平成レトロとダウンタウン

毎週聞いているPodcast「底辺文化系ラジオ二九歳までの地図」にて、平成の懐かしコンテンツを語る平成レトロ回という特集が、去年からずっと組まれていた。そこでは平成を代表する音楽やホビー、テレビ番組、アニメなどについて語られていた。興味があれば聞いてもらいたい。

平成レトロ: 底辺文化系トークラジオ「二九歳までの地図」

そこでは語られなかった内容のうち、僕が平成を思い返す中で触れておきたいことがいくつかある。ひとつはダウンタウンである。お笑い界において、平成とは=ダウンタウンの時代ではなかっただろうか。僕が小学生の頃、日曜8時からフジテレビで「ダウンタウンのごっつええ感じ」が始まり、小学生のうちに幕を閉じた。放送されたのは1991年(平成3年)12月8日から1997(平成9年)年11月2日まで。それ以降もダウンタウンの勢いはとどまることを知らず、「ガキの使い」「ダウンタウンDX」は今でも放送されている。終了した代表的な番組としては、「ヘイヘイヘイ」や「リンカーン」などがあった。

ダウンタウンはおもしろくなくなった話

ダウンタウンが平成のお笑いを代表するという言葉には、裏の側面もある。すなわち「ダウンタウンは平成で終わったんじゃないか?」という説だ。もちろんダウンタウンは今でもテレビで活躍しており、新しい時代のメディアであるAmazonプライムビデオにおいても、ドキュメンタルの人気は高い。しかし、ダウンタウン、その核である松本人志が「おもしろくなくなった」と言われ始めてからずいぶん久しい。「ダウンタウンはもう終わっている」という見方をする人だって、もはや少なくはないだろう。

すべらない話の松本人志

個人的な意見で言うと、2004年から始まった「人志松本のすべらない話」が印象強い。もう15年も前になるが、僕は初回から数回は見ており、後にゴールデンで特番が組まれるお化け番組となった。この番組自体はおもしろかったが、そこで語られる松本人志のすべらない話は、正直なところ一番つまらなかった印象がある。にもかかわらず、回りの若手とも呼べない芸人たちが御大松本をもてはやし、愛想笑いともつかないヨイショをする状況は見てられなかった。

松本人志その人がおもしろくないというわけではなく、もともと松本人志の芸風は「今から面白い話しまっせ!」といって語りだすようなタイプではなかった。どちらかというと嘘か本当かわからない突拍子もない妄想のような話が誰も予想しない方向に膨らんで爆発するといったスタイルだったように思う。だからこの番組の趣旨自体が、もとから松本人志向きではなかったのではないかと感じている。この番組において松本人志が目立っておもしろかったのは、あくまでサイコロの目が出て話し始める部分ではなく、他の人の話の合間合間のツッコミやら被せの部分においてだった。

もう笑えないダウンタウン

では、松本人志がおもしろくなくなったわけではなく、場が向いていなかっただけなのか。僕が思う「ダウンタウンの終わり」は、ダウンタウン的な笑いを活かす場がなくなったことそのものにあるように思う。それがまさに平成の終わりと重なるのではないか。記憶に新しいところでは、ワイドナショーにおける指原莉乃へのコメントや、ダウンタウンDXにおいて浜田雅功が渡辺直美をブタ呼ばわりしたことがあった。

これらは今の時代、もはや笑えない。ネタとして通用しなくなった。今となっては「ごっつ」におけるカッパのコントやチャレンジャーなんて放送もできないだろう。そんなネタは山ほどある。

それは何も、ダウンタウンに限った話ではない。昔のネタが今放送できないなんて、昭和の芸人なら誰にでもある。さんまのように器用に時代に合わせていける人もいれば、たけしのように笑いを全然やらなくなった昭和の芸人もいる。紳助のように周りの拒絶反応が強すぎて、平成のうちに引退するハメになった芸人もいた。そんな中でダウンタウンは、新しい時代との解離が顕著に現れ、実に窮屈なところで大御所のような役割を演じているように見える。松本人志はたけしのように、映画監督としてフェードアウトする方向もうまく行かなかった。

ネタをやってほしい

ただ、それでもやはり、僕は今でもダウンタウンはおもしろいと思う。平成だからウケた、時代性の強いネタを抜きにしても、初めて見るネタがおもしろい。「夢で逢えたら」は僕は放送当時見ることができず、数年前に初めて見た。新鮮におもしろかった。DVD化されていないのが残念でならない。ダウンタウンが若かった頃のおもしろさを目の当たりにすると、時代性だけでなく加齢による衰えというのも大きいのだろうな。今のダウンタウンはフリートークばかりだから、お笑いをやってほしいと思う。

松本人志のピークは一人ごっつだったと思うので、見たことがない人はぜひ今でも笑えるか確認してみてほしい。