電子書籍は普及していないと言うが

電子書籍ってこんなに力いれてるのに何で流行らないの?

街中で電子書籍を読んでいるのは外国人ばかりだ。僕が初めてKindleを見たのは、3年ぐらい前だった。電車で席に座っているアジア人が使っていた。当時既にKindleの存在は知っていたものの、現物を見たのはそれが初めてだった。日本ではまだ売っていなかった。

僕は今トロントに住んでいるが、地下鉄に乗れば毎回1人は電子書籍を読んでいる。スマートフォンでもタブレットでもない、Kindleやkoboといった明らかに電子書籍の端末を持っている人は必ず見かける。数は数えていないけれど、日本よりかなり普及率が高い。
それでも、身の回りに持っているという人はあまりいない。外国人に聞いても日本人と同様に「持っていない」「紙の本の方が好き」という意見は意外なほど多い。

僕はKindleペーパーホワイトを使い始めて1年以上が過ぎた。Kindleで買った本は、はっきり言って少ない。10冊ぐらいだと思う(無料のを入れると20冊ぐらい)。僕はもともと多読積読する方ではないけれど、その1年以上の間に紙の本は50冊ぐらい買って読んだ。Kindleの方が圧倒的に少ない。

かと言ってそれがKindleの評価を貶める根拠にはならない。今後もKindleを使い続けていくことに変わりはないと断言できる。そのうち紙の本を上回るかもしれない。

なぜ紙の本を買ったのか

ここでは「紙の方が好きだから」とかそんな主観的なただの好みの部分は除く。この1年以上の間、Kindleを手にしておきながらも、なぜ紙の本を50冊ほど買ったのか。なぜKindleはたった10冊なのか。

安かったから

一番大きな理由は、紙の方が安かったから。古本であれば100円で買える本をわざわざ倍の値段を払ってKindleで買ったりはしない。紙の本の50冊のうち、ほとんどがKindleで買うよりも安かった。中身が同じだから安い方を買った。

売ってなかった

紙の本が多い二番目の理由は、Kindle化されていなかったということがある。持ち運びの利便性などを考えると、ページ数の多い本など本当はKindleで読みたい。1巻の終わりの方を読んでいて2巻にさしかかる時に2冊持ち歩くとか邪魔すぎる。そうでなくても本はかさばり、さらに重いからなるべく持ち運びたくない。
しかしながら、売っていない。紙では存在してもKindleに無い本は数限りなくある。Kindleで買うという選択肢が無い場合、紙で買わざるをえなかった。

読みにくい

Kindleにも紙の本にも得意不得意がある。Kindleに関しては写真や図形などの描写に弱い。Kindleのサイズはペーパーバックというのだろうか、新書ぐらいのサイズしかない。そこに絵や写真、図形、レイアウトなどを用いた描写をするのは無理がある。Kindleは飽くまで文庫、新書といった文字または記号で表すことのできる文書の代用しかできない。
僕はよく写真の本を買う。一度Kindleでも買ったが、正直見れたもんじゃなかった。描画の問題もあるが、見開きというレイアウトがないため、ある本で1ページまるまる写真、その次のページにまるまる写真の内容が書いてあり、写真を見るためにページを戻ってまた文書に戻っての繰り返しで、写真を見ながら文章を読むということができなかった。
ちなみにKindleでマンガは買ったことないけれど結構良いと聞く。マンガには合っているのだろう。最近では週刊アスキーがKindleで売れているみたいだけれど、雑誌なんかはずっと不向きだと思ってた。そのあたりは解決したんだろうか?買って読んだことがないからなんとも言えない。

週刊アスキー 2014年 4/1-8合併号 [雑誌]

週刊アスキー 2014年 4/1-8合併号 [雑誌]

 

それでも電子書籍って価値ある?

さんざん電子書籍の問題点を書き連ねましたが、本当にKindleを推す気はあるんだろうか。あります。Kindleはめちゃくちゃ便利で実用的です。
僕は何も最先端技術に飛びつきたかったからKindleを買ったわけではなく、そもそもKindle自体は結構前(2007年)からあって、かなり実用的になってきた感が強かったので購入に至った。それが1年前。

Kindleの利便性についておさらい

僕がKindleを使いだした当時、その利便性についてまとめた。

年末からKindleを使い始めて

当時から意見は変わっていない。簡単におさらいすると、Kindleは小さくて軽くて何冊も持ち運べて、字の大きさを変えられるから字は読みやすくて、ライトも内蔵しているから電気を消していても読めて、つり革につかまりながら片手でページがめくれて、欲しい本があれば一瞬で買える。データなので在庫切れがありえない。

この利便性が揺らぐことはないと思う。あとは不得意な部分がどう改善されていくか。

データが消える問題

ここ最近この話題について騒がれていた。会社が潰れたりサービスが終わったら、今まで買った本は全部パーになってしまうじゃないか、そんなものに金は払えるかという問題。
僕が楽天koboやその他もろもろではなくKindleを選んだ理由の一つもそこにある。日本の出版社などが独自規格で電子書籍を開発したり、楽天がカナダのkoboを買収したりして電子書籍の媒体というのは実はたくさんあるようだが、あのAmazonがやっているKindleを差し置いて、他の電子書籍が台頭するなんてことは考えにくい。そもそもAmazonがKindleで電子書籍ビジネスから撤退した時は、よほど画期的な案が生まれていない限り、他のどの会社も生き残っていないだろう。

ではその、電子書籍という媒体そのものが終わった時はどうするか。確かにAmazonのクラウドに保存されたデータは消えるだろう。しかし、端末にあるデータは残る。本当に大切なデータは端末に残しておけばいいじゃないか。Amazonがある日突然サービスが終了するということもあるかもしれないが、どちらかというと考えにくい。

では、端末に入りきらなかったデータは金を捨てることになるのか。僕はその点について、あまり深く考えるほどのことじゃないと思う。
まず第一に、その本は一度読んでいるだろう?その時点で払ったお金の効用は得ているのではないか。課金ゲームではないけれど、お金を払って実体の無いものを買うのはもう珍しくない。そんなこと、今更何を気にする?
第二に、あなたは一体どれほどの本を読み返すのだろうか。本当に大切な本ならば、端末に入れるか紙の本も併せて買えばよいではないか。実際に何度も読み返す本というのはそんな大量に存在するのか?ちなみに僕は本をあげたりなくしたりするから、同じ本を何度も買うことがある。人間失格とかライ麦畑でつかまえては4冊ぐらい買った。 

人間失格

人間失格

 

第三に、紙の本なら安全なのか?サービスが終了して一斉になくなる、ということは確かに紙の本では起こりえない。同様に、電子書籍ではページが破れたり、折れ曲がったり紙が傷んだり読めなくなったりすることもない。Kindleそのものが壊れることはあるにしても、紙とでは強度が違う。1ページでも読めなくなった本にどれほどの価値が有るだろうか。引越の際に置く場所がなくて泣く泣くブックオフにタダ同然で叩き売りするようなこともない。まあこのへんはちょっと強引なこじつけかもしれない。

読みにくくなくなる日

今現在においても既に、雑誌や写真を取り扱った本がKindleで売っている。先ほど書いたとおり、これらはあまり読みやすいとは言えない。これらは今後、住み分けが進むか時間が解決するかのどちらかだろう。
描画が解決するのは時間の問題だと思う。レイアウトはKindle用に工夫されていくようになるだろう。Kindle用電子書籍のデータ元となるepubなんかは、htmlとcssで書かれている。webの進化の早さを考えたら遠い先の話でもないのではないだろうか。それまでは文庫や新書などのKindleで読みやすい本を読むだけで、それ以外は紙で読めばいい。

セール

最近Kindleでのセールが話題になっていた。

kindle角川70%offセールで気になった本

koboがやるからKindleも便乗しているだけと言われているが、このセールには出版社側としてもメリットが有る。電子書籍は在庫リスクがゼロで、劣化せず、運搬の必要もない。一度出版するための費用を費やせば、あとは全て利益となる(Amazonに並べる費用はあるだろうけど)。大抵の本というのは出版された直後か、話題に上がった直後に売れ、それ以降はかなり地道になるのではないだろうか。そこで値下げをしたりセールを行う。紙の書籍であれば二版三版でも印刷、装丁、運搬、売り場コストがかかっているため、制作原価というものが存在し、大規模なセールなんて行えない。電子書籍はどうだろうか?ただのデータだ。セールで大幅に価格が下がろうが、全て利益となる。紙の本なんか、一度中古で出回ってしまった分は出版社にも作家の利益にもならない。

このへん僕は本屋でも出版社でもないので想像でしかないけれど、たびたびセールがあるから最近では中古で買うよりも安く買えるケースが出てきた。電子書籍のセールは是非やめないでいただきたい。

角川でまたセールやってるらしい~3/27

品揃え問題の解消

デバイスやフォーマットの得意不得意と重なる部分もあるけれど、これも時間が解決してくれると信じている。Amazonが本社を置くアメリカの事情なんかがわかれば先が見えそうなもんだけど、旅行のガイドブックであるLonlyPlanetはKindle版があるようだ。ガイドブックが電子書籍になればめちゃくちゃ便利だと思う。売れてるのかどうかは知らない。Kinfolkという雑誌は電子版があった。教科書は電子化が進んでいないのだろうか、あまりなかった。

品揃えについては今のところどうしようもない。売っていない本は紙で買うしかない。Kindle化希望ボタンを押しまくっていればAmazonが出版社に圧力をかけてくれると信じて、売っているものだけを買うことにしよう。

電子書籍の未来はそう暗澹たるものではない。

Kindle Paperwhite(ニューモデル)

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Letter from Kyoto

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