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散々な夜

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お酒を飲んだのはパースに寄った日以来で、1ヶ月ぶりとなる。その時もビール一本ぐらいで、昨日飲んだのはテキーラのショット4杯、ビール3本、お酒弱いからもうこのあたりで足元フラフラのぐわんぐわんだった。何故そんなことになったのか。自分の下のベッドで寝ている同居人のニルスというドイツ人が何故か誘ってきた。昨日の夜10時頃、ニルスは同じくドイツ人の友達を連れて帰ってきた。この時点で彼は既に酔っていた。「クリス・ブラウンは知ってるか?本当に知らないのか?」などと言いながら曲を聞かせてきたり歌っていたりしながら洗面台で髪をセットしていた。僕はその隣で歯を磨いていた。

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タバコを吸うために外に出ていたら、今から出かけるニルスとその友達が家から出てきた。

「俺にも一本くれないか?おまえは今日何してたんだ?」

「仕事を探していた」

本当はそんなに必死で探していないけれど、他には特に何もしていないから答えようがなかった。

「仕事を探して寝るだけか?今日は土曜日だぜ?whatsappは入れてるか?」

「入れてない」

「オーケー、番号を教えてくれ、今から着替えてきて準備出来たら電話してこい」

「どこ行くの?」

「anyway(クラブ)だ」

うわークラブとか全然行かないんだよな―、けど、なんというか、この誘われたら断れない日本人の感じ。歯も磨き終わったところで本当はめんどくさかったけれどここで断るのもそれはそれで「つまらないAsian」であり、部屋に戻ってズボンを履き替えていた(既に寝る用のハーフパンツを履いていたからジーンズに替えた)。彼らはもう先に行っており、そのanywayの場所を調べる。めちゃくちゃ近くにあった。

Anyway | Anyway

家を出て歩いてすぐに着いた。土曜日の夜だから、入口の前は行列ができている。肩が出ていたりチューブトップのドレスアップした女性と普段着の男性たち、西洋人ばかりでこういう場所にアジア人は全然いないのが恒例である。さらに僕はジーンズと長袖シャツの汚い格好ということもあって、場違い感が甚だしい。その場にいたたまれない気持ちもあり、ニルスとその友達を探すが、列には並んでいない。言われた通り電話してみる。

「来たよ」

「サザンクロス(駅)まで来てくれ」

「もうanywayに着いたんだけど」

「とにかくサザンクロスまで来てくれ」

なんだそれは。準備が早すぎたのだろうか、それにしても彼らを追い抜いたなんてことはありえない。言われた通り駅に向かった。駅もすぐ近くにある。どのあたりにいるのかわからなくてまた電話したら2人を見つけた。ビール瓶3本ぐらい抱えており、全部栓が空いている、何その飲み方。アメリカやヨーロッパ、ここオーストラリアでも路上での飲酒は違法であり、土曜日の夜は警官がうろうろしている。ニルスの友人は(フレッドとか言ったかな)すれ違う人に手当たり次第話しかけながら叫んでいる。完全なる酔っぱらい。「あいつ完全に酔ってるだろ!」と笑いながらニルスも負けじと叫ぶ、声かける、そこにいる僕はどうしたらいいんだ。ただ笑ってその場に佇むだけ、いやあ日本人だね。

サザンクロス駅まで来たのは待ち合わせのためだそうだ。どうやら友達があと3人ぐらい来るらしい。彼らが通行人に絡んでいると、向こうから人が走ってきていきなりジャンプしてニルスとフレッドと抱き合っていた。ああ、多分友達なんだろう。近くで立ち尽くす僕。

「フラットメイトのカズだ」

「カズン(cousin)?」

「俺の友人にもカズって日本人がいるんだ!同じ名前だ」

いきなり紹介される。名前を言って「cousin(いとこ)」と呼ばれるのはもうお決まりになっている。男性3人女性1人、それぞれ挨拶をして名前を交換して、ドイツ人に囲まれてこの場で明らかに浮いている僕に対し、ニルスが親切に話を振ってくれる。彼の友人も僕に興味なんか無いだろうに親切に答えてくれる。外国人と関わるときに限らず、そういう気遣いは大切なので覚えておきましょう。

ようやくanywayに向かう。既に酔っぱらいのニルスとフレッドはビール瓶片手に同じくanywayに向かう人々に絡みまくる。

「いつもこんな感じなんだ!」

疲れないのか、これが彼らなりのストレス発散方法なのだろう。実にヨーロピアンらしい。anywayに着き、あの場違いな列に並んでいるとニルスがガードマンに声をかけられた。

「君は路上で飲酒していただろ?ここには入れないよ、カメラにも映っているんだ」

「もう持ってないぞ!ビンは捨てたじゃないか!」

「ダメだよ」

既に酔っ払っている客だったりトラブルを起こしそうな人がクラブに入れないことはよくあると聞くが、目の当たりにしたのはこれが初めてだった。「What’s the Fuck」を連呼するニルス。仕方なく別のクラブへ行こうということになった。Ratsというのが近くにあるそうだ。

その道中も酔っ払いまくりのフレッドが通行人に絡みまくる。路駐してある車を蹴飛ばしたり、通行人を突き飛ばしてケンカになりそうになったりするが、フレッドはどうみてヤサ男であり強そうな感じではない。Ratsに着くと、また列に並んだ。入り口に近づくと「cash only(現金のみ)」と言われATMはどこだ、お金を下ろしてくるとニルスが騒いでいたら

「君は酔っているから入れないよ」

またもやガードマンに止められる。しかも彼の友人たちは既に中に入っていた。「友達は中にいるんだ!」とニルスはゴネているがこういう時のガードマンはかたくなであり、他にも酔いつぶれたであろう客が中から連れ出されていた。ニルスは携帯に話しかけている。初め電話しているのかと思ったが一方的に話し続けている。SMSかwhatsappを利用したボイスメッセージらしい。彼らの間では文字を打つのではなくこういった音声でのやり取りが一般的のようで、ボイスメッセージに限らずsiriや音声検索なんかも一般的に利用されている。そう言えば日本でも最近こういうのが話題になっていた。

「一晩に二度も入店を断られたのは人生で初めてだ!いい友達を持ったよ!」

ニルスの友人たちはRatsから出てこず、彼らだけで楽しんでいた。酔っているとは言えこれはさすがにひでー話だ。ニルスは何度もメッセージを送っているが返事はない。さあどうする、彼の友人たちはみなRatsの中、一人取り残されたニルスと、彼の後ろについていただけの僕。僕はもうそのまま帰っても全然いい。初めからいてもいなくても同じ存在だし。

「もう一回anywayへ行こう、入れるかもしれない」

マジか、その発想か、僕とニルス2人は折り返して再びanywayへと向かった。ニルスはずっと悪態をついている、僕は日本人らしくそれをなだめる。彼は途中で立ち小便をしたりanywayの場所がわからないみたいで通行人に話しかけたり、僕が覚えていたから「そこだ」と言ってすぐに着いた。一度離れてから再び戻ってくるまで時間にして30分ほどだったが、さっきのガードマンは姿を見せない。僕らは再び列に並び、入店しようとしたところで再び「cash only」と言われた。しかもここは入店料$25もする。さっきのRatsが$10だったことを考えるとめちゃくちゃ高い。近くにATMがあったから(大体そういう場所の近くにATMはある)現金を下ろす。ニルスが「anywayへ行く」と友人にメッセージ送っていたら「今から向かうから待ってろ」という返事が来たため待つことになった。その間にニルスと話した。今まで何やっていたとか、オーストラリアで何をしていたとか、東南アジアを旅行した話とか、他のフラットメイトは全然英語を話さないとか、前住んでいた韓国人がウザかったとか。そうやって話していても彼の友人は現れなかった。「もう中に入ろう、酒が必要だ」僕らはやっと中に入った。

「入ってすぐにショットを飲むぞ」

バーカウンターでテキーラを頼むニルス。「こうやるんだ」と言って手の甲にレモンを塗り、上に塩をかけて舐め、ショットを飲み干した。これ、映画で見たことあったな。フロアへ行くと、まあ、あれだけ外で並んでいたぐらいだから盛況だ。

「まだ酒が足りない」と言って僕とニルスはビールを飲んだ。それから彼の友達も一人だけ(!)来て、ショットであったりビールを何度もあおりながらフロアをうろうろしていた。彼らは誰か女を引っ掛けようとしていたが僕はお酒に弱いためただ泥酔してその辺にいる人とわけのわからない会話をしたりfacebookを交換したりうろうろしているだけ。気づいたら朝6時だった。クラブも閉まる。フラフラで歩いて帰る。

その道中もニルスは「I’m fucking drunk!!(めっちゃ酔ってる)」と叫びながら通行人に手当たり次第声をかける。通行人はめんどくさそうな顔をしながら応対する。座り込んで葉っぱを吸っているような人たちもいて、僕はケンカにならないよう間に入ったりしつつ、ずっとそんなことを繰り返しながら家に帰った。吐きそうになりながら寝て、目が覚めたら昼の3時だった。ニルスは夕方5時まで寝ていた。