「予告された殺人の記録」感想・書評

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これはある小さな町で起こった殺人事件について、調べた記録である。調査を行ったのはその町で生まれ育った男であり、事件当時も町に居合わせていた。事件から数年後、彼は何人もの関係者から話を伺い、まるで刑事か探偵のように検証している。この事件は初めから犯人がはっきりしている。被害者サンティアゴ・ナサールを殺した犯人は、パブロ・ビカリオとペトロ・ビカリオの双子の兄弟。殺人の動機もわかっている。事件後に裁判が開かれ、判決も出ている。それでは一体何を調べているのだろうか。事件からは既に年月が経過しているにも関わらず、町の住民一人ひとりに丁寧な聞き込みを行い、調書記録を作る目的とは。

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予告された殺人 

この事件には一つ不可解なことがあった。犯人であるパブロ・ビカリオとペトロ・ビカリオの双子が、事前に犯行計画を言いふらしていたことだ。被害者のサンティアゴ・ナサールへ向けては丁寧に犯行声明まで送っている。小さな町のことだから、この犯行計画は町中に広まっていた。隣近所の誰もが噂をしていた。警官の耳にまで入っていた。しかしなぜか、被害者はそのことを知らなかった。犯行声明文にも気づくことがなかった。そして、事件は予定通りに起こった。それがこの「予告された殺人の記録」である。

違う意味での迷宮入り

聞き込みを行う中で、犯人から直接犯行予告を聞いていた人たちは「まさか本気だと思わなかった」とか「酔っぱらいの戯言だと思った」などと供述している者が多かった。しかし中には、被害者が殺されることを望んでいた人間もいたことがわかった。また、被害者の身を案じて、見かけたら用心するように伝えてほしいと言う者もいた。阻止しようと思えば簡単にできたはずのこの事件は、何故起こってしまったのか。どのようにして起こったのか。事件を取り巻く人々と、事件に繋がった環境の実態に迫る。

リアリズム小説

コロンビアが誇る世界的作家、ガルシア・マルケスが自身の最高作と呼ぶ「予告された殺人の記録」は本人の経験を元に書かれた小説であり、当初はルポとして書き上げる予定だった。つまり実在の事件を元にしている。数年後に事件を調査したのは、ガルシア・マルケス本人だ。そういういきさつもあり、有名な「百年の孤独」などとは一味違う、現代的な読みやすい小説として仕上がっている。

ガルシア・マルケスは読むのが大変だと言われていたから、初めて読んだのがこれで良かった。ページ数も少なくてすぐに読み終わる。苦労するのは、登場人物がたくさん出てくるため名前を憶えるのが大変だということ。ただ短い作品なので、ページを戻って「誰だっけ」と見直すのは簡単だったからなんとかなる。一見推理小説みたいな内容で、ここに載せた紹介もそうとしか思えない文章になっているけれど、思いっきり純文学でした。不気味。

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

予告された殺人の記録 (新潮文庫)

 

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