「個人の時代」を映した新映像の世紀第6集

新・映像の世紀については賛否両論で、20年前に放送された映像の世紀の方が良かったという声も多い。歴史を取り扱う資料としては確かに旧版のほうが時間数が多く、様々な映像が網羅され内容も豊富であり、論調についても旧版の方が恣意的な部分が少なかったように感じる。ヒトラーに関する内容などは前回で一度取り扱っており、新版で改めて見るには情報の薄さを感じた。旧版は歴史の資料として面白く、新版は映像技術の発達や役割の変化という部分に焦点を当てた回が良かった。特に最終章である第6集では、旧版から20年経っていることも踏まえた現代について、映像の技術や扱い方に関する進化を現した内容であり、ケータイのカメラやyoutube、facebookも登場し、個人の撮影した映像が社会変革を起こす様相が紹介された。まさにこの時代を生きている人間として非常に興味深く、外国で起こっていたムーブメントについては詳しく知らなかったこともあり、同じ時代を生きながら情報感度の弱さを実感する。我々日本人はどれだけこの流れに追いついているだろう。

 

番組の中で触れられた映像、もしくは関連する映像を一部貼っておく。

シリアをドローンで撮影したビデオ

ここに残酷な描写は無いが、悲惨な映像ではある。戦争が起こったシリアの無残な姿をドローンで映しだした映像であり、その細部まで鮮明にとらえている。シリアは今もこのような状態であり、戦闘が続く地域もあり、多くの人が難民となって国外へ避難している。このような映像もドローンを飛ばすだけで撮影できるようになった。

ISの広報ビデオ

これは番組で紹介されたものではないが、海外のニュースで紹介されたISのプロパガンダ映像とその解説。ISについて驚くことは、このような映像を撮って広報活動を行っているということそのものにある。あまり興味がなくて知らなかったが、人質を殺す映像だけでなくイメージアップや勧誘のための映像は手の込んだものであり、そこに金と人と技術があることが伺え一テロ組織と侮れない。

こちらは番組とは関係ないISの内部を紹介するニュース映像。この映像は2年前のものであり、今は当時ほどの勢いがないそうだ。残酷な部分もあるので注意。

世界中の人がHappyを踊った

https://movie-s.nhk.or.jp/v/k51j3y3w

これをネットで見かけた時は、こんなことになっているなって知らなかった。曲はもちろん知っているし、踊っていた人がいたことも知っている。けれど世界中で、東北の被災地やアフガニスタンやエジプトやシリア難民の間でもこの曲を歌って踊り、それをアップロードして励まし合い、そういう意味があるっていうことまで意識していなかった。

ゲイであることを父親に告白する兄弟のビデオ

これは泣いた。youtubeでこういうことが広がったというのも番組で紹介されている。どこにでもいる個人が映像を用い、世の中に影響をもたらした例として。

他にも911の映像やFacebookから始まったアラブの春、軍のリーク映像などが取り扱われ、以下のブログで細かく紹介されてる。

これまでの映像の世紀とは違った、現代の映像とその技術に焦点を当てた今回、発信者の中心は個人になり、個人が世の中に影響を与える時代になった。個人は発信する機材と環境を手にし、当事者になればメディアの取材を待たずとも当事者として世界に発信できる。口を閉ざしていても大切なことは伝わらない。発信したところで何も変わらないかもしれない。非難を浴びるかもしれない。でももしかしたら同じ苦しみを抱えた人や、国境を越えたどこかの誰かに伝わるかもしれない。誰かが励まされ、救われるかもしれない。団結できるかもしれない。個人でもそういうことが可能な時代に生きているということを強く実感した。テクノロジーが、これからも人と人を繋げますように。

第6集 あなたのワンカットが世界を変える - Director's Cut | 番組を知る | NHKスペシャル「新・映像の世紀」

公式サイトで6集の映像を一部見ることができる