読みたい本がいっぱいある幸福

本じゃなくて映画でも音楽でも舞台でもゲームでもなんでもいいんだけど、僕の場合は最近本でこの幸福を享受している。そうは言ってもたくさん本を読んでいるわけではなく、一日の内に読書に割く時間が長いわけでもない。全く読まない日もある。今年に入ってからはまだ一冊も読み終えていない。今読んでるのがめっちゃ長くて、ページは686ページしかないんだけど本の長さっていうのはページ数よりも長く感じる長さであって、長いなーと思いつつまだ半分ぐらいしか読めていない。

その話は別として、それでも「読みたい本がある」ということ、「今読んでいる本がある」ということが自分にとっては何か心の余裕につながる救いのようになっている。大げさな言い方だな、もっと簡単に言えば、幸せでいられる。すごく些細な幸せかもしれないが、幸せの本質っていうのはその瞬間に訪れる無自覚なものと、自分の中に所有している自覚できるものに分けられる。本を読んでいる最中が前の方で、読んでいる本、読みたい本があることは後の方になる。何かやっているときだったり渦中にいるときは夢中になっているため、主観的には自分の幸せに対して無自覚である。しかし、何かを待っていたり所有していたりすれば、たとえその時間が退屈であったとしても、その先にあるものが期待できるだけで幸せな気分になれる。旅行は行くまでが楽しい、みたいなもんだ。そういうものを持っていないと実に退屈な時間が流れていってしまう。

だから、人生を幸せに過ごすコツは、常に期待の幸せを抱えておくこと。常に夢中な時間を過ごすことができればそれでいいんだけど、なかなか難しい。でも常に期待の幸せを抱えておくことは結構簡単にできる。月曜のジャンプが楽しみで待ち遠しいとか、毎週の講義できれいな人に会えるとかそんな程度からでいい。一番理想的なのは、夢中になれる行動がさらにその先にある期待への幸せとつながるような連鎖。筋トレ自体が楽しくて、続けることによりもっと上位の筋トレに挑戦できるようになる期待とか。読書で言えば、読んでいる本が面白くて別の著作が期待できたり、本の中に引用された作品を期待したり。

どんな本が読みたいか

読みたい本を見つけるのは結構難しい。昔は本屋に立ち寄って眺めるだけで5冊は見つけられたが、今はそういうこともない。手にとって立ち読みする気にもならないこともあれば、話題の本とかタイトルで選んで外れだったりすることも多い。雑誌の書評なんか読んでみると面白そうだったり興味湧くことはあるんだけど、まずその書評文を読んでみようという気になかなかならない。昔ヴィレッジヴァンガードで流行ったポップ商法は読む手間もかからないくらい短くまとめられたオススメ文で、あれを見て買ったのは1回しかないんだけど、愛のあるポップなら良いと思う。

ブログの書評だと極東ブログからはよく本を買っていた。本の紹介をやっているだけのブログから本を買ったことはない。本の感想だったり書評ブログは、既に自分が読んだ本がどのような文脈で語られているかをチェックするためだけに読んでいる。ではそれ以外に、一体どのようにして読む本を選ぶのか、どんな本が読みたいのか、最近買った「月は無慈悲な夜の女王」と「地下室の手記」を例にして、自分の本の選び方をまとめてみる。本を選ぶ基準は基本的に二つあり、一つはテーマに興味があること、もう一つは読んだその先に見えてくるものに興味があること。

月は無慈悲な夜の女王

この本はニコニコ動画の岡田斗司夫ゼミで紹介されていた。

岡田斗司夫が誰かっていう話は置いといて、動画の中の一部でこの本が紹介されている。この人は往年のSFファンであり、古くからハインラインの愛読者なんだけど、本の魅力だったり簡単な紹介をしてくれている。それだけにとどまらず、この本の読み方、そこから見えてくる世界、周辺の反響や作家がやっていることなど本を取り巻くことまで熱く語っているから、テーマにさえ食いつけばその本の紹介が非常に興味深くなる。

さて、そのテーマだけど大まかに言えばSF、宇宙モノ、近未来モノになる。この本については特にガンダムの元ネタになった本ということで、中学生の頃に年末深夜特番で劇場版機動戦士ガンダムを見た僕としては、やはり興味をそそるテーマだった。この本では、月に移り住んだ人たちが地球から独立する革命戦争を描いている。ジオンの独立戦争は、この本における月世界の独立を参考にしているらしい。ガンダムではジオンの成り立ちみたいなのがぼんやりとしか語られない。そこを掘り下げることになるのかどうかはともかく、こういうテーマであれば面白く読めるだろうと思った。

そしてもう一つ、その先に見えてくるもの。これも岡田斗司夫が動画で語っていたんだけど、SF読まない人は目の前の技術が便利かどうか、お金になるとかしか見えていないくて、その技術が当たり前になった世界はどのように革新的であるかといった想像力に乏しい、みたいなことを言っている。言うならば技術革新の予測範囲が狭く、それが当たり前になった社会がどう変わっているか全く予想できていないし、そもそも技術屋はそこまで興味さえ持っていない。SF小説にはそういう価値観の一変した世界が書かれており、SF小説を読むことによって本当の意味で未来に対する教養が得られるそうだ。僕はSFをほとんど読まないから、SF目線がどういったものなのか気になった。

岡田斗司夫ゼミ「タブー完全無視の一問一答地獄」~ブロマガから領土問題まで~ - ニコニコ動画

ここの92分あたりでそのような話がされている。ニコニコ動画は有料会員でない限り時間が飛ばせないため、興味があったらダラダラと見るか有料会員になりましょう。僕はダラダラ見た。

月は無慈悲な夜の女王

月は無慈悲な夜の女王

地下室の手記

この本はドストエフスキーの小説で、こういう本があるということは前々から知っており、カナダ人の友人に勧められたりしていたがどんな内容かは知らず、読んでいなかった。なんでこの本を読んでみようかと思ったかというと、これもニコニコ動画の【ゆく年逝ってよし@増上寺】年越しの瞬間まで言いたい事を言う生放送というのをYouTubeで見ていたときに、東浩紀が名前を挙げていたからだった。動画が消されていなければひろゆき・東浩紀・津田大介・夏野剛が2016年を語りつくす!!! などと検索かければ出てくる。これの④とかだいぶ後半のほうでポピュリズムとか社会思想について東浩紀が語っている。

これを見たのは全くの偶然で、東浩紀やゲンロンの名前は知っていたけれど何をしている人なのかは詳しくは知らなかった。東浩紀が話している姿をまともに見たのはこれが初めてだった。じゃあ何でそもそもこの動画を見たかというと、僕は元々ひろゆきのフォロワーでベーシックインカムを実現するにはどうしたらいいか会議などのひろゆき回をときどき見ていたから。

さて、そこでこの「地下室の手記」がどのように取り上げられたか。これはテーマであり尚且つ読んだその先に見えてくるものでもあるんだけど、東浩紀はこの動画でISISについてこのように述べている。

「ISISはそんなに新しくない。僕みたいな思想とか哲学やってる人間からすると、資本主義が世界を覆っていくし、世界が数になっていく、それ自体に超ムカつくみたいなものの起源として凄くクリアなのはドストエフスキーです、実は。ドストエフスキーの地下室の手記という有名な小説があって、あれは正面からその(反資本主義)問題を扱っていて、ほとんど同じことが今起きている。思想ってそういう世界で、19世紀も21世紀もあんまり変わらないんですよ。人間だから。」

ええ!?なにそれ!!と思うじゃないですか、これだけで地下室の手記に俄然興味が湧いた。地下室の手記を読むことで現代のISやテロについても見えてくるものがあるだろうし、読んだ先には現代に照らし合わせて、世界情勢の方向性を掴むヒントみたいなものも見えてくるかもしれない。というわけで全体的に僕が興味あるテーマというのは、「今の世の中はどうなっているのか、なぜこうなったのか」そして「これからどうなっていくのか」、この二つであり、それに関わってくるような本で内容に興味があれば、選ぶ対象になりやすい。

地下室の手記 (光文社古典新訳文庫)

地下室の手記 (光文社古典新訳文庫)

評論家を探す

それだけではなく、そんな本ばかり読んでいるわけでもない。去年一番読んだのは高野秀行だし、そのうちの半分は娯楽本だった。そこにあったテーマは、旅行とか未知なるものとか。去年読んだソマリランドについては元々知っており、興味もあった。しかし実際読むきっかけになったのはクレイジージャーニーだった。他にクレイジージャーニーに端を発して読んだ本はないんだけど、それでもクレイジージャーニーや岡田斗司夫や東浩紀は、僕にとって本を読むきっかけとなった。

本来そういう役割を担っているのが、書評なんだと思う。でも僕自身は書評なんてほぼ読まないから、書評とはどういうものかなんて知らない。ただここで、本や作品に触れるきっかけをあたえるものを評論、もしくは批評と呼ぶならば、そういった評論家、本ならば書評家を選び、抱えておくことが重要になってくる。

評論家を選び、抱えておくことによって、冒頭の話に戻るが、常に幸せへの期待を抱えることができるようになる。

  1. (スタート)人生を幸せに過ごすコツは、常に期待の幸せを抱えておくこと。本であれば、常に読みたい本を抱えておき、本を読むという期待の幸せを持ち続ける状態にしておくこと
  2. そのためには、読みたい本を見つけ続けなければいけない、ハズレは引きたくない、意外と難しい
  3. ある日読んだ書評はテーマにも方向性にも興味があり、その本も面白かった
  4. この書評家が勧める本なら、読みたい
  5. 書評家はどんどん本を勧めるから、常に読みたい本がある
  6. 常に期待の幸せを抱えることができる
  7. 人生が幸せ(ゴール)

良い評論家になるには

評論家と言ってしまえば大げさだが、どのような書評ブロガーがフォローされやすいかというと、スタンスを変えない人だ。生きていれば主義主張が変わることはあるんだけど、コロコロ変わるようであればそれは主義主張とも言えない。自分の主義主張であったり、考え方やその根幹にある思想のようなものを確立させることが肝心になる。何を面白いと思うか、どういう事柄に興味を抱くか、その態度を明確に示し、本や作品に対して思ってもいないこと、つまり嘘の感想を書かないことだろう。つまみ食いした本を何でもかんでも評価して紹介している書評ブログが全然面白くないのは、そういった評論家自身の思想が見えてこないか、嘘を書いているかのどちらかだ。

だから評論家を選ぶときも、主義主張に共感できる評論家を彼らの得意分野ごとに選んだほうが、自分に合った作品に当たる確率が高い。東浩紀は書評家じゃないけれど、他にもエマニュエル・トッドや「永遠平和のために」などを紹介していて読んでみたいと思った。岡田斗司夫であれば他に遺伝の本だったり戦国時代の本を紹介していた。自分が感想を書くときも、自分自身の立ち位置から自分に持ち得る意見を全面に書いたほうが、それがたとえメジャーな分野でなくともフォローはされやすくなる。

フォローされやすいかどうかはともかく、自分が良いと思ったものは語ったり共有すればいいと思う。それ自体も楽しいし、語ったり共有することで自分自身の意見もより確立されていくだろうから、得たものは自分の中だけに留めておかず、どんどん表へ出してしまえばいい。そういう話は前に書いた。