文句は言うだろ。文句言ったところで何も変わらない。けれど文句ぐらい言ってもいいじゃないか。アメリカ大統領の政策に対して「外国だから」という理由で文句言わないのか。最近読んだ本で知ったが、ギリシャは投票が義務で投票しないと罰則があるそうだ。歴史的な経緯もあって、選挙の日はかなり熱くなるらしい。日本において選挙権は権利であり義務ではない。昔からよく義務を果たさずに権利をうんぬんという話があってあれもおかしいと思っているが、今回は関係ない。なにしろ選挙権を主張しているわけではない。投票しないということはただ権利を行使していないだけになる。別に批判するのは自由なんだけど、権利を行使しないことで批判の的になるっておかしな話だ。では、なぜ人々は投票に行かないのか。
投票に行かない理由
- めんどくさい
- 興味がない
- 時間がない
- 忘れていた
- 投票所に行くのが嫌
- 投票したい候補がいない
- 投票したくない
- 行っても無駄だと思っている
これぐらい考えられる。それぞれの理由は「興味がないから→めんどくさい」という風に互いに関連し合っている。中にはこれらのうちの一つではなく3つも4つも当てはまる人だっているだろう。行きたくない要素がこれだけある中で、果たしてそれらを上回るような投票に行く理由は何かあるのだろうか。これらを全て打ち破ってでも投票所へ向かいたいだけの理由が。せいぜい世間体ぐらい?
投票率が低いのは仕方ない
そりゃあ中には日々政治について真面目に考え、候補者の成果や実績をよく知り講演を聞きに行って、選挙以前から候補を擁立したり応援している人もいるだろう。年配の個人や企業には、政治家や政党と直接繋がりがある人も多い。個人的な恩義があったり政治参加の意思があったり意欲があったり、そういう人が投票に行くんでしょ?それはもうある種の趣味に近い。繋がりがある人はただの義理だ。どうぞご自由に。
そうじゃない人にとって、投票なんてむしろ行かないほうが自然なんじゃないか?これといった理由のない投票や、意思も考えもない無責任な投票など無いほうがましではないだろうか?そんな思いつきで政治が変わってしまうほうが、投票率が低いことなんかよりもよほど怖い。投票したくない人が無理矢理あてずっぽうに投票して、もしくは遊びやバクチ感覚で投票してそれが国政に反映されるなんて、それこそ悪夢ではないか。先日もイギリスで、EU離脱決定後にEUについてGoogle検索している数が多かったことが話題に上がった。このニュースからはEU離脱の意味を考えずに投票していた人の多さが伺える。政治について考える前に、ただ意味も中身もなく投票するかしないかだけに論点を置くのはむしろ危険なことだ。
EU離脱決定後、イギリスの人たちは「EUって何?」と検索していた
だって投票したくないんだもの
真面目に考えた上で投票しない人だっているかもしれない。彼らが投票しない理由として挙げられるのは、先ほど挙げた6,7,8番が該当するのではないか。
- 投票したい候補がいない
- 投票したくない
- 行っても無駄と思っている
何故こんなに投票したくない政党や候補者しかいないのか。文句があるならお前が立候補しろ、擁立しろ、そんな話は現実的ではない。投票したくない、もしくは投票したい候補がいない理由としては、一つは政治不信があるだろう。公約破り、汚職、そういった裏切り行為が頻発している中で疑心暗鬼になっている。自分の一票が無用な候補者を議員に祭りたて、いらぬ汚職に肩入れすることになるのではないか。候補者、政党を信じて投票したのに、選挙前と当選後では言ってることもやってることも全然違う。明確な裏切り行為が頻発する中、どうして投票しようなどと思えるのか?しまいには野々村議員、舛添、EU離脱などに投票した人はバカとまで言われる。それでもあなたは投票したいですか?69.28%という近年稀に見る高い投票率を叩きだした2009年衆議院選挙、民主党政権が発足して何か良いことがあっただろうか?
アメリカ大統領選に投票しなければならない国民は非常に難儀だなあと思う。支持していなくても最終的にどちらかを選ばないといけない。唯一無二の大統領ともなると、それでも仕方なしに選ぶのはわからんでもない。
21%がクリントン氏もトランプ氏も支持しないと回答した。さらに、クリントン氏支持者のうち46%、トランプ氏支持者のうち47%が対立候補を当選させないことを最優先に投票すると回答。クリントン氏とトランプ氏の双方に対する好意的でない見方が広がっていることが示された。
大統領選ヒラリー、トランプ支持者に広がる対立、第3の候補を望む声も | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
投票率の高い国、低い国
そんなアメリカ大統領選挙でも、投票率が抜群に高いとは言えない。特に18〜29歳の層は2012年の選挙において45.0%、1996年においては39.6%と低い。日本の20代が直近で33%だから10%前後しか差はない。しかも中間選挙に至っては全体で40%程しかない。
共和党が上下両院で過半数を獲得、上下両院の「ねじれ」は解消 | ニッセイ基礎研究所
他の国はどうだろうか。日本の投票率というのは果たして本当に低いのか。他が低ければ日本が低くても肯定される、なんて言うつもりはないが、他国の事例から見えてくるものもあるだろう。
国 | 投票率 | 年次 |
---|---|---|
アメリカ | 42.50% | 2014 |
スイス | 48.40% | 2015 |
日本 | 52.66% | 2014 |
フランス | 55.40% | 2012 |
イギリス | 66.12% | 2015 |
カナダ | 68.28% | 2015 |
ドイツ | 71.53% | 2013 |
オランダ | 74.56% | 2012 |
スウェーデン | 85.81% | 2014 |
統計からてきとうに先進国を選んでみたが、中でも日本は低い部類に入る。この中で投票しないと罰則が科せられるのはスイスのシャフハウゼン州のみ。スウェーデンの投票率が高い理由は10代や20代の議員が多く、各世代の声や意見が国政に反映されやすいという特徴があるからだろう。他の国が気になれば下のリンク先を参照してください。
Voter Turnout | International IDEA
選挙に行かないと入獄も!世界各国の「投票率」、驚がくの裏事情 | アサ芸プラス
【保存版】スウェーデンの若者の選挙の投票率が高い理由 10記事 まとめ
投票率が低い若者の意見は、日本の政治に反映されない | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
投票する意味がない
最近では大阪都構想の否決やイギリスのEU離脱において、若者がどんな意見を持って投票したとしても圧倒的に数の多い高齢者の意見が通ってしまったことによる嘆きが話題となった。もし若い世代の意見が通るなら、若い世代の投票率は上がるだろう。しかし現実には若い世代の投票率が上がったからといって、若い世代の意見が通ることはない。若い世代の意見を通すために必要なのは、若者の人口とそれを代表する若い候補者になる。
大阪都構想の住民投票における投票数、投票率の結果をグラフ化してみました - longlowの日記
厭世的になる
圧政(もしくは失政)を敷かれていると感じる、しかし自分たちに力はない。権限がない。選挙権を行使したい候補者もいなければ、効果もない。その権利は無価値だと感じる。投票すれば裏切られる、投票先を間違えれば批判される。投票しなくても批判される。「投票もしないで政治に文句言うな」は本当に筋が通っているのか?白票、無効票でもいいから投票率を上げろと言う。そんなものを彼らが本気で意識するだろうか?自分たちが通るか通らないか、いくつの議席を確保するかに必死でそれどころではないだろう。というわけで僕は選挙に行かない人を批判したり、投票しないなら文句を言うななんて言う気にはなれない。むしろ、たかが選挙に行ったぐらいで優越感を持たれても困る。大事なのは投票したかしていないか、ではなく、その中身だろう。政治参加の中身を語らずに、ただ投票にこだわることは愚かだとさえ言える。そういった愚かさを知って政治に関心を持つというのもまた第一歩かもしれないが。
余談
最近読んだ本には冒頭にも上げたように、ギリシャの選挙について書かれていた。ギリシャの選挙は今もそうなのか知らないが、出生地で投票することが義務付けられている。そのため選挙の時期になると皆故郷へ帰って投票するそうだ。大変そう。しかしそういう人たちの投票率を上げるために、ギリシャでは選挙のためだけに支持者を故郷へ送る「政党バス」というものがあるみたいだ。各政党が故郷の投票所まで無料で送迎してくれる。こういう策は面白いと思った。日本でも住民票を移しておらず、投票するためだけに帰れないという人はけっこう多いと思うから、本当に投票率を上げたかったらやってみたらいいんじゃないか。しかし、これ日本で合法なのかな。投票所と言ったって全国各地にあるからかなり手間も費用もかかりそう。しかもギリシャの最近の投票率は63.60%と低い。