短歌

ひとことの中に隠れる体温がこのひとときを記憶に残す

 

雨音が生き物の足つかまえて風が冷たく穏やかになる

 

呼ぶ声が日付を埋めて目を覚ます。そういう日々が始まりました

 

足元も見上げた空も真っ暗で浮かんだ身体風に流れる

 

水分を含みこすれて血がにじむ。黒く汚れた道の足あと

 

指先の存在自体が曖昧で気づく前からもうここにいた

 

踏み出せず踏み留まれず立ち尽くす。体温ばかり失ってゆく。

 

誰でもない己に一粒認識を与えることで拓ければいい

 

目前のあなたを想うあなたたち、歯車ひとつ与えられたら