大阪恋物語

大阪人と恋愛をしたことはない。たまたまこの大阪恋物語を聞いて、映像を見ていたら、大阪での日々が懐かしくなった。僕にとって大阪での日々というのは、会社へ入社した当初からの生活しかない。もう7年も前のことになる。

僕は京都生まれ京都育ちだったものの、隣の大阪に行ったことはあっても土地勘はなく、ほとんど何も知らないビギナーだった。会社員として大阪に通うようになり、毎日大阪の街を歩き、大阪の店で食事をして、大阪で出会った人たちと過ごしていた。当時はなんとも思っていなかったが、今思い出すととても懐かしい。

初めて大阪で暮らし始めたのは、入社して半年ほど経った秋だった。僕は結局2年しか大阪には住んでおらず、大阪で特別何か大きな出来事があったというわけではない。天満橋に住んでいた頃は、夜に大阪城公園の周りを走ったり、自転車で京橋まで行ったり、天六まで自転車で行ったり、道頓堀まで行ったりしていた。特にあてもなくブラブラと夜中に街を歩くのが好きだった。遅い時間だと4時とかだったけれど、大阪の街には人がいて、店が開いていて、人と話すことさえなかったけれどそうやって街の中に溶け込んでいたかったからウロウロしていた。天神橋のあたりもよく歩いていた。今思えばただの変態だ。変態行為はしていない。

大阪で一人暮らししていた時はいつも家の近くの定食屋で深夜に一人で飯を食っていた。ボトルでお酒を買って一人で家で飲んだり、同期の人間と飲んだりしていた。同期の人間はよく電車がなくなって泊まりにきていた。夜遅くまで仕事の話などをしていた。若かったなあ。今と同じで夢も希望のなかったけれど、若さだけはあった。毎日が楽しかったわけでもないけれど、新鮮さがあった。今でもずっと新鮮さを求め続けているのかもしれない。僕は大阪人じゃないし、大阪のこともそんなに詳しくないけれど、大阪の街と大阪人はシビアで、スリルがあって、暖かくて好きだった。