よくしゃべる俺

先日飲みに行ったとき、7時間ぶっ続けで喋っていた。相手の人はさぞ疲れただろう。ごめんなさい。そして僕はよく喋る人間、話好きだと思われている。無理もない。ただ実際のところはどうだろうか。

話好き?

話好きかと言われたら微妙なところだ。いつでもどこでもなんでも話しているわけではなく、話し相手を探していることもない。一人でいることは平気な方だと思う。人がたくさんいる中で一人なのも慣れている。話す必要がなければ話さない。話したい相手がいなければ話さない。話したいことがなければ話さない。つまり、話すことそのものが好きというわけではない。

「誰でもいいから何でもいいから常に話したい」という明石家さんま的な人が、僕が思う話好きだ。だとしたら、僕は話好きではない。活字中毒も同じようなもので、彼らは文字なら何でもいいから常に読んでいたい。僕は活字中毒ではないから、読みたいときに読みたいもの以外は読みたくない。同様に、僕は話好きではないから話したいときだけ話す。

聞き上手?

ときどき「聞き上手」と言われることもある。聞き上手とはなんだろうか。耳を傾けふんふん頷いて同意して共感していたらそれで聞き上手なんだろうか。だとしたら、僕は聞き上手ではない。インストラクションの技法で習った簡単なラポール構築の手段として、言われたことをただ繰り返すという方法があるらしい。心理学的にはちゃんと話を聞いてくれていると認識され、簡易に信頼関係が構築できるそうだ。僕はそれ、絶対やらない。なぜなら自分がされて嫌だから。

「それ俺が今言ったやん」

「同じこと繰り返してるだけやん」

この言葉を今まで何度言っただろうか。基本的にオウム返しされると、バカと喋っているみたいで腹が立ってくる。僕の話の聞き方は、「それってこういう意味で言ってるの?」と自分にわかるように解きほぐして真っ直ぐにつなげて聞き返す。一般的にはこれをやられるほうが腹立つそうだ。バカにされているように感じて信頼関係を築けないとか。しかし僕は相手の話をそのまま聞いたって理解できないから、ほぼ毎回これをやる。だとしたら聞き上手なわけがない。

話し上手?

「話すのが上手い」と言われることも極稀にある。しかしこれは明らかに上手くない。基本的にはネタを用意していないと話せない。セリフ一覧まで用意しないと話がこんがらがってうまく伝えられないことも多い。得意どころか話下手の領域だ。アドリブは効かない。

よくやる話し方の一つとして、説明話法、解説話法がある。因果関係を明らかにして明解に筋道立てて話すだけ。説明は今までくさるほどやってきたから、伝わっていないと困る。ときどきわかりやすいと言ってくれる人もいるが、感情には全く訴えかけない。事務的でおもしろくもなく、嫌われる話し方だ。

人気者ってなんだ

しかしながら、ときどき自分は「人気者」みたいに言われることがある。先日の会話でも「愛されキャラ」とか言われ、今日はまた別の人から「川添さん人気者だからね」と言われた。なんじゃそれ。いわゆる「人望」は僕にはない。リーダーシップとかとらないし、人がたくさんいるの苦手で、人を率いたり前に出たりするのは好きじゃないから極力やらない。顔や名前を覚えるのも苦手で、そもそも人をあまり見ていない人間に人望があるわけない。

じゃあ何を持って「愛されキャラ」とか「人気者」なんて言われたのかというと、それはただいじられてるだけだ。挙動や発言がときどきおかしいからおもしろがられているに過ぎない。珍獣扱い。それをもって「愛されている」とか「人気者」とか言われるのはさすがにちょっと違うんじゃないかと思う。別にいいんだけどさ、だって違うと思うでしょ?

もしかしてすごいのかも?

このように、たくさん喋っているだけであらぬ誤解を受ける。それは波及して広まっていき、いつの間にか身に覚えのない印象が定着する。ただの自慢に聞こえるかもしれないが、ここで「俺ってもしかしてすごいのかも?」なんて浮かれた勘違いをするとドツボにはまる。

僕はただ興が乗ったときに長々と喋ることがあるだけで、話好きの明るいやつでは決してない。見誤られると期待を裏切る。聞き上手でもない。興味のない話は聞こうともせず、話に隙があればズバズバと突っ込んで相手が黙ることも多い。ただ頷いて共感してくれるような人間では決してない。話すの上手いわけがない。これはときどきしか誤解されない。理路整然と話したって相手はキレる。人気者?いじられてるだけだ。よく見ればわかる。

これらの僕に対する印象は全くの見当違いだ。そんな僕の立場を羨む人がいると聞いた。そんなのはもってのほか。あなた本当になんにもわかってないねーと言いたくなる。周りにあらぬ印象を与えたければ、どんどん喋ればいいんじゃないの。