スマートフォンでメモをとるのが許される日は来るのか

会社員じゃなくなってから大体3年が経った。当時僕は紙の手帳をほとんど使用しなくなり、仕事上のメモなどほとんどをEvernoteに書いていた。to doなんかはRemember the milkを使ったりiPhone公式のto doアプリやGoogleのto doを使用したりしながらも結局はEvernoteでまとめて管理するようになった(個人情報や機密事項などはなるべくオフライン環境に留め、それ以外の部分で自分が見たらわかるようにしていた)。僕が勤めていた会社はITとは全く関わりがなく、むしろそういう技術に疎い人が集まったような古風な職場であり、若かろうが老いてようが紙もFAXも日常的に大量に使う昔ながらの手法が用いられていた。それは業界の慣習や法律なども大いに関わっていたため、単にその会社が時代遅れとかそういう話でもなかった。だから、当然打合せでも会議でも人と会う時も紙の手帳だった。スマートフォンでメモを取るなんていうのはご法度だ。やろうものなら「何携帯をいじってるんだ!」と怒られるか単純に気分を害されるだろう。「メモとってるんで」なんてとても言えない。「じゃあいいよ」なんて絶対言われない。しかし手帳なら許された。そこに絵を描いてようが日記を書いてようがブログのネタを書いていようが、「お、コイツちゃんとメモとってるな」という風に見てくれる。まさか「ちょっと見せてみろ」なんて言われない。中身ではなく形式が大事だった。スマートフォンでは何をやっていようとも「遊んでいる」という風に見られた。そのことについて異論はなく、仕方がないと思う。実際スマートフォンで遊ぶことも多いだろうし、ゲームもできればTwitterもできる。真面目にメモを取っていたとしてもお知らせは常時届き、そちらに気が行くこともあるだろう。僕自身が話している最中にずっとスマートフォンをいじっている人がいたら「こいつ真面目に話聞いているな」とは思わない。手帳を開いて時々目を合わせていれば「ちゃんと書き留めている」と、どうしても思ってしまう。

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そういうことがわかっていながらも、個人的には紙の手帳を利用するのがすごく苦手で不便に感じるため、それを使わざるを得ないというのが苦痛だった。僕は字が汚く、入社当初に上司から「字が汚い」という理由で何度も書類を書き直させられた。それは時々自分で見てもわからないような悪筆であり、紙にわかりやすい文字を書くというのが苦手だった。大学に入りレポートも何もかもパソコンを使用するようになってすごく楽になったことを覚えている(板書はあまりしなかった)。それが会社に入って再び問題の種になるとは思いもよらなかった(実際仕事上の書類を手書きするなんてことはほとんどなかったため、問題というほどでもないが)。字が汚いことと、それ以外に僕は書いたものを頻繁に書き直す癖があった。書き直すというのは何も僕に限らず誰だってあるだろう。予定の変更であったり追記であったり、その度にいちいち消しゴムで消していては全体が汚くなり必要な部分まで消えたり時間もロスするし何より手間だ。ボールペンで記述していれば取り消し上書きの連続になり、ページが足らなくなったり文脈がよくわからなくなったり紙面上はカオスと化す。紙の手帳を使用している人は皆そういうのを上手く使いこなしているのだろうけれど、僕は苦手だったから社会人2年目ぐらいから全てデジタル化した。文字はクリアだし、消すのも追記も下線も色を変えるのも簡単。日付や位置情報なども勝手に付けてくれたり、検索、アラート、リマインド機能まである。コピーペーストもできればスマートフォンとデスクトップの同期まで可能だ。もっと言えば、手書きよりもタイピングであったりフリック入力の方が速かった。スマートフォンなら片手で操作できる。効率は上がっただろうし、何よりも快適だった。しかしながら、一人で作業をする時を除くとやはり紙の手帳を使わざるをえなかった。それは前述した通り、人の目があったからだ。

僕はそれ以降会社員をやっておらず、外国にいてもオフィスワークに就くことはなかった。他の会社や業界も経験していない。理系、もしくはテック系なら3年前の当時から環境は全然違っただろうし、そのあたり詳しいことは知らない。「環境による」と言えばそれまでなんだろうけれど、実情として、スマートフォンでメモをとるのが許される日は来るのだろうか。もしくは既に来ているのだろうか。当時からタブレットが普及しだしていたから、タブレットなら許されるとかそういう変化はあるのだろうか。それともやはり、今でも紙の手帳を使わざるを得ないのだろうか。