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「知的生産の技術」という名の手帳活用術

「知的生産の技術」という本を読んだ。それにしてもなんと重々しいタイトルだろう。こんなタイトルの本は、本屋に並んでいても手を出す気にならない。買ったとしても、最初の1ページを開くまでかなりの時間を要する。しかしいざ開いてみると、スラスラ読めた。全然難しい内容ではなくおもしろい。読み始めて1日目で半分以上読み、結局3日で読み終わった。内容はなんのことはない(という言い方は失礼だが)手帳の書き方の本だった。手帳の書き方と言ってしまうのが一番わかりやすいが、それが「知的生産の技術」なんてタイトルになるにはワケがある。まさに手帳革命と謳うぐらいの内容なのだ。とりあえず目次を引用してみよう。

1.発見の手帳
2.ノートからカードへ
3.カードとそのつかいかた
4.きりぬきと規格化
5.整理と事務
6.読書
7.ペンからタイプライターへ
8.手紙
9.日記と記録
10.原稿
11.文章

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知的生産における事務革命

カード?なんのことやら、手帳が出てくるのは最初の1、2ぐらいで、この本は手帳に限らず事務処理全般の画期的な技術を紹介している。それは道具へのこだわりなんかではなく、いかにスムーズに知的生産を行うために事務環境を整えるか、という側面がテーマになっている。6.読書、8.手紙といった項目は読書のしかた、手紙の書き方だがこのあたりは割かれているページ数も少なくおまけといったところ。この本のメインはやはり1〜3に続く毎日の手帳、メモ関する内容だ。

何で今までこの本を読まなかったのだろう。やっぱりタイトルが重いからだ。学生時代に出会いたかった本だが、今からでも遅くない。職場だけでなく家庭でも使える目からウロコの事務革命がたくさん紹介されている。この本に出てくる技術は単に資料の整理法ではなく、情報を快適に利用するための技術だ。これはあらゆる場面に使える。パソコンのデータ管理にももちろん使える。それどころか、脳内の記憶にも使える。脳内における記憶の整理体系だけ覚えておけば、あとは体系に沿って整理された記憶を取り出すだけ。忘れてしまってもいい、忘れるための技術だと言える。

著者がこの本を書こうと思ったのは、当時こういう本がなかったからだそうだ。創造的な仕事を行うに適した、すなわち知的生産を行うための環境は、ある一定の水準に達すると似通ってきたり、皆同じ手法に則っていたりする。しかし、その理屈と体系に沿った指南書は存在しない。知的水準が高く自然にそこに到達した人たちはそれでいいが、その技術を広めないとあまりに非効率なやりかたが世の中に蔓延したままになるということで、この本が書かれた。1969年のことです。著者の梅棹忠夫さんが考案したカードは、京大型カードとして京都大学の文房具店で商品化されている。

コレクト 情報カード B6 京大式 C-602

コレクト 情報カード B6 京大式 C-602

京大型カード

この本で最も注目されるところが、この京大型カードだ。著者は幼い頃、レオナルド・ダ・ヴィンチがいつでもどこでも手帳にメモを取っていたことに触発され、真似するようになった。そこには何でもかんでも書くわけではなく、アイデア、発見を書き留めておくため、発見の手帳と呼んでいた。その後研究者になられた著者は、手帳はシンプルで決まりきった型のものを使い続けたほうがいいということで、野帳を利用されていた。野帳は元々野外活動用に作られた手帳であり、小さく持ち運びが簡単で、表紙が硬く下敷きになるため場所を選ばず記入することができる。モレスキンノートと違って値段も安い。

コクヨ 測量野帳 スケッチ 白上質紙 40枚 セ-Y3

コクヨ 測量野帳 スケッチ 白上質紙 40枚 セ-Y3

そんな野帳は屋外で書くだけなら確かに便利だけど、書いたものを活用しようと思えば何かと不便がある。ページが固定されていては使いにくい。書いたものの順序を並べ替えたり、間に差し込んだり、必要なページだけピックアップして組み合わせたりできない。何かもっと簡単な方法がないかということで著者が思いついたのは、カードだった。初めからバラしてあるカードをプラスチックの板で挟んでゴムで束ね、日々の発見、アイデアを書き留める手帳として持ち歩く。京大型カードの誕生だ。これは書くそのときよりも、書いてからの管理、活用において絶大な効果を持つ。同じカードを用いている人同士であれば、他人とのカードのシェア、交換、組み合わせもできて、アイデアが縦横無尽に行き交う媒体となる。

現代ではクラウド型ノートアプリ

ただし、この京大型カードを現代で使うのが効率的かと言えば、電気とネットがない場所なら今でもそうだろう。この京大型カードのアイデアは、大体においてスマートフォンで代用できる。もっと言うとEvernoteだ。京大型カードを活用する一番の目的は知的生産における無駄な手間を省くことであり、現代においてはクラウド型ノートアプリがその最先端にあたる。京大型カードにできてEvernoteにできないことは、ピンで止めて組み合わせたり画面いっぱいに好きな順番で並べて表示したりできないことなどがある。しかし必要なものだけをピックアップしたり共有したりはできる。何より検索できることが最も有用だろう。もっと完全に京大型ノートを再現したようなクラウド型ノートアプリは存在しないのだろうか?

知的生産の技術: Evernoteは京大式カードのクラウド版 | Chase Your Dream !

Evernoteが登場した当時「どう活用していいのかわからない」という意見が数多く出た。それに対応するように「Evernoteの活用法」なんていう記事が量産されたが、結局一番有効な使い方はこの京大型カードの使い方だった。この「知的生産の技術」はEvernoteをどう使っていいかわからないという人にそのまま勧められる内容になっている。最近はEvenoteの挙動があまりよくないためGoogleKeepを使い始めたが、京大型カードのクラウド版としてはこちらのほうがより近いかもしれない。Evernoteのようにwebクリップとして使えなかったり、一長一短ではある。

Google Keep - メモとリスト

Google Keep - メモとリスト

  • Google, Inc.
  • 仕事効率化
  • 無料

わずらわしさを快適に変える

  • 忘れるために書く
  • 初めて見た人がわかるように丁寧に書く
  • カードは使うために書き残す、眠らせるためではない

京大型カードを簡単に紹介したが、その詳しい使い方や目的、根底にある思想まで本の中でしっかり解説されている。今ここで取り上げたのはほんの一部だ。それにしても、事務作業がストレスに煩わされずに効率的に進むというのは、なんと心地よいことだろう。「知的生産の技術」を読み、勉強で、職場で、家庭で事務革命を実践し、体感してみようではないか。日々開発される便利な文房具のファンや、常日頃から事務を効率的に行うことを考えている人にとって、この本は今でもバイブルにあたるだろう。

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

この本は欲しいものリストから送っていただきました。ありがとう!また新しく何か頂けたら書評・感想・レビューを書きます。

お題「読書感想文」