海外ドラマ「マインドハンター」感想・評価

先日の日記に書いたことと被るけれど、マインドハンターはNetflixオリジナルの海外ドラマだ。1970年代のアメリカが舞台で、フーバーが去ってから5年後のFBIを題材にしている。この時代は犯罪の傾向が変わる転換期だった。これまでのような身代金や怨恨、痴情のもつれ、思想犯といったわかりやすい動機の犯罪ではなく、猟奇殺人が目立つようになった。

今までにない種類の犯罪に対策が追いつかない中で、新たな捜査基準、手法が必要になってくる。このドラマは70年代にプロファイリングという捜査手法を確立した人たちの、そこに至るまでの悪戦苦闘を取り扱ったドラマである。

あらすじ

物語は若手ネゴシエーターのホールデン捜査官が、立てこもり犯との交渉に失敗したところから始まる。これまでFBIで学び、経験したことが通じなくなってきていることを実感するホールデンは、同様の感想を抱いているFBI教官と意気投合し、行動科学課のビルを紹介される。

行動科学課ではアメリカ国内の警察署を周り、FBIが取り扱った事例や対処法を講義しながら各地の警察から現状を知り、肌で感じるという仕事を行っている。ホールデンはビルの行動科学課に加わり、アメリカ全土の異常犯罪に遭遇していく。

自身の力不足を感じたホールデンは、過去に猟奇殺人で収監された犯人にインタビューを行い、犯罪者の心理や傾向、動機といったものを伺うことで、対策の糸口を見出そうとする。同時にビルの知り合いである心理学の教授、ウェンディ・カー博士から専門家の学術的視点を取り入れ、徐々にプロファイリングという捜査手法を確立していく。

実在する犯罪者たち(ネタバレ)

このドラマには実在する犯罪者を描いたキャラクターが登場する。一番最初はエド・ケンパー。15歳で祖父母を殺害。その後も殺人が続き、犠牲者は合計10名。ドラマ内では既に収監されている。身長2mを超える大男だが、物静かで知的。逆に怖い。登場シーンからしてめっちゃ怖い。ホールデンのインタビューに対しては、落ち着いて紳士的に応える。

殺人博物館〜エド・ケンパー

もう一人重要なのはジェリー・ブルードス。こちらも収監されている犯人で、ホールデンたちのインタビューに答える。巨漢のデブ。常に嘘をつき、ふざけた調子で笑い、まともに応答しない。しかし帰り際にドキッとする言葉を吐く。

「ビッグ・エドはホラ吹きだ。どうせあんたらは全部真に受けたんだろ?ヤツの思う壺だ」

ジェリー・ブルードスは別の刑務所に収監中のエド・ケンパーと繋がっていることをほのめかす。

「刑務所なんて編み物サークルみたいなもんだ」

殺人博物館〜ジェリー・ブルードス

様々な猟奇殺人の犯人と向き合っていく過程で、犯人の傾向と分類を行っていく。最初はシークエンス(順番に起こる)・キラーと呼ばれていた呼称は、途中からシリアル(ひと続きの)・キラーに改められる。収監された犯罪者を分析しながらも、今全米で現実に起こっている猟奇殺人の捜査に少しずつ、新たな手法を適用していく。

なかなかうまくいかない話(ネタバレ)

こういうあらすじで紹介すると、順調な成功物語を描いたドラマのような印象を受けるかもしれないが、実際は全く反対だったりする。犯罪者の心理分析をするという手法はFBIという組織になかなか理解されず、受け入れられず、ホールデンは上司から嫌われている。最初はホールデンの肩を持って同行していたビルは、猟奇殺人者と何度も向き合っていくうちに精神的に疲弊していく。ホールデンはカー博士の形式的なやり方と合わず、独自の臨機応変な対応を取ってしまい、それがまたFBIでも問題の種となる。

シーズン1はそういう内輪の破綻がピークに達したところで終わる。マインドハンターはシーズン5まで企画されているらしいから、序盤のシーズン1の終わりかたとしては早くも危機を感じる。おもしろいからまだまだ続くとは思うが、なんせ海外ドラマだからいつ打ち切りになるかわからない。

デヴィッド・フィンチャー、新作『マインドハンター』は全5シーズンの構想 | THE RIVER

安定のおもしろさ

マインドハンターがなんでこうもおもしろいのだろうと思ったら、監督がデビッド・フィンチャーだった。デビッド・フィンチャーといえば「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」「ファイト・クラブ」「ゴーン・ガール」「ドラゴン・タトゥーの女」これらの映画監督として有名だ。どれも好きな作品ばかりで、最近では同じNetflixで「ハウス・オブ・カーズ」というドラマの監督をやっていた。

マインドハンターは犯罪捜査モノということで、この中だと「セブン」や「ドラゴン・タトゥーの女」に近い。安定、安心のおもしろさだと言える。早くシーズン2を配信してほしいが、配信日はまだ確定していない。

マインドハンター | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

フィンチャー監督「マインドハンター」第2シーズン決定 - シネマトゥデイ

個人的な感想

マインドハンターはおもしろいんだけど、続けて見るとけっこうしんどかった。猟奇殺人を取り扱っているわりにグロ描写は少ないが、それよりも精神的にくるものがある。異常犯罪者にインタビューを重ねる毎に明らかになっていくその傾向や精神状態、過去のトラウマに触れるに連れ、サイコパスと呼ばれる彼らと自分にどれだけ違いがあるんだろうかと思えてくる。

自分は彼らのような虐待を受けていなければ、ましてや殺人者でもない。しかし社会に適応できないという点では似たり寄ったりだ。彼らには原因があったが、自分にはない。彼らにはきっかけがあり、それは自分にも起こり得る。捜査官が彼らにインタビューするにあたり、人と人として向き合っている中で、彼らのほとんどの部分は我々と何ら変わりがないことに気づかされる。と言うか、基本的には同じ。虐待を受けたという経験によって歪められた自意識や、何か悪いトリガーが重なっただけで、彼らは終身刑を受けることになった。

巻き込まれた被害者やその身内がかわいそうなのは言うまでもなく、原因やトリガーがあったからといって加害者が許されるわけでもないが、そういう加害者に対してシンパシーを感じてしまう。きっかけさえあれば自分もそうなり得る。僕に限らず、多くの人がそうだと思う。シリアル・キラーと言えば自分とは全く別の存在であるかのように思いがちだが、現実はそう特別ではない。特別ではない彼らに、自分がならないようにするには、環境と自ら注意を怠らないことが肝心だろう。時代に関連付けられることから、犯罪者個人の問題だけでなく社会病理の一つととらえることもできるかもしれない。

関連書籍

Netflixが見れない人は関連書籍でも。マインドハンターの原作はノンフィクション本で、著者は元FBI捜査官とドラマそのままだ。しかしレビューを読んでいると原作本はあまり評判がよくない。同様の話を扱ったもう一つの本「FBI心理分析官」の方が評判いいっぽい。

マインドハンター FBI連続殺人プロファイリング班 (ハヤカワ文庫NF)

マインドハンター FBI連続殺人プロファイリング班 (ハヤカワ文庫NF)

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)

  • 作者: ロバート・K.レスラー,トムシャットマン,Robert K. Ressler,Tom Shachtman,相原真理子
  • 出版社/メーカー: 早川書房
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