今まで見たベトナム戦争関連映画

現代を生きる人にとってソ連とか冷戦は、もうナチス・ドイツ並に歴史上の項目だろう。だからベトナム戦争にも馴染みがないと思う。僕自身もベトナム戦争の時代には生まれていなかったし、そもそも日本人だから戦争の実感はない。

狭義のベトナム戦争は1964年から1973年の間に行われていた。ヒッピームーブメントや公民権運動、アポロ11号の時代と重なる。約10年と長い戦争なんだけど、広義のベトナム戦争はもっと長い。ただしハリウッド映画におけるベトナム戦争は、アメリカが関わった狭義のベトナム戦争をアメリカ人の視点で描いている。これが本当のベトナム戦争かというと、アメリカ人から見れば確かにそうなのだろう。いわゆる内輪ネタが多い。

ベトナム戦争ってのは後にも先にもない、いわゆる「アメリカが負けた戦争」。実際はベトナムの国内内戦であり南ベトナムの負けであってアメリカの負けではないんだけど、いろんな意味で「アメリカが負けた」ことに変わりはない。アメリカはこの戦争に関与することで多くの米兵とお金を失い、被害を拡大するだけで何も勝ち得られなかった。

アメリカの敗戦というのは今から考えるとなかなか信じ難いことで、しかもその相手国は東南アジアの弱小国家、北ベトナム。かつて日本がアメリカに戦争仕掛けたこと以上に驚きだ。そんなベトナム戦争を映画から振り返る。というわけで以下は僕の見たベトナム戦争関連映画と簡単な紹介。★の数は評価ではなく見た回数。

地獄の黙示録(1979)★

原題は「Apocalypse Now」でアポカリプスはヨハネの黙示録を指し、世界の終末が今ここにある、みたいな意味だろうか。戦争映画っぽいのは序盤だけ。特にヘリコプターのシーンが有名。あとは延々とジャングルクルーズが続き、観念映画みたいな展開になる。大昔に一度見ただけであまり覚えていない。長かった記憶はある。余談だけどベトナム南部へ行くと必ずメコン川クルーズというツアーに誘われ、参加者の感想を読めばことごとく「地獄の黙示録のようだった」と書かれている。個人的な意見で言うと、メコン川クルーズは行かなくてよかった。

フルメタル・ジャケット(1987)★★★

「フルメタル・ジャケット」とはライフルの弾丸。上着ではない。ベトナム戦争映画では珍しく、森林ではない市街戦を取り扱った映画。この映画で有名なのはどちらかというと序盤の新兵訓練とハートマン軍曹。この役の人は海兵隊時代に教練指導官を務めていたそうだ。米兵の辛辣な罵詈雑言ジョークをここまで映画に取り入れた例は他にないんじゃないだろうか。他の戦争映画と違い、真面目で辛気臭い空気はほとんどない。5回以上見ている。

ハートマン軍曹のファンページもあった。

アカのどん百姓め! 聖母を敬うと言え!

ハンバーガー・ヒル(1987)★

作戦上攻めても意味がない丘を延々とアタックする間に米兵が死にまくるという映画。ベトナム戦争におけるアメリカの作戦がいかにでたらめだったか、というような話だと思う。「ハンバーガー・ヒル」というタイトルは作戦で兵隊が死にまくったせいでひき肉だらけになった丘という意味。見たのは一度きり。

ディア・ハンター(1978)★★

※ネタバレトレーラーばかりだったので中身の無いやつを

ディア・ハンターはベトナム戦争映画でもかなり好きな方。タイトルは主人公やその友達の趣味である「鹿狩り」の意味で、アメリカの地方において山で鹿狩りをするシーンが序盤に延々と続く。それが戦争に活かされるとかそういう話ではない。この映画で有名になったのはロシアンルーレット。捕虜になって精神やられるシーンがなかなかつらい。3回は見た。

ランボー(1982)★★★

ランボーも直接戦争は取り扱わない。ベトナム帰還兵のトラウマシーンとして捕虜時代の回想が出てくるぐらい。アメリカが「あの戦争はなんだったのか」とひたすら問い続けるような映画。誰が何のために起こして何が残ったのか。ランボーをちゃんと見ていない人からは「ただの戦争大好きマッチョ映画」と誤解されがちだが(続編はその傾向もあって評価が落ちた)実は戦争肯定映画ではなく問い直すのがメイン。原題はFirst Blood(先に仕掛けた)。幼少の頃から5回以上は見ている。

プラトーン(1986)★★

タイトルのプラトーンとは小隊の意味。ジャングル行軍からベトコンの潜むトンネル攻防戦、部隊内での争いなど、これぞベトナム戦というような映画。敵はひたすら見えなくて恐怖だけが襲い掛かってくる。トム・ベレンジャーとウィレム・デフォーが良すぎ。当時話題になったソンミ村虐殺事件なども映像で再現しており、ベトナム戦争で問題になったことと真正面から向き合うといった感じ。3回は見ている。

ソンミ村虐殺事件 - Wikipedia

7月4日に生まれて(1989)★

7日4日とはアメリカの独立記念日。アメリカでは独立戦争、南北戦争、第二次大戦など歴戦において戦場におもむくのがヒーローというか、名誉みたいな市民社会の名残があった。過去の戦争において帰還兵はヒーローだったのに、ベトナム帰還兵はアメリカ社会で散々な扱いを受けるという、過去と対比した作品。戦場での先輩と共に下半身不随になり、ヒッピーのような車椅子の生活を送るシーンは覚えている。立ち直って本を出すとかそんな終わり方だったと思うが、かなり前に一度見たきりだからあまり覚えていない。

フォレスト・ガンプ(1994)★★

戦争映画ではないんだけど、あの時代を扱った作品ということでストーリーにベトナム戦争が大きく関わっている。こちらでも戦場で半身不随になった先輩が出てくる。この映画全体はパロディというか、皮肉が全般的に散りばめられた作品で見ていて笑えなかったり不快に思う人も多いんじゃないだろうか。幼少期に映画館で一度見て、大人になってからもう一度見た。

グッドモーニング・ベトナム(1987)★★

ベトナムにおける米兵向けラジオのパーソナリティが主人公。「グッドモーニング・ベトナム」というのは開口一番のあいさつ。この映画はラジオパーソナリティが主人公ということもあり、舞台は戦場ではなくベトナム南部のサイゴン。そこで市民に紛れた南ベトナム民族解放戦線のゲリラとの関係を描いたり。ベトナム側の視点を入れようと努力しているが、あまり理解が進まずうまくいってない印象。3回は見ていると思う。

見てない映画

1974年アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞受賞『ハーツ&マインズ ベトナム戦争の真実』

これは1974年に作られたんだけど、日本では割りと最近(2010)になって公開されたドキュメンタリー映画。他にもYouTubeのランキング見ていると見ていない映画がたくさんあった。

ベトナム視点の映画ってあるのか?

韓国はしょっちゅう朝鮮戦争の映画を作ったりしているが、ベトナム視点のベトナム戦争映画というのはあまり聞いたことがない。そもそもベトナム人の映画監督はトラン・アン・ユンとか名前ぐらいしか知らない。書籍ではときどきベトナム人の声を拾ったものなどがあるけれど、ベトナム人が書いたものというのは知らない。知らないだけで、探せばあるのだろう。

ベトナム映画『無人の野』

映画:ベトナムの映画

余談:戦争がなぜ起こるのか

戦争について調べていて思うのは、戦争をやる人が野蛮っていうよりは、ああいう状況下におかれると一定の割合で虐殺とかしてしまう人たちがいるっていうこと。それはベトナムに限らず各地において、どの国のナニジンにおいてもあったように思う。そういう統制が必ずしもうまくとれない。だったらやはり戦争を起こさないことが肝心で、そのためには戦争を起こしたい人を起こしたくなくならせるのが大事なんだけど、それよりも戦争したほうがコストが低いと見積もって相手を追い詰めて戦争になるのが今までの流れなんじゃないだろうか。

北朝鮮とか国民全員が豊かになれば多分戦争起こす意味がなくなる。日本も多分国際的に締め出し喰らわなかったら開戦に踏み切らなかっただろうし、ドイツもヴェルサイユ条約がゆるゆるだったらナチスが誕生しなかったんじゃないか。でもそんなことはコストが高すぎて誰もしなかった。ベトナムに関しては独立戦争だから勝手にアメリカが介入しただけ。