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2017年時点の電子書籍事情と未来予測

2015年の秋頃、アメリカで電子書籍が失速し、紙のメディアに戻る流れがあるというニュースを見て、ホッと胸をなでおろした旧体制の保守派にいる方々は多かっただろう。2012年に紙媒体を廃止し、電子版のみに移行していたNewsweek誌は、わずか1年で紙媒体を復活させた。日本だと2015年に週刊アスキーが電子版へ移行したが、たった半年で紙媒体が復活している。

そうかと思えば2016年にはイギリスのインデペンデント紙が紙媒体を廃止し、電子版へと移行している。ニューヨーク・タイムズは電子版の購読者数を順調に増やしながらも、売上の大半は紙媒体の広告費が占めており、電子版の存在意義は薄い。

いずれも不況の煽りを受けているのか、産業構造の移り変わりに対応しきれていないのか、紙媒体を復活するにせよ廃止するにせよ全体的な業績は下降気味であり、儲かっていない中での試行錯誤であることが伺える。

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出版は衰退するのか

出版、および電子書籍の行く末はどうなるのだろう?これまでの収益構造を続けていく限り、紙媒体であれ電子版であれ縮小していくような雰囲気が感じられる。日本でも少し前(1月中旬頃)にネット上で、電子書籍と出版社、街の書店にまつわる話が盛り上がっていた。

このあたりは先に紹介した新聞や雑誌の議論から外れるんだけど、いわゆる紙の本、一般書籍において、現状の業界体制と電子版との間にあるせめぎあいが見て取れる。新聞・雑誌同様、こちらでも紙媒体中心か電子版に振り切るか、いずれにせよ今までにない収益構造を見出さない限りは、衰退していくように感じられる。

出版および電子書籍の現状と未来

これからどういう構造にしていけばいいのか、電子書籍がこれからどうなるか予想をしている人たちの意見がある。

アメリカだと二次創作(同人)もAmazonに取り込まれているようだ。製作者が個人であることを考えると、Amazonに乗っかり全国ネットで販売できるのはいいことしかないように思える。

未来においては紙と電子媒体の区分にあまり意味をなさなくなるとか。読み捨てられるもの、残り続けるものといった内容だけで区分されるという話。

1年後か2年後かわからないけれど、未来のことを考えると「紙の本はコレクター商品になる」という意見。つまり日常生活において一般に消費されるだけの書籍は、全て電子媒体に移行する。そして「紙の本」はアンティーク、レアアイテムのような扱いになる。同時に書店もアンティークショップ、コレクターズショップにならないと生きていけないという話だった。

具体的な未来予測

最後の岡田斗司夫の話は衰退産業あるあるだ。これまでの出版業界の構造が立ち行かなくなれば「紙の本」は流通量が激減し、市場規模も縮小する。そして「紙の本」は一部の人のための嗜好品として単価が跳ね上がり、高級志向で生き残る。今現在でも流通量が少ないレア本は定価の何倍もの値段がついている。今後は新刊から全ての紙の本がそのようになる。

出版業界が立ち行かないという状況は、現行の構造で紙の本が売れなくなるという状況だ。書店はバタバタ潰れており、発行部数も減って「紙の本」を刷って全国にばら撒いて売るモデルが利益を産まなくなるとき、つまりコストのほうが高くなってしまうときに、これまでの構造は滅びる。そして印刷、流通のコストが不要な電子版が主流になり、コストが高い紙の本はコレクターズショップに揃えられ、超少ない流通量で高級品として生き残る。

高価な「ハードカバー」と安価な「ペーパーバック」

海外だと革の表紙やハードカバー、ペーパーバックというような装丁の違いは、購入者のこだわりの違いという話を聞いたことがある。中身は同じ本なのに、あえて値段の高い革の表紙やハードカバーを買うという行為が、コレクターのこだわりを現しているとか。日本だと単行本(ハードカバー)が先に販売され、早く読みたい人はしかたなく単行本を買う。文庫化されていてもあえて単行本を買うなんて人はあまりないんじゃないだろうか。

日本の書籍は流通量が多いから、一度売れた単行本がブックオフに山のように流れる。文庫化されてからだと、中古の単行本のほうが文庫より安いことも多い。海外だと日本みたいに本がたくさん流通していないから、革の表紙やハードカバーは必然的に、希少価値の高いコレクターズアイテムと化している。だから相対的に価値が下がることもなく、ペーパーバック以下で売られることもない。(こういった海外の事情は半分ぐらい憶測だから、飽くまで例えだと考えてほしい。)

高価な「紙の本」と安価な「電子版」

このような「ハードカバー(単行本)」と「ペーパーバック(文庫)」の関係が、今後は「紙の本」と「電子版」に置き換わるんじゃないだろうか。現行では「紙の本」と「電子版」が大体同時に発売されている。未来においても同時に売られることになるが、電子版は通常価格で売られ、中身を読みたいだけの大半の人が買う。一方紙の本は、「紙の本を所有する」という欲を満たしたい人が買う。現行の出版が立ち行かなくなった未来においては、印刷、流通のコストが上がっているため、紙の本は値段が高く流通量も少ない。その分グッズなんかが付くかもしれない。紙の本そのものが初回限定レアアイテムになる。

出版業界が「高級な紙の本」と「安価な電子版」という形態に移り変わっても、紙が中心だった出版バブルの頃ような利益は見込めない。だから予算をかけた企画が難しくなり、出版業界で働く人の数も減る。質の低い本は例え電子版であっても大手出版社から出なくなり、出版業界全体の縮小は免れない。ただし電子版市場は、印刷と流通が必要な「紙の本」市場よりも圧倒的に参入障壁が低い。原価ゼロから作れるため、同人誌などの自費出版よりもハードルが低く、電子版が普及すればするほど個人出版は拡大する。出版業界の市場規模が縮小しても、電子版の個人出版が増える分、全体の流通量は今と案外変わらないかもしれない。インフラと化したAmazonは、Googleのように国際的に一人勝ちする。紙の本はこれからプレミアが付くから捨てずにとっておきましょう。

電子書籍の今

未来の話はこれぐらいにして、電子書籍の過去から現在を振り返ってみよう。僕は2012年にKindleペーパーホワイトを購入してから、丸4年とちょっとの間電子書籍界隈の移り変わりを見てきた。2012年当時は非常に品揃えが悪く、読みたい本は紙しかないから、Kindleを利用するときは、電子化されている本の中から読みたい本を探すという状況だった。しかし今は、読みたい本が結構な割合で電子化されている。

また、当時からKindle Fireが既にあったものの、電子書籍、Kindleと言えばペーパーホワイトが主流だった。ペーパーホワイトではカラーは表示されないし、写真や図形の描画も弱い。画面も小さい。しかし、今電子書籍を読む媒体と言えばタブレットが主流だ。僕はタブレットを持っていないから、ラップトップかスマートフォンのKindleアプリになる。Kindleと言えばペーパーホワイトを指す時代は終わり、アプリの時代になった(アプリは前からあったがかなり改善された)。タブレットやスマートフォンで読む電子書籍は、カラーも写真も図形も鮮明だ。インチ数の大きい画面で見れば細かい字も気にならない。

「サービスが終了したら、買った本のデータも消える」なんて騒がれた時期もあった。いろんな企業が電子書籍を始めた当初はその話も深刻だったが、Amazon一択だった僕にはあまり関係なかった。そもそも本のデータはバックアップが取れる。

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紙の本と電子版を比べる

それでも依然として、電子版のメリット・デメリット、紙の本のメリット・デメリットといった特徴は残る。現在はまだ紙の本も電子版も並行して利用できるから、その特徴を比べながら自分に合う方を選べばいい。

紙の本のメリット(電子版のデメリット)

  • 紙でしか発行されていない本が多い
  • 貸し借りできる
  • 紙の質感、ページがめくりやすい
  • 古本として売れる
  • 所有欲を満たせる(装丁にこだわる、本棚に並べるなど)
  • 買うとき手にとって、中を見て選びやすい
  • 充電不要
  • 衝撃に強い
  • ほしいものリストに入れられる

電子版のメリット(紙の本のデメリット)

  • スペースを取らない(何冊でも持ち歩ける、所有できる)
  • 暗い場所でも読める
  • 文字の大きさを変えられる(一部不可)
  • タブレットとスマートフォンなど別媒体の同期が可能
  • 文字を検索できる
  • コピペで引用できる
  • 在庫切れがない(配信終了はある)
  • ネットさえ繋がっていればいつでもどこでも買える
  • 汚れない
  • 風でめくれない

個人的なメリットが大きい順に載せた。尚、マーカーを引いたりメモ書きしたりは紙の本でも電子版でもどちらも可能。水に弱いのもどちらも同じ。また、電子版のみ販売の本もあるが、紙に比べると少ないためメリットから省いた。紙の本は古本で安価に買えるけれど、電子版はセールをやっていることが多いからおあいこだろう。他にもあったら教えてください。

紙と電子版、どっちが得かというよりは何を重視するかが選ぶときの基準となる。僕は今のところ電子版のメリットのほうが大きいけれど、中古で安ければ紙の本を買うことも多い。ただしここにある電子版のデメリットも、そのうちいくつかは技術発展に伴い解消されるだろう。

「電子書籍の古本」はじまるかも。データの中古売買の特許とりました by アマゾン|ギズモード・ジャパン

この話はどうなったんだろう…。