これからの旅行の話をしよう

旅行についての話題は事欠かない。日本を訪れる外国人旅行者のニュースや番組をテレビで見ることは多いと思うが、昨年度2015年の訪日観光客数は過去最高記録となった。一方日本人の海外旅行者数はというと、ここ10年それほど変化がない。旅行者は増えていないが、ブログやTwitterなどを見ていると海外在住の日本人を数多く見かける。「若者の日本離れ」なんてことも言われ、海外で暮らす日本人は増えた気がする。統計を見てみると、案の定、海外在留邦人の数は右肩上がりになっている。2015年度の数字は131万7078人、昭和43年以降最多、この5年間で11%増えている。企業の海外事業拡張に伴う出張や転勤が増えた影響も大きいだろう。

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訪日外国人客、次なる目標は3000万人:日経ビジネスオンライン

出入国者数 | 統計情報 | 統計情報・白書 | 観光庁

なぜ彼らは日本を「捨てた」のか海外に移住した日本の若者たち | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

海外在留邦人数調査統計 統計表一覧 | 外務省

 

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外を歩けば外国人ばかり

最近の日本と、それを取り巻く海外の環境はだいたいこんな感じだ。日本人の旅行者こそ増えてないものの、日本と海外の垣根はこれまでよりも低くなり、外国人が日本に来やすくなり、日本人も海外へ出やすくなったんじゃないだろうか。海外在留邦人は増えており、日本から海外へ旅行する人も今後増えるかもしれない。そこで、これまでの旅行を振り返りながら、これからの旅行を少し考えてみたいと思った。

これまでの旅行

これまでの旅行は、多くの人にとってパッケージツアーが中心だった。今ちょうどアジアの観光客が、各地で団体ツアーの列を作っているように、日本人の旅行者も大昔はああいうのがメインだった。ここ15年ぐらい日本人旅行者の間では、ツアー旅行と言ってもガイド無し、身内だけの小規模な格安ツアーが流行っていたように思う。それ以外にバックパッカー、世界一周を行う人もここ数年少し盛り返したように感じる。90年代にそういうブームがあったものの、不況にともなって減少していた。それからネットの発達により、航空券や宿の手配が簡単になって個人旅行の敷居が下がり、バックパッカーや世界一周旅行者は再び増えているように感じる。ネットを見渡せばバックパッカー、世界一周のブログが山のようにある。

旅行先としては近年、世界遺産、絶景ブームが巻き起こった。かつては旅行者憧れの地だったウユニ塩湖なんかも、5年ほど前に空港ができ、アクセスが整備されたおかげで一般旅行者が押し寄せるようになった。そして今や誰もが訪れる普通の観光地と化している。昨年度訪れたキューバやドゥブロヴニクなんかは日本人こそ少なかったものの、他の国からはいわゆる一般旅行者(バックパッカーなどではない旅行者)が多数押し寄せていた。

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ゲーム・オブ・スローンズ効果に沸き立つドゥブロヴニク

2010年にヨルダンのペトラ遺跡を訪れ、今年の春にも再び寄ることがあった。6年前と一番違ったのは、中国人観光客の多さだった。団体もペア旅行もとにかく中国人が多い。ローマやパリといった有名観光地はそれ以上に多いらしく、これだけアジア人観光客が多いと全然ヨーロッパに来た感覚がないというような話も聞いた。有名な観光地は既にそういった状況ができあがっている。世界遺産や絶景を訪れても、ブームに乗っかった人々の間ではもはや特別でも珍しくもなく、周囲を見渡せばアジア人や各国からの観光客だらけ。観光客の雰囲気にまぎれたい人は楽しめるかもしれないが、現地に元々ある雰囲気を楽しみたい人にとっては、なかなか興が削がれる旅行先になってしまった。

これからの旅行

それでは、これからの旅行は一体どういう場所を目指せばいいのだろうか。観光客が増えようと商業化が進もうと、もちろん行きたい場所を訪れるのが一番いい。しかし、どこへ行っても観光客だらけ、アジア人だらけ、日本人だらけではつまらないと思う人も多いだろう。ここまで来たら当然の流れとして、観光地でも世界遺産でもリゾートでも、まだ観光客が少ない旅先を選ぼうではないかという方向になる。それはどこなのか?旅行者は皆、テレビやガイドブックを頼りに話題になった人気の観光地へと殺到するわけで、そういう場所が観光客だらけになってしまう。だったらガイドブックを変えてみよう。

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バイロンベイの、観光客がほとんどいないビーチ

まず、5月の時点で今年既に25ヶ国周っている高城剛の本。彼はここ2年ほどずっと世界中の南の島を周り、観光ガイドブックにて紹介している。その多くは聞いたことのないような島やビーチばかりであり、まだ観光客が押し寄せていない穴場リゾートを紹介するのがこの本のコンセプトだ。ヨーロッパ、アジアだけでなく日本の島、沖縄のマイナーな離島なんかが含まれており、興味が湧いた人は参考にしてみてください。Kindle Unlimitedにも対応している。 

人生を変える南の島々。ヨーロッパ編

人生を変える南の島々。ヨーロッパ編

 
人生を変える南の島々。アジア編

人生を変える南の島々。アジア編

 
人生を変える南の島々。南北アメリカ&ハワイ編
 

ポスト・インターネット時代の本質(および言い訳)。|TSUYOSHI TAKASHIRO -BLOG

また、冒険旅行がしたいという人や変わった場所へ行きたいという人たちが、TBSのクレイジージャーニーで紹介された場所に行く例も実際増えているそうだ。僕が聞いたのは旅行先としても選びやすい、佐藤健寿が紹介した奇界遺産。タイや台湾、中国の寺だったりテーマパークなんかは比較的行きやすい場所で、番組で紹介された後に訪れている人も多いらしい。エチオピアのダナキル砂漠にある火山などはハードな冒険旅行になるが、元々一部のバックパッカーの間でも知られていた場所であり、行けないことはない。その他廃墟なんかは、普通の旅行で訪れるのは難しいかもしれない。 

奇界遺産

奇界遺産

 
世界不思議地図 THE WONDER MAPS

世界不思議地図 THE WONDER MAPS

 
奇界紀行 (角川学芸出版単行本)

奇界紀行 (角川学芸出版単行本)

 

奇界遺産はガイドブックではなく写真集

写真家、佐藤健寿についてのメモ - Letter from Kyoto

ガイドブックに頼らない

無理矢理訪れてみるという手段もある。よくわからないけれど、とにかく主要観光都市を外す。台北よりは台中、ロンドンよりはベルファスト、ベルリンではなくライプツィヒ、ウィーンよりはクラーゲンフルトまで行ってしまうとか、ケベックを通り越してガスペジーまで行ってしまうとか、バスや電車、船などを駆使してもっと郊外へ行ってみるとか。主要観光都市のついででもいいから、外したところへ2,3泊訪れてみればそれなりに楽しめるはずだ。人が集まるところのように、ド派手ではないかもしれない。でも旅先から帰ってみると、意外とそういう場所のほうが思い出に残っていたりする。

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現地在住の人に案内してもらったノバフタ

世界遺産ではない、旅行で訪れた珍しい場所 - Letter from Kyoto

海外の知り合いを頼る

外国人の知り合いがいれば、その人を訪ねる旅行もいいだろう。きっと歓迎してくれるだろうし、地元の人しか行かないような場所へ案内してくれたり、泊めてくれることもあるだろう。海外旅行先で、生活の内側へ入っていくなんていうことは普通の旅行ではまず経験できない。ただ、そもそも日本で普通に生活していたら、外国人の知り合いなんていない。外国人の知り合いが欲しければ、日本にいても作る手段はある。

一つは、日本に来ている外国人観光客をガイドしたり、泊まるところを提供する。そういった交流もネットを利用すれば簡単にできる。僕はカウチサーフィンを介して、先月イタリア人のカップルと会って食事をし、6月にはオーストリア人と会ってガイドしたりカフェに行ったりした。このように会って話した人はみんな「もしこっちに来たらうちを訪ねてくれ」と言ってくれる。それは決して社交辞令ではなく、本当に歓迎してくれる。

Stay with Locals and Make Travel Friends | Couchsurfing

もう一つは、日本語を教えるという手段がある。日本語を学びたい人と接点を持ち、親しくなればお互い遊びに来てくれという話になる。旅先に現地人の知り合いがいることほど心強いことはない。それだけでなく、旅行先ではお互いが友人として、普通の旅行では味わえない文化の中枢まで入って堪能することができる。

HelloTalk Language Exchange - Learn English Chinese Mandarin Korean Japanese Spanish German French Italian Russian Arabic App

Multi-lingual language learning and language exchange | Lang-8: For learning foreign languages

日本語を学んでいる外国人もそこそこ見つかる

カウチサーフィン

あらかじめ友達を作るなんて回りくどいことをしなくても、旅行先に住む知り合いではない外国人の家を直接訪ねてしまえばいい。このブログでは既に何度も紹介しているが、カウチサーフィンは元々外国人の家にタダで泊めてもらうサービスで、AirBnBの無料版のようなものだ。世の中にはそういうものがあり、僕も何度か利用している。カウチサーフィンで宿泊する家は普通の一般家庭であり、場所もほとんどは住宅地だ。ホテルがあるような都心や観光地近くなんてことは稀であり、バスや電車を乗り継いだ郊外に行くこともよくある。カウチサーフィンを利用するだけで、普通の観光では決して足を踏み入れることのない旅の時間を過ごすことになる。

カウチサーフィンを利用する際の確認事項 - Letter from Kyoto

英語に不安があれば

新しい旅行のスタイルを身につけるには、これまでと比べ英語も多少必要になってくるかもしれない。辞書とネットがあれば簡単な英語はどうにかなるものの、もう少し英語を身につけたいという人は日本にいながら英語を勉強することが可能だ。それについても以前少しまとめたので、興味があれば参考にしてください。

英語って結局どう勉強すればいいの? - Letter from Kyoto

大旅行時代

もしかすると、これから大旅行時代が幕開けるかもしれない。仮に日本人の海外旅行者が増えなかったとしても、日本に来る外国人がこれだけ増えている現状から察するに、世界各地の観光地には今まで旅行する余裕のなかった中国人やアジア人の一般層たちがこれまで以上にあふれかえる。今まで行っていたツアー旅行や世界遺産巡りなんていう普通の旅行は、これからもっと退屈なものになってしまうかもしれない。今までにバックパック旅行を楽しんでいたような人たちは、これからもっと秘境へ向かうことになるだろう。僕ら普通の旅行者も、これからの大旅行時代へ向けて、旅行の楽しみ方を変える時期が来ている。ホラもう目の前のそこまで!

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日本に帰ってきてからテレビでキューバ旅行のことを見かけることが多く、去年と今年ではまた少し変わっているかもしれない。インドなんかは元々日本人旅行者が多く、インド人そのものが圧倒的に多いため今訪れてもそれほど変わらないんじゃないだろうか。今年訪れたモロッコは日本人の旅行先として定番になっているものの、現地では日本人をほとんど見かけず、観光地化はされているがまだ楽しめると思った。

過去の旅行の日記