映画「メッセージ」ネタバレ・感想・評価

岡田斗司夫による映画「メッセージ」のネタバレ配信を見て思った。これジョジョだ。

#180表 岡田斗司夫ゼミ『メッセージ』ネタバレ大解説(4.18) - ニコニコ動画

未来のことを思い出す

ネタバレの内容をかいつまんで書くと、メッセージに出てくる宇宙人は時間軸の概念を持たない存在らしい。そして映画の登場人物であるルイスが宇宙人の言語を翻訳することによって、人類が過去に二足歩行になったような新たな進化が発動する。それはこの宇宙人と同じように未来を知覚できるという能力だった。未来を回想するシーンが映画に何度も登場する。

未来を知覚できる能力とはどういうことか、いわゆる未来予知みたいな超能力とは少し違う。わかりやすく説明すると、人間が過去の記憶を思い出すのと同じように、未来の記憶を思い出せるようになるということ。未来の記憶って、これから蓄積されていくものなんじゃないのかって思うけれど、それは時間軸を過去から現在、そして未来という一方向にとらえた場合のことであって、時間軸における方向の概念を取っ払えば現在から未来も思い出せるということになる。

あらかじめ決まっている運命

つまり、人生というのはあらかじめ決まってる。いわゆる運命みたいなやつだ。岡田斗司夫がわかりやすい例えをしていた。人生が一枚の紙だとしたとき、それをスキャナで読み取ろうとすると、読取機が端から端までだんだん読み取っていくことで内容を把握していく。これが従来の人類の知覚。スキャナで読み取るときには読取機の進む方向、過去から未来という一方向でしか時間をとらえることができない。しかし、紙は初めから全体一枚の紙である。新たな進化を経て時間軸の方向性を超越した人類は、紙を机の上に広げて全体のどこからでも読むことができる。

この考え方が、キリスト教の予定説とも似ていると岡田斗司夫は言っていた。予定説とは、最後の審判の日に善い行いをした人が救われるとか、悪い行いをしたから救われないとかいうのではなく、誰が救われるかどうかは最初から決まっているという考え方だ。なぜなら創造主たる神は、各人の運命という「一枚の紙」の内容をあらかじめ把握しているから。

メイド・イン・ヘブンとの類似性

予定説はともかく、この「人生をあらかじめ知覚できる」「知覚した上で行動する」というのはプッチ神父がメイド・イン・ヘブンでやろうとしていたことだ。ジョジョではメイド・イン・ヘブンによって人類全員がそれぞれの人生を一周することにより、この先の未来に起こることを知り、覚悟することができるようになる。人類全員が自分の運命を覚悟できることが幸福であり、それが「天国へ行く方法」と呼ばれたメイド・イン・ヘブンのスタンド能力だった。結局ジョジョでは「何が起こるかわからない未来」を取り戻すことで運命を決定させないというありがちなラストにもっていったが、映画「メッセージ」は逆で、まさにプッチ神父的な結論にもっていった(それが幸福かどうかは言及していないが)。

未来、すなわち運命があらかじめわかった上で、それが必ずしも幸福な運命でなかったとしても、それに従って行動することに意味がある、映画「メッセージ」はそういう話だったんじゃないか。これを予定説的だと言われたら確かにそう感じるが、映画の原作者は無神論者でどこまで意識して書かれているのかは知らない。原作者の話も含めたネタバレは映画評論家の町山智浩が公演していた。

現実的に進化を考えると

ただまあそのような進化の方向性が現実にありうるのか。岡田斗司夫は同じSF作品としてガンダムの話もしていた。ガンダムで描かれた人類の進化の方向性は「人と人がわかりあえるようになる」というものだった。言語のような不完全なコミュニケーションツールを用いることによる誤解や解釈の違いなんてものを超越し、テレパシーのようなものでお互い思っていることを通じ合えるのが、ガンダムで描かれたニュータイプの能力だった。これは人類が宇宙空間で暮らすようになり、遠い距離を隔てても意思疎通を可能にするために発動した進化として描かれている。現実に他人の意思が自分の頭の中に流れてきたりしたら、それが自分の意思なのか他人の意思なのかどうやって区別するのだろう。声色みたなものがあるのかな。多分今の言語認識とは全く別の知覚によって自我とそれ以外を区別することになるのだろう。

同様に「メッセージ」で語られていたみたいに未来の記憶を思い出せるなんて能力が発動したときには、脳は一体どのように機能しているのだろう。記憶は過去からの蓄積があってこそ思い出せるんじゃないか、未来の記憶なんてものはまだそこに蓄積されていないんじゃないか、時間軸が一方向じゃなくなるってどういうことなんだろう、そのとき脳はどのように働くんだろうと思ってしまう。まさか人間の脳に「一枚の紙」みたいな情報があらかじめインプットされているわけはない。未来を知覚するとは、過去に起こった出来事を思い出すのとは違って、未来の記憶になんらかの形でアクセスできるようになるということだろう。その頃には過去を思い出す方法も今と違っているかもしれない。