トランプのエルサレム首都認定から、パレスチナ問題を考える

先日トランプ大統領の発言が話題になった。

トランプ米大統領、エルサレムをイスラエルの首都と承認 - BBCニュース

トランプが「エルサレム首都」認めれば中東は火薬庫に逆戻り | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

Hamas: US decision on Jerusalem is a war declaration | Palestine News | Al Jazeera

エルサレムが首都と認定されることは何が問題なのか。パレスチナ問題について学校で習ったことやニュース記事を読んでも

  • パレスチナ人が住んでいた土地にユダヤ人がイスラエルを建国した
  • ユダヤ人は旧約聖書の時代から自分たちの土地だったと言い張っている
  • エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地

この程度のことしかわからない。イスラエル建国までの経緯や中東戦争の実態については、この3行では言い表せないややこしいことがまだまだいっぱい詰まっている。それについて疑問を持った人や、復習したい人もいるかもしれない。

僕はここ数年パレスチナ問題に注目していたため、数年前ちょうどその入り口にいた。この数年間に知ったことが、もしかすると他の人の入り口として役に立つかもしれない。そう思って僕たち素人向けの、簡単な情報ソースを紹介する。

映画でわかるパレスチナ問題「パラダイス・ナウ」

この映画を見ただけでパレスチナ問題はわからない。しかし、わからない視点からこの映画を見るのも意味があることだと思う。この映画はまさに、パレスチナで生まれた人の視点で描かれている。パレスチナで生まれた人が、子供の頃からパレスチナの歴史事情に通じているわけではない。ただその場所で生まれ、どのように育ち、どんな感情を抱いているのか、パレスチナ人の目線から知ることができる。

「パラダイス・ナウ」は2007年に公開された映画で、比較的最近の事情が描かれている。時代的に歴史ではなく同時代の身近な物語として見ることができる。この映画にインスピレーションを受けてから、ここを入り口に本などで歴史を知るという順番をたどっても、十分にアリだと思う。

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新書でさらっと復習「世界史の中のパレスチナ問題」

こちらは教科書的な本になる。パレスチナ問題を真面目に追っていくと本当にわけがわからなくて、頭がごちゃごちゃになる。そんなときに、時系列に整理された歴史年表的な一冊があると飲み込みやすい。「世界史の中のパレスチナ問題」はまさにそういう本になる。

新書なのに400ページ超え、1000円以上するが、Amazonレビューの評価はかなり良い。世界史的な観点では、第一次大戦からアラブの春に至るまで、パレスチナ問題の根幹となる現代史の部分のみ扱っている。読んでいて難しく、眠くなることもあるかもしれないけれど、一度は通読して後からわからない部分だけ読み返すにも向いている。手元に置いておきたい一冊。

小説で気持ちを知ろう「太陽の男たち/ハイファに戻って」

これは「現代アラビア語文学の傑作」と評価されている、パレスチナ人の書いた小説の短編集だ。前知識なしに文学としても読めるが、パレスチナ問題についてある程度知っておいたほうが、よりシリアスに読むことができる。

この本を読むことでわかるのは、事実に基づいたパレスチナ人、特に難民の立場であったり、気持ちであったり、主張だったりする。舞台の中心となっている時代はナクバと呼ばれる1948年の大厄災から、「ハイファに戻って」が書かれた1970年頃、ちょうど中東戦争の真っ只中にあたる。パレスチナ解放闘争の活動家でもあった著者は、1972年に車に仕掛けられた爆弾で亡くなっている。

その他

もっとさわりだけを知りたければ、映像の世紀第10集「民族の悲劇果てしなく」で一部触れられている。また第一次世界大戦のアラビアのロレンスについては、新・映像の世紀「百年の悲劇はここから始まった」が詳しい。

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ユダヤ人でありながら共産主義者となり、イスラエル国家を支持しない立場をとったアイザック・ドイッチャー著の「非ユダヤ的ユダヤ人」も非常に参考になる。

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いずれの本も映画も専門的なものではなく一般向けであり、入り口としては入りやすいかと思います。国際情勢に関心のある人、中東問題に意識が向いている人、パレスチナ問題をこれから考えていきたい人は、手にとってみてください。過去の日記でもパレスチナ問題を整理しようと試みている。