幽霊を見たことがない

母親が心霊番組やホラー映画が好きで、子供の頃からよく見ていた。昔だと夏休みの昼にやっていた「あなたの知らない世界」とか「ワイドウォッチャー」とか、つまりワイドショーをよく見ていた。ゴールデンだったら宜保愛子とかも流行っていた。瀬戸内寂聴もどちらかと言うと心霊番組の人という印象のほうが強い。もっとマイナーなところだと、深夜にやっていた「恐怖の百物語」とか。とにかく幼い頃からそういう番組を見て育ったため、幽霊の話や怪談みたいなのは身近に感じる。ただ、霊感みたいなのはよくわからない。幽霊や心霊現象、不思議なことは一度も体験したことがない。身近というのは飽くまでテレビや映画、ドキュメンタリー上のことで、「世の中にはそういうこともあるかもしれないね」という認識が育った程度だ。

 

怖いと感じなくなった

中学生の頃、映画の「リング」が流行った。その流れで「本当にあった呪いのビデオ」という心霊ドキュメンタリーのようなシリーズが人気になった。これは心霊写真のビデオ版であり、写真ではなく動く映像に幽霊が映ったもの紹介している。実際はほぼ偽物だと言われているが、素人の投稿映像から成り立っている番組で、当時はその演出の薄さが斬新だった。僕は中学生の頃から大学生になってまでそれをずっと見続けていた。シリーズは現在も続いており、最近は見ていないがパート60いくつとかまである。幼いの頃からずっとそういうのを見ていたため、いつしかホラー映画とか、怖い話とか、心霊番組とかに慣れすぎて何も感じなくなっていた。

(余談だが、怖いことと驚くことの区別がつかない人がいた。ホラー映画などの演出で急に何かが出てきて驚くことはあるけれど、それは怖いのとは違うよという話をしたら「一緒だよ!」と強く主張してきた。驚きと恐れは全然別の感情なんだけど、その子は区別がつかないようだった。)

怖く感じないからと言って、嫌いかというとまた違ってくる。ただ、子供騙しみたいなのがつまらないとは感じる。それはスカイダイビングをする人がジェットコースターに乗って何も感じないのと同じだろう。そう言えば先日見たクレイジージャーニーのベースジャンパーはすごかった。アイガーは映画でしか見たことなかったが、あんなことをやっていれば他に何してもつまらなくなるだろう。

それとは全然同じではないが、似たような感覚で、心霊モノとかホラーとか全く怖く感じない。ソウシリーズとかも流行ったが、ああいうスプラッター映画は怖いというよりただ気持ち悪いだけ。グロ気持ち悪いは怖いとも驚くともまた別の感情になる。

幽霊を見たいわけではない

実は肝試しをしたことがない。そういう機会がなかったといえばそうなんだけど、よく心霊番組を見たりしているような人たちは真の恐怖を求めて肝試しをやってもおかしくない。それはUFOマニアが宇宙との交信を試みたりオカルトファンが降霊術を試したりするのと同じだ。でも僕は肝試しに心霊スポットに行きたいとは思わない。飽くまでも外から見ていたり話を聞くから面白いのであって、自分が現場に行っても何も面白くない。何も起こらなければつまらないし、もし何かが起こったら困る。それはもうエンターテインメントの域を超えてしまう。別に恐怖体験がしたいわけではない。

「怖いのか」と言われたら怖いのだろう。それは現場が怖くて度胸がないというより、もし実際に何かがあったら怖い。仮にその場に幽霊がいたとして「こんなもの平気だ」と言う人はただのおかしなやつだろう。「害はないんだよ」とか言い出したらそれこそ霊能者の域だ。僕はそういうのではない。肝試しでよく語られるような、呪われて死んでしまったりするようなのは単純にリスクが高すぎる。得られるものは何もなく、割に合わない。仮に現場にそういうのがいたとして、吹っ飛ばせるような能力がある人と一緒で安全が確保されるなら行ってもいいと思う。

幽霊を信じるかどうか

こういう話自体をバカバカしいと思う人は多いだろう。僕のことをよく知らない人や、初対面の人と話すときの会話で持ちネタとしてあるのが、過去に自殺物件に住んでいたという話。2ヶ所住んでいた。僕が住む直前の住人がどちらも自殺している。一室は室内のクローゼットポールで首吊り、もう一室はベランダから飛び降り自殺だった。これは僕が会社員の頃の話で、周りにいた同僚はみんな僕が自殺物件に住んでいることを知っていた。だから当時家に訪ねてくる人は全然いなかった。それはいいとして、その2ヶ所の部屋は、合計3年ぐらい住んでいた。別に何もなかった。ただ人が死んだ部屋というだけで、何かいわくつきの物件だったわけではない。それがわかっていたから僕は住んだ。現実に何もないことがわかっていれば平気だ。だからといってそれは、僕が幽霊を信じないということにはならない。

では僕が幽霊に対してどういう意見を持っているかというと「わからない」に尽きる。何せ経験したことがなく、存在するという客観的な証明もない。かと言って存在しないと断言できるわけでもない。大学生の時に付き合っていた彼女に、一度ナマの心霊写真を見せてもらったことがある。彼女が高校の修学旅行へ行った時の写真で、沖縄のひめゆりの塔かどこかで撮ったものだった。友達が撮った写真で彼女も写っており、変な物も写っていた。ポラロイドかフィルムか忘れたけれど、デジタルではなく、素人が撮ったものでわざわざ細工をしたとも考えにくい。そんなことをして誰も得しない。これは不可解だった。

高校のときに付き合っていた彼女はいわゆる霊感のある人だった。一緒にいるときにも家のドアが開いたり、窓の外に何かいたみたいでなんか言ってたけど、僕には当然見えなかったしよくわからなかった。他にもあらゆる心霊番組、怪談、ドキュメンタリーを見てきて「本当にあるのかもしれない」と思う程度のことはあった。だから僕にとって幽霊というのは、この地球上に果たして超能力を持った人が存在するのか、この広い宇宙に異星人が存在するかどうか、という話と同じくらい「わからない」という言葉でしか表現できない。信じるとも信じないとも言えない。

怖い話が好きな人は、ネットでもたくさん読むことができる。昔流行った、死ぬほど洒落にならない話を集めたサイトなんか面白いんじゃないだろうか。これはもちろん創作が多いだろうけれど、素人の個人が投稿したものを集めたサイトで、興味があればどうぞ。そんなに怖くはないと思う。

死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?

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