モバイルマネーをご存知ですか?

ケニアではMpesa(エムペサ)、タンザニアではWakala(ワカラ)というのが有名らしい。アフリカにいる人はみんな使っているモバイルマネー、聞いたことありますか?僕はなかった。

モバイルマネーとは、電話番号と連動したモバイルマネー口座にお金を預けたり送金したりできるサービスであり、電子マネーの一つの形だ。お財布ケータイのようなNFCや、wechatペイのようなQRコードが利用されているわけではなく、電話番号だけ。電話番号を用いた技術だから特別な装置を必要とせず、フィーチャーフォン(ガラケー)でも利用できる。

これ、本当にこっちの人みんな使ってる。

どうやって使うのか

simを購入すればそれぞれ電話番号を持つことになる。そこに、モバイルマネーアカウントという銀行口座のようなものを開設できる。キャリアの窓口で「モバイルマネーを使いたい」と言えば口座を開く手続きをしてくれる。パスポートは必要。キャリアによっては居住許可証などの提示が求められることもある。

口座ができた。お金を預けるときは、モバイルマネーのエージェントに行ってお金を預け入れたいと言い、現金を渡す。するとSMSで入金通知が来る。これだけ。めっちゃ簡単。口座に入っている金額はSIM Appという機能から随時確認できる。

引き出すのは逆のことをすればいいだけ。SIM Appのメニューから送金を選び、エージェントの番号と金額を入力。送金が完了すると、エージェントより現金が渡される。simのネットワークを介してデータのやり取りが行われ、現場の現金で帳尻を合わせると考えればわかりやすいだろう。

特定の番号をダイヤルすると

SIM Appのメニューが起動する

このモバイルマネーエージェントが街中のいたるところに存在し、日本で言うところのコンビニATMのような役割を果たしている。モバイルマネーはATMから引き出すこともできるが、ATMの数自体がが圧倒的に少ない。

このような送金やりとりは、何もエージェントに限った話ではない。個人間でだって可能だ。誰かのモバイルマネー口座へ一方的に送金することもできるし、現金が足りないときに友人へモバイルマネーを送って現金と交換してもらうこともできる。他にモバイルマネー対応のレストランで支払いができたり、ネット通販もモバイルマネー支払いができたりする。国や地域によっては、既にキャッシュレス化が進んでいるところもあるそうな。

何が便利なのか

我々日本人の感覚だったら「銀行使えばよくね?」もしくは「クレジットカード使えばいいじゃん」と思うだろう。しかしこっちの銀行は本当に少ない。支店は大都市にしか存在せず、まちなかを探してもATMなんてそうそう見つからない(僕の住む街には存在しない)。銀行口座を持つにもハードルが高く、銀行なんてものは一般庶民が気軽に使えるものじゃない。ましてやクレジットカードなんて持っている人は限られており、使える場所もほとんどない。

しかし、電話番号なら誰でも持っている。エージェントはどこにでもいる。モバイルマネーがアフリカの庶民にとって、銀行やクレジットカードの役割、もしくはそれ以上を担っている。そしてモバイルマネーは銀行ATMやクレジットカードに比べ、設備投資や導入コストが格段に安く済む。途上国ならではの経済を回すツールが、モバイルマネーというわけだ。

僕の使い方

僕は銀行の口座を開いたが、小切手を使用するタイプの銀行らしく、使い勝手が全然よくない。かといって現金を大量に持ち歩くのは管理しづらく、危険でもある。だからほとんどのお金をモバイルマネー口座に預けている。モバイルマネーならいつでもどこでも引き出し、預けることができるから、銀行からお金を引き出すためだけにわざわざ大都市に行ったりする必要はなくなった。

そろそろネット通販を始めるつもりなので、その支払いも全部モバイルマネーを利用する予定だ。しかし日常生活において、この国はまだまだキャッシュが強く、キャッシュレス決済というのはオンラインぐらいでしか行われていない。