読書初心者むけの、異世界へいざなってくれる本3冊

異世界転生の話ではありません。今回は、我々を平凡な日常から、異世界へいざなってくれる本を挙げてみようと思う。この「いざなってくれる」という部分を大事にしており、今回挙げる3冊はどれもこの世界と異世界が地続きになっている本だ。スターウォーズやロード・オブ・ザ・リングのように、今我々が暮らす世界からかけ離れた異世界はいくらでもある。肝心なのは、この世界からいつの間にか、どこからともなく気がつけばそこは異世界と化している点であり、二つの世界が地続きであるからこそ身近に感じ、自分の先にある出来事として認識でき、感情移入しやすくなっている。今回選んだ本は全くそういう意図で書かれた本ではないんだけど、それぞれの違った異世界へ我々をいざなってくれる。

  • 嘘つきアーニャの真っ赤な真実
  • ワセダ三畳青春記
  • ねじまき鳥クロニクル
  • 他にあったら教えてください
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「夫のちんぽが入らない」は全然響かなかった

短くまとめると、

「ありきたりな普通の価値観に染まった人が、普通のことをできなくて思い悩みつつ、そんな自分を徐々に受け入れていく。世間もそんな自分たちみたいな人を受け入れてくれたらいいのに」というようなことが長々と書かれていた。要するに啓発が希望なのだろう。

本としてはおもしろかったが、内容としては正直なところ全然乗っかれなかった。僕の感想は悪意に満ちているとさえ言える。だからこの本を好意的に読んだ人は以下の感想を読まないほうがいい。

  • 世界狭っ!
  • たくさんの疑問が湧き起こる
  • 最終的に、幸福自慢ですよね?
  • 他人には救いのない話
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再読「キャッチャー・イン・ザ・ライ」感想・書評

「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」を読み終えて、再び村上訳「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を読みたくなった。普通は順序が逆で、キャッチャーに含まれるはずだった解説を一冊の本にしたのがサリンジャー戦記だから、これから読む人は先にキャッチャーを読んだほうがいい。村上訳キャッチャーは大学生の頃に一度読んでいた。当時の印象としては「ぬるい」というものだった。野崎訳ライ麦畑のトゲトゲしい文体が好きだったから、それに比べて村上訳キャッチャーは印象が薄かった。

  • 現代語のキャッチャー
  • ホールデンの地獄めぐり
  • インチキとはなんなのか
    • インチキなもの
    • そうでないもの
  • 果たせなかった折り合い
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グレッグ・イーガン著「ディアスポラ」が難しすぎた

グレッグ・イーガン、SF界では他の追随を許さない人気のような噂を耳にして、昨年のハヤカワセール時に購入した。古いSFばかり読んでいて現代のSF小説を全く読んでいなかったから、SF小説は時代を経てどのような変容を遂げているのか気になり「ディアスポラ」に手を出した。

  • ハードSF
  • どういう話か
  • 現代SFとしての形
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「充たされざる者」感想・書評

カズオ・イシグロの「充たされざる者」を読み終えた。やっと読み終えた。1000ページ近くある本で、中盤あたりを読んでいるときは正直なところ苦痛でしょうがなかった。一体何の話をしているのだろう、いつになったら話が進むのだろう、そんな疑問を抱えたまま物語はあちこちへふらふらと漂っていた。先に読んでいた人はこの小説の感想を「悪夢のようだった」と語った。その気持ちはわかる。少なくとも単純な小手先のエンタメではない。その長さも相まって、多くの人が途中で投げだしたことだろう。しかし、中盤を越えたあたりからなんとなく本全体の様相が掴め「そうか、これはカフカの城だ」と思うと妙におもしろく感じてきて途端に読むペースが上がった。最初から中盤までの半分ほどの時間で、中盤から最後までは読み終えることができた。

  • 掴みどころのない物語
  • 他の作品は忘れよう
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「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」感想・書評

サリンジャーは10代の頃に初めて読んだんだ。どっぷりハマってしまってね、何度も読み返したし、何人もの友人に「これ読む?」とかなんとかさり気なく渡して、今に至るまでに結局同じ本を5冊ぐらい買うことになったんだ。実は今手元にあるのは「ナイン・ストーリーズ」と「大工よ、〜」だけで肝心の「ライ麦畑」や「フラニーとゾーイー」はないんだ。全部人にあげてしまってね。それはもちろん、僕がそれらを好きじゃないからではなく、むしろ好きだからこそ読んでほしいと思って人にあげたんだ。「読んだよ」とは誰からも返ってこなかったけどね。

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今年読んだ本(2017)

去年読んだ本は、年間を通して35冊だった。6月まで日本にいなかったから、最初の半年はほとんど読めなかった。今年はと言うと、年間を通して45冊。ペースで考えれば去年より明らかに少なく、月3〜4冊、週1冊読めるか読めないかのペース。読んだ感想も去年ほど書いていない。

本当はもっと減らしたい。脳の容量が少ないから次々読んでも消化しきれず、詰め込んだ分だけ追い出されてしまう。年間30冊も読めば十分だろう。その分厳選して読めたらいいなーと思う。数撃って当てるみたいな非効率で体力を使うやり方は苦手だ。あれこれ考えながら真面目に読む本と、何も考えず息抜きに読む本を分けられたら一番いい。

  • 特に印象的だった本
    • 日の名残り
    • ハイファに戻って/太陽の男たち
  • 今年読んだ本
    • 小説
    • 新書
    • 旅行
    • 経済
    • その他
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「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」感想・書評

2013年に出た本で、時代を体現していた。タイトルにある「ゴッホとピカソ」の話はほとんど出てこない。この本は、コンサルや事業の立ち上げを経験してきた若い著者の、お金とそれ以降にまつわる未来志向の本だ。こういう未来志向が2013年当時流行っていたことを思い出させる。そして2017年も終わりに差し掛かると、やや現実味が帯びてきている(例えばビットコインとか)。

世の中は少しずつ変わっている。体感している変化を頭で理解したいときに、この本が向いているかもしれない。いろいろなテーマについて書かれているため、個別のトピックを取り上げるとやや普遍性に欠けるが、その先は自分で調べればいい。具体例の指標となるような項目は提示してくれている。世の中はこの本に書かれているようになるかもしれないし、ならないかもしれない、一部既になっているかもしれない。

  • 1時間でわかる、お金の移り変わり
  • 使命がお金につながる
  • お金主体から信用主体へ
  • SNSは個人のIR
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あなたの幸せは10点満点で何点ですか?「世界しあわせ紀行」感想・書評

何故こんなにも不幸なのだろう。お金がないから?将来が不安だから?恋人がいないから?家族がいないから?そもそも自分は不幸なのだろうか。不幸とは、幸福とは一体なんだろう。何が基準で、誰が決めるのだろう。

そんな幸福と不幸にまつわる疑問を解き明かすため、アメリカのラジオ局に勤めるジャーナリスト、エリック・ワイナーは世界中を駆け巡った。

  • 幸福を科学的に研究するオランダ
  • 幸福水準が高いと言われるスイス
  • 幸福を国是として掲げるブータン
  • 天然ガスの恩恵にあずかり巨万の富をほしいままにするカタール
  • 北欧の福祉国家アイスランド
  • ヨーロッパの不幸代表モルドバ
  • 微笑みに種類のあるタイ
  • 生まれつき幸福への疑いを持っているイギリス
  • 矛盾を抱え予測不能なインド

ざっと9ヶ国、そして最後にアメリカ国内で別の州へ移住する人を取材している。それぞれの国に住む人たちを訪ね、「あなたの幸福度は10点満点で何点ですか?」と聞きまわる。理由を訊ね、背景を調査し、あらゆる角度から「幸せとは一体なんなのか」の解答を得ようとしたのがこの「世界しあわせ紀行」だ。

この本は「幸福について真剣に学ぶ旅」がテーマになっているが、40代のアメリカ人ジャーナリスト的視点で、ユーモアと皮肉が満載になっている。ありとあらゆる学術論文のデータ、哲学者の言葉が引用され、ふざけながらも信憑性があるように書かれており、読んでいて飽きない。

  • 住んでみたい国
    • ブータン人の死生観
    • アイスランド人の職業観
  • 訪れてみたい国
    • スイスの大自然
    • モルドバの不幸
  • 結局人を幸福にするのは?
  • あなたの幸福は何点ですか?
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本を読まないといけない

「世界しあわせ紀行」を読んでいる。なんとも自分に似つかわしくない本だ。幸せのことなんて考えたことないし、興味もない。なぜこれを読もうと思ったかと言えば、ノンフィクション作家である高野秀行が推薦していたからだ。本の説明書きにも「高野秀行氏推薦!」とちゃっかり書かれている。その推薦文をどこかで見たはずなんだけど、Google検索しても出てこない。確か高野秀行氏のブログで見たような覚えがあるが、ブログ内検索は機能していない。高野秀行氏は小学館ノンフィクション大賞を受賞してからかクレイジージャーニーに出てからか、そこら中引っ張りだこでブログを更新されなくなった。楽しみにしていたファンからすればなんとも嘆かわしいことだが、代わりにTwitterへ頻繁に投稿されている。本はアジア納豆以降は出版されておらず待ち遠しい。

辺境・探検・ノンフィクション MBEMBE ムベンベ

高野秀行(@daruma1021)さん | Twitter

今日はほぼ一日中「世界しあわせ紀行」を読んでいた。休みだったのだ。毎日休みみたいなもんだが、部屋から一歩も出ず着替えもせずに本を読んでいた割には読み終えられなかった。長い本だ。400ページほどあって300は読み終えた。まだまだ長い。一日中と言ってもずっと読んでいたわけではなく飯を食ったりスマートフォンをいじったりしていた。引きこもりですね。今日は本当は(?)外へ出て写真を撮りに行く予定だったのに、寒くてやめてしまった。今日が特別寒いというわけではないのにもかかわらず。いつもは雨が降っていると外出しない口実ができて「雨だししょうがない」と納得できるのだが、今日はそういうわけにもいかない。しかし気づけばもうこんな時間(午前1時)だった。「世界しあわせ紀行」は思っていたほど幸せではなく、おもしろいです。感想書くかどうかは未定。

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なぜそんな一日中本を読んでいたかって、何も本好きだったり引きニートだったりするからじゃない。昨日ハヤカワSFセールで買い漁ってしまってせっかく消化しつつあった積ん読が倍に増えたからだ。「世界しあわせ紀行」は図書館で借りた本だ。返却期限が迫っている。そして新たに予約していた本が回ってきてしまった。「肩をすくめるアトラス」という本で、めちゃくちゃ長い。これはもう読むのあきらめようと思っている。他にも図書館で予約中の本がたくさんある。買った本も含めてとてもじゃないが追いつかない。とにかく期限のある図書館の本ぐらいは読み終えてしまいたい。

借りたものはすぐ返さないと気が済まない症候群なのだ。というのは、忘れっぽくて借りていることすら忘れてしまうからである。若い頃は借りっぱなしのDVD延滞料金何万円とかの夢を見ていた。実際には数百円で済んだが、悪夢のトラウマと化してしまった。今となってはDVDレンタルという業態そのものが廃れてしまったが、図書館に手を出してしまったせいで「すぐ返さないと気が済まない症候群」再発である。物を借りるのに向いていない。

もう一冊借りている本があった。カズオ・イシグロ著の「充たされざる者」だ。これは人に借りているから具体的な期限はないものの、早く読まないといけない。人に借りた本は2週間で読んで感想を言うぐらいのことはしないといけないと勝手に思っている。なのにもう手もつけないで一週間が過ぎた。「充たされざる者」はかなり分厚いため、あと一週間で読み切れそうもない。それ以外にもマンガを10冊ぐらい人から借りていて読まないといけない。どれから手を付ければいいやら、あーなんでこういろんなタイミングが重なるかなー。

ハヤカワSFのKindle版がセールだって

ここ見て知った。

以前から読みたいと思っていた本がたくさんあったのに、つい買うタイミングを逃していたハヤカワSF。この機会しかないと思って買い漁った。SF初心者の僕が買ったのは以下。

  • グレッグ・イーガン
  • 1984
  • カート・ヴォネガット
  • 泰平ヨン
  • 人類補完機構
  • セール対象は他にも多数
  • 既に読んだやつ
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「ルポ 貧困大国アメリカ」はえげつなかった

歴史上の昔と比べたら、世の中は少しずつ確実に良くなっていると言われる。飢餓や疫病は減り、奴隷制はなくなり、パンとサーカスに例えられるコロシアムの殺人ショーはルールに基づいたスポーツに取って代わり、ギロチンのような公開処刑も先進国ではなくなり、人権の概念が生まれ、社会福祉の概念が生まれ、あたかも世の中は良くなっているように見える。本当だろうか?『暴力の人類史』という本があり、僕は読んでいないけれどスゴ本の人は「本書の嘘を暴く」とレビューしている。

おめでたいアメリカ人『暴力の人類史』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

  • 奴隷大国アメリカ
  • 時給200円の不法移民
  • アルバイト生活の大卒
  • ビジネスと化した医療
  • ビジネスと化したアメリカ軍
  • 民営化が産んだ奴隷制
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「バフェットの財務諸表を読む力」の要点をまとめた

株式投資関連本ということで「バフェットの銘柄選択術」に引き続き、「バフェットの財務諸表を読む力」を読んだ。ファンダメンタル投資を行うにあたり、財務諸表が読めないと話にならない。しかしこの財務諸表の読み方を取り扱った本というのが、意外と少ない。経理目線や経営者目線で数字の読み方を書き表した「決算書の読み方」というような本は山ほどあるが、株式の購入を検討する人向けの財務諸表の見方を解説した本は、全然見かけなかった。たまたまブックオフに置いてなかっただけかもしれない。

「バフェットの財務諸表を読む力」を書いたのは前回同様メアリー・バフェットとデビッド・クラーク、共にバフェットの元で学んだ人たち。「銘柄選択術」が2002年に出た本で、「財務諸表を読む力」は2009年だから、リーマンショックを迎えやや新しい内容になっている。それでもバフェット流の根本的なところは変わらない。「銘柄選択術」ではバフェットが選択する市場独占型企業とは何か、その判断基準や見分け方などを解説していた。

今回の「財務諸表を読む力」でも同じく、永続的競争優位性を持つ企業を、財務諸表を手がかりに見つけ出す方法を述べている。財務諸表の各項目を拾い、具体的にどのような数字が該当していればバフェット銘柄として買い対象に挙げられるのか。58項目にわたり、理由なども含め一つ一つ細かく解説されている。例としていくつかの購入基準をここにまとめたい。理由や解説を読みたい人は、本書を購入してください。

  • 損益計算書
    • 粗利率 p53
    • 販売費及び一般管理費(SGA)率 p56
    • 減価償却費率 p66
    • 支払利息 p68
    • 純利益 p81
    • EPS p83
  • 貸借対照表
    • 現金及び短期投資 p99
    • 棚卸資産 p101
    • 土地及び生産設備 p110
    • 長期借入金満期 p134
    • 長期借入金 p138
    • 自己株式調整済み負債比率 p146
    • 内部留保 p156
  • キャッシュフロー計算書
    • 資本的支出 p176
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カズオ・イシグロのNHK白熱教室

これについては長く書こうかと思ったけれど、時間が経ったので簡潔に。ノーベル文学賞から10日が過ぎ、この話題も既に落ち着いていることでしょう。受賞コメントが日本でも報道されていたが、実にリップサービスの上手い人だと感じた。言葉を選び、当たり障りがなく、誰も傷つけない。聞いた人は誰もがいい気分になる。これは外国人特有の作法で、人付き合いの下手な日本人がよく真に受ける。

  • インタビュー記事
  • 小説の醍醐味
  • 小説の書き方
  • 小説を書く理由
  • カズオ・イシグロ作品の感想
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