikipedia

モナスティラキという場所で日曜日に市が開催されている。本当にガラクタばかりで、置物とかばかり。こんなものを買ってどうするのか、少なくとも旅行者が買って持って帰るようなものではない、そう思っていたらチェコ好きさんはわけのわからない白い顔みたいな置物を買おうとしていた。とにかく色々見て回りながら歩く。ガラクタはガラクタだけど、あまりにも幅が広い。僕はどれ一つとしていらないと思っていたが、カメラのレンズなんかはボロくても安ければ見たい気もした。人が多い中を歩くのが疲れ、途中でジェラートを買い、座って食べた。

そのまま公園の方へ抜けると、こんどはみやげ物の屋台が並んでいた。僕はもうこれ以上物を買うつもりがなかったため、てきとうにブラブラと歩く。途中、雨が降ってくる。雨宿りも兼ねて店に入り、僕はコーヒーを頼んだ。チェコ好きさんはタコの料理。ギリシャコーヒーというメニューがあり、飲んでみたらいわゆるトルココーヒーと同じだった。ちなみにアラビックコーヒーともかなり似ており、あれのエスプレッソがギリシャコーヒーと言える。近くでは子供がアコーディオンを弾いていた。

食事を終えると再び通っていない道の方へと歩いた。こちらは本当におみやげ屋ばかりで、僕がイスラエルで買った邪眼除けや、パッケージ済みのルクミなどもたくさん売っていた。僕はもう何も買わなかったが、おみやげは物価のことを考えるとギリシャで買ったほうが何もかも安かったかもしれない。結局ナザールと呼ばれる邪眼除けのお守りはモロッコでもイスラエルでもギリシャでも売っていた。トルコにも売っているらしく、この辺り一帯のどこでも同じ習慣があるのだろう。

今回の日記のタイトルである「ルクミをどうぞ」というのは、先ほど紹介した「雨天炎天」において、村上春樹が巡礼中に修道院へ立ち寄る度にそうやって「ルクミをどうぞ」という風に出されていたところから取った。村上春樹は甘い食べ物が苦手で、最初出された時は食べきれずに半分近く残したが、そのうち巡礼の旅に疲れ、修道院に着くと「ルクミをどうぞ」といって出されるルクミのその甘さが疲れに染み渡るようになったとか。僕はその「ルクミをどうぞ」というフレーズが気に入り、そうやって出されたルクミを目の前にして浮かない顔をしている村上春樹を想像するのだった。しかもそれがそのうち、うまいうまいと言って頬張るようになるのだから面白い。

旅先の食べ物というのは、最初は慣れずそのよくわからない味がまずくて受け入れられない。しかし、旅を続けているうちにその現地の食べ物というのが風土、生活に合っているからか身体に馴染んでくる。今回我々の旅行で言えば、ミントティーがそれだった。旅行中にミントティーを初めて飲んだのは、グラナダのイスラム式浴場、ハマムの中だった。チェコ好きさんは「ハミガキ粉ティー」と呼んでいたし、僕はキシリトールガムを飲んでいるような気がしていた。それがモロッコを旅行する頃には毎日のように飲んでいた。ヨルダンではアラビックコーヒーを飲んでいた。イスラエルでは、イスラエルは国も新しく近代化しておりそういう土着の食べ物は特に無かったように思う。

次回、20日目 旅の終わり

雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 (新潮文庫)

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