「ブレードランナー2049」を無料で見てきた。感想・考察

やっと見てきたブレードランナー2049。直前までどの日のどの時間に行くか決めあぐねていた。上映スケジュールを確認すると13:15と21:00の2つしかない。なんじゃこの選択肢の少なさ。上映期間が終わりつつあるということで、回数が減っているみたいだ。しかも上映時間は3時間あるようで、レイトショーの21時を選んでしまうと終わるのは夜中の0時、寒い上に公共交通機関は終わってます。結局平日の真っ昼間から映画館へ足を運んだ。

無料で見た

新京極のMOVIX、自転車を駐めようとすると駐輪場は満車、しかたなく少し遠いところに駐めて再び映画館へ入る。このとき既に13時10分、上映5分前。入った瞬間に呼び止められた。

「もうチケットは購入されましたか?」

まだ買っていなかったから「まだです」と答えると、

「それはよかった。アプリを登録してもらえると映画の無料券をお配りしてますが、いかがですか?」

と言われた。「もう映画始まるんですけど」と言うと「2,3分で済みますよ」と言われ、アプリ紹介のブースについていった。ユーネクストというUSEN系の動画配信アプリで、月々2000円ほどだが1ヶ月無料だそうだ。無料期間の途中解約も料金はかからないということで、その場で契約することになった。解約のやり方までレクチャーしてくれた。スマートフォンが低速モードだったため時間がかかり、上映時間は過ぎていたが最初の10分ぐらいはCMなので映画には間に合った。

無料券はブレードランナーに限らずなんでも適用できます。期限は2ヶ月ぐらいあったから、もし事前にチケットを買っていたらまた別の映画を見るのに使っていただろうなー。もしレイトショーを選んでいたら、さすがに夜9時は営業マンが帰っていたかもしれない。配信サービスのU-NEXTは松竹系の映画館と提携しているらしいので、松竹系の映画館に行けば同じような目にあえるかもしれません。

ネタバレ無しの感想

予習として前作を見たばかりだったから、どんもんかなーと思ったら前作見ていてよかった。前作の細かい設定が結構出てくる。あと、YouTubeで公開されている2022や2036、2048といった短い断片も全部見ていったほうがいい。ブレードランナー2049単体では半分ぐらいしか楽しめないファン向けの映画だった。アメリカの興行成績がイマイチだったというのもそのへんのせいだろう。

映画『ブレードランナー2049』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

This is サイバーパンク

サイバーパンクの金字塔と呼ばれた前作ブレードランナーは、SFファンの間で人気が高く、ブレードランナー以降のあらゆる作品に多大なる影響を与えた。しかし前作に関しては一般的には「眠い」とか「つまんない」という意見も多い。映画や物語として見れば、そういう意見が出ることもわからないではない。ただ僕にとってのブレードランナーは世界観の映画で、あのハイテクと猥雑のスラムみたいな世界観がやっぱりすごく好きだ。FF7のミッドガルなんかは影響を受けているというよりほぼそのまんま取り入れているから、あーいうのが好きな人にはもってこいだと思う。

いくらでも見れる

そう、特にあの街並みが好きなんです。それは今作の2049にもしっかり継承されている。あの世界観を舞台にした映画だったら、今作のような主人公Kの物語じゃなくても、たとえそのへんの一般人を主人公にしたつまんない日常映画でもずっと見ていられる。サイドストーリーのドラマシリーズとかやってほしい。2049を既に見ていた知り合いがいて「もう一回見たい」と言っていたから「そんなに良かったの?」と聞くと「3時間もあって話がちゃんと整理できなかったから」と言っていた。僕は全然違う意味でもう一回見たい。ただあの世界観に浸かりたい。

世界改変体感

映画を見たり小説を読んだ後にときどきあるのが、その後世界が違って見えること。映画館に入る前と出た後では、同じ景色が違って見える。それぐらい映画の中に引き込まれていた。ブレードランナーの世界の中にある当たり前の日常、暗くていつも雨が降っていて、希望がない未来の日常。さっきまでその場所にいたから、映画館を出て自分の日常に戻ったときに、さっきまでのディストピアをここにも探してしまう。そして映画の世界に戻りたくなる。それも30分ぐらい経てばいつもどおり、元の風景に戻ってしまうんだけど、世界の見え方が変わる体験を久々に味わった。

ネタバレ有りの感想

ネタバレをメインで行っていくわけではなく、ここからは見た人がわかればいいような内容。

前作の登場人物

デッカードを知る人ということで老人が出てきた。最初誰かわからなくて最後に折り紙を見せたから「あー警察のパシリか」ってわかったけど、あれも前作をちゃんと覚えている人でないとなんのことかわからない。前作ではデッカードとレイチェルを逃がすところで確かに重要な役柄ではあったんだが、デッカードとまともに会話していたわけでもなく、折り紙以外はあまりにも印象が薄い。あいつなんなの?殺されていないところを見るとレプリカントではなかったみたいだが、今作で使うほど重要人物だったんだろうか。

乗り物や設備について

ドローンが出てきたのは個人的に見どころだった。前作にドローンは出てこなかったが、あらゆる機械を音声で操作するというところは前作から引き継ぎつつ、同時に現代から描く未来っぽくもある。ドローンはもちろんプロペラで動くわけではない。動力はなんだろ、スピナーと同じかな。

スピナーは前作とほぼデザインが変わってなかった。ブレードランナーの銃も同様。街並みや設備についてはあれだけ現代SFっぽく変更しているにも関わらず、銃と乗り物が同じ。スピナーに関しては雨が多いブレードランナーの世界で今の車と同じアナログのワイパーを使用している。あれはすごく違和感ある。多分前作のデザイン設定をそのまま使っているのだろう。

Kの物語

メインストーリーについては、レプリカントのKが人間性を獲得する話ということでいいのだと思う。もともとあった人間性だから、芽生えるとか目覚めると言ってもいい。同胞殺しを生業にして、日常生活においてはレプリカントということで差別され、最悪の生活をしているKには人間らしさを育む余地がなかった。唯一の生きがいがAIの彼女だが、それもプログラムであることがわかっているから、気持ちの一時的な逃げ場でしかない。

そこへある日突然、自分の物語を獲得する。最初は自分が主人公だと勘違いしていたが、脇役だとわかりつつも、それでも大きな物語の一部になれることを実感する。これって今年あったマーク・ザッカーバーグのハーバード卒業スピーチみたいだ。「アポロ計画の頃、NASAで働いていた掃除夫には、人類を月に送る手助けをしているという貢献の気持ちがあった」

たくさん残った疑問点など

疑問に思ったのは、Kのシナリオはどこからどこまで仕組まれていたものなのだろう。レプリカントの組織がKを引き込むにあたり、随分手の込んだことをしていた。あれは組織へ引き込むにあたっての通過儀礼ということなのか。Kの記憶はデッカードの娘のものを改竄した記憶だったが、K以外のレプリカントも自分がデッカードの子だと勘違いしたことがあった。自分がデッカードの子、レプリカントと人間の間に産まれた奇跡の子であるという勘違いの段階を踏んで、主人公の可能性を持つことにより人間性を取り戻させないと、あの革命みたいなのに参加する意識は芽生えない。そういう意味での通過儀礼。

レプリカントの組織はなぜKに近づいたのか。発端はブレードランナーであるKに仲間が殺されたことだったけれど、どの段階でKを同士に迎え入れようと思ったのか。スカウトマンみたいな存在が、常にいろいろ目星をつけているのかもしれない。そして仕組まれた娘の記憶や、デッカードに近づこうとするレプリカントを片っ端から組織にスカウトしているとか。

デッカードの扱いについて

レプリカントの組織についてはまだわからないことがある。Kに発信機を仕込んでたからデッカードと会うことはわかっていただろうに、デッカードを助けようとはしなかった。デッカードは犬と暮らしていたし、組織とは意見の食い違いか何かでたもとを分かっているのだろう。レプリカントの組織はKにデッカードを殺させようとしていたから、ずっと厄介払いしたかったのかもしれない。

なんでだ?スカウトのためにデッカードをいいように使っておきながら、デッカードを殺す理由がわからない。捕まるのを防ぐことだってできたはずなのに。最初ウォレス社と組織がつながっているのかと思ったが、ウォレスがデッカードの娘の居場所を知らないから食い違う。このあたりは真面目に検証している映画評論かなんかを見てみよう。

翻弄された人たちの物語

そんなふうにいろいろ仕組まれた上で翻弄されただけのKとデッカードだったが、Kはかわいそうと見ることもできるし、不本意な形だとしても、結果としては人間的な尊厳を獲得することができてよかったとも見れる。ライアン・ゴズリングを始め俳優陣は良かった。女性上司はハウス・オブ・カーズで奥さん役だった人だ。キャプテン・フィリップスに出ていたソマリ人も出てきた。他はハリソン・フォード以外全然知らないけど、ジョイ役とかいい感じにAIっぽかった。

viceのインタビューはおもしろかった。