村上春樹小説の性描写を数えてみた

村上春樹が7年前に書いた長編小説「1Q84」を昨日読み終えた(「騎士団長殺し」はまだ読んでいない)。読んでいてどうしても気になったのが、この本セックス多すぎない?もともと性描写の多い村上春樹小説だが、それにしても1Q84は多い。ところどころでやりまくりだ。挙句の果てには世間を騒がせる細身巨乳の女子高生作家「ふかえり」とまで行為に及んでいる。読んでいて「結局やるんかい!」と思わずツッコんだ読者も多かったことだろう。

コンドームをつけなくていいのだろうか、と天吾は不安になった。(文庫版4巻p51)

この小説ではトータルでいったいどれだけ性行為が行われたのだろう。もしかしてあの「ノルウェイの森」を越えたんじゃないか。気になって数えてみた。こんなバカなことを既に思いついて調べた人もいたと思うが、ネットで検索しても出てこない。「1Q84」「ノルウェイの森」以外はどうだろう。手元にある村上春樹作品を全部引っ張り出して数えてみた。

0回 ご家族でも安心して回し読みできます

「1973年のピンボール」

鼠と女など、エピソードとしてはいくつか語られるが具体的な描写はない。この時期の村上春樹小説はまだ独特の書き方で、物語っぽくない。

「アフターダーク」

ラブホが出てきたりするが、具体的な行為はない。作中で行為そのものが出てこない。話題としてシモの話があるぐらい。

1回 ハリウッド映画でもこのぐらいは

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」:僕 x 図書館の女 未遂として僕 x 図書館の女

性的な描写はもう少しあるけれど、実際行為に及んだのは1回しかない。太った女は未遂にもカウントしなくていいだろう。

2回 中心的なテーマではないけれど

「羊をめぐる冒険」:僕 x 耳のきれいな女

この時期もまだ具体的な描写は少なく、事実だけが淡白に記述されている。誰とでも寝る女のエピソードはカウントしなくていいだろう。

「スプートニクの恋人」:ぼく x 不倫相手の中年女性 ミュウ x フェルディナンド(夢?)未遂としてすみれ x ミュウ

ぼくといつもの不倫彼女。この本では教え子の母親。フェルディナンドはミュウのトラウマとして登場する。

「多崎つくる」:つくる x 沙羅 つくる x 灰田

沙羅は村上春樹小説に珍しく、わりとまともな彼女ポジションだ。白と黒との夢の3Pは現実に行為に及んだ灰田でカウントさせてもらう。灰田はつくるの寝込みを襲う男性。後日なかったことにされてしまうが。

3回以上 おーい、やってるかい?

「ダンス・ダンス・ダンス」

  • 僕 x メイ
  • 僕 x ジューン
  • 僕 x ユミヨシさん

ダンス・ダンス・ダンスは内容を全く覚えていなかったから読み返した。「羊をめぐる冒険」で「耳のきれいな女」として登場したキキが、映画の中で五反田くんとやっているがカウントしなくていいだろう。

「国境の南、太陽の西」

  • ハジメ x イズミの従姉
  • ハジメ x 有紀子
  • ハジメ x 島本さん

未遂としてハジメ x イズミ。この小説では行為が妙に生々しく書かれている。不倫や男女関係が話のメインだからだろう。

「海辺のカフカ」

  • 岡持節子 x 夫(夢)
  • 田村カフカ x 佐伯さん(数回)
  • 星野 x アルバイトの娼婦
  • 田村カフカ x さくら(夢)

「海辺のカフカ」の衝撃は回数よりも、中学生男子と40代のおばさんの擬似母子としての組み合わせだ。それ以外は比較的普通。大島さんもナカタさんも健全。何でもかんでもメタファーに慣れてきてしまっている。

5回以上 もうね、日常茶飯事

「ノルウェイの森」

  • ワタナベ x ゆきずりの女
  • ワタナベ x 直子
  • ワタナベ x ゆきずりの女
  • レイコ x ピアノの生徒
  • ワタナベ x レイコ

未遂としてワタナベ x ミドリ、ワタナベ x 直子があった。細かく描写されていないところではワタナベ x ゆきずり女が他にもある。レイコ x ピアノの生徒は回想シーンだがあまりにも丹念に描かれているためカウントしている。

やっぱり来たか「ノルウェイの森」。多くの読者に衝撃と戸惑いを与え、大学生未満の男子に夢と挫折を与えた「ノルウェイの森」は作中で5回以上というレジェンド級。「村上春樹≒ポルノまがい」という印象を世間に与えたのもこの小説から。特にレイコ x ピアノの生徒の描写はどぎつい。そして最後のワタナベ x レイコには度肝を抜かれた。そして売れた。1000万部以上売れた。村上春樹の小説ではいまだにナンバーワンどころか、日本の歴代ベストセラー小説上位にランクインしている。

「1Q84」

  • 青豆 x 行きずりの中年男性
  • 青豆 x 行きずりの乱交
  • 天吾 x 不倫相手の中年女性(数回)
  • 天吾 x ふかえり
  • 天吾 x 青豆

未遂として青豆 x あゆみ、天吾 x 安達クミがあった。なんと、レジェンド「ノルウェイの森」とタイ記録。やるねえ!この小説は久々に多かった。小説自体やたらと長いこともあり、登場人物も多く、このレースでは必然的に有利にはなる。

一番の驚きは冒頭にも述べたとおり、この小説のアイコン的キャラクターである17歳の新人作家「ふかえり」こと深田絵理子と結局やっちゃった予備校講師30歳の天吾くんだ。しかもふかえりの保護者である戎野先生に「性的関係を持ったか」と聞かれ「やってない」と嘘をついている。

全体的な傾向

さて、僕は村上春樹の小説を全部読んだわけではない。「ねじまき鳥」や「風の歌を聴け」は読んだけれど人にあげてしまったから手元になく、今回はカウントできなかった。他にも特徴的なのがあるかもしれないが、パターンとして圧倒的に多いのは「ノルウェイの森」のレイコさん、「海辺のカフカ」の佐伯さんといった中高年女性。その他にも不倫相手としてよく登場する。おそらく年上の女性に対して思い入れが強いのだろう。ふかえりみたいな10代は異例のことだ。

純文学ではありがち

村上春樹の小説は純文学作品であり、純文学とは芸術である。性交渉は生と死、誕生と再生、その他ありとあらゆる物事のメタファー(暗喩)として頻繁に登場し、いやらしい側面など微塵もない。小説の主人公は射精を遅らせるために数式の計算をしたりするが、決して性欲と快楽のためのポルノではないのだ。「おもしろいから」と言って村上春樹を勧められてもセクハラなどととらえてはいけない。とはいえ村上春樹ファンを自称し「メタファーだから」などと言って性交渉を持ちかけてくる男性がいたら十分注意しましょう。