うなぎの話

今年に入ってから、何年かぶりにうなぎを食べた気がする。何度か食べる機会があった。うなぎなんて長い間食べていなかったような、まあ僕のそういう記憶はあいまいだから気のせいかもしれない。でもうなぎはめったに食べない。自ら進んでうなぎ屋に入ったことがない。うなぎを食べに行こうと誰かを誘って行ったこともない。昔働いていた大阪のオフィスの近くにうなぎ屋があって、前を通るたびにタレの匂いが漂っていたが、結局一度も入ることはなかった。うなぎが嫌いなわけではないけれど、機会に恵まれなければずっと食べないでいるだろう。僕にとってのうなぎとは、そういう食事だ。

2年ほど前、うなぎ絶滅のニュースがあり、値段が高騰していたことを覚えている。だから僕はてっきり、うなぎは絶滅したものだとばかり思っていた。だけど今年は普通に売っていて、普通に食べられた。普通の値段で。うなぎはいつの間に復活したのか。養殖しているはずだから、天然物は絶滅して養殖だけになったのか。そもそも絶滅なんてなかったのか。うなぎのいなくなった世の中になっても困りはしないが、やや残念ではある。その程度にうなぎは嫌いではない。

まずいうなぎもあるのだろうか。中国産がどうとか言われていたが、今のところ中国産のうなぎは食べたことがない。そこまでしてうなぎを食べたいと思わない。牛丼屋にも一時期うな丼のメニューがあった。多分安いと思う。しかし、わざわざ牛丼屋で安いうな丼を食べようと思ったことがなかった。そこまでしてどうしても食べたいほどうなぎが好きではない。でもやはり、安いうなぎはまずいのだろうか。それは気になる。食べようとは思わないが。

うなぎを自ら食べに行かない理由の一つとして「高いから」というのは大きい。魚のどんぶりがなぜ3,000円とか4,000円とかするのだろう。希少価値なのか、調理が難しいのか、うなぎそのものが高いとしたら希少価値なのだろう。僕が一番うなぎを食べていたのは、名古屋に転勤していた頃だった。3年ばかり名古屋で過ごしていたんだけど、その3年の間に何度もひつまぶしを食べることになった。うなぎなんて1年に1回食べればいいほうで、それもない年はいくらでもあったのに、名古屋にいたときだけ年に数回ひつまぶしを食べていた。飽きなかった。

特別に好きなわけではいうなぎを、名古屋にいたからって、なぜそんな頻繁に食べることになったか。それは仕事で東京からお客さんを迎えることが多かったから。東京から人が来ると、名古屋のご当地メニューでもてなすことになっていた。そのときにうってつけだったのが、ひつまぶしだ。うなぎを嫌いな人は少ない。それに、他の名古屋名物って、味噌カツにしても名古屋コーチンにしてもB級グルメばかりで、お客さんをもてなすには物足りない。だから必然的に毎回うなぎが選ばれるのであった。仕事だから割といい店ばかり。

こういうとき、地元京都だったらどこにお客さんを連れて行くのだろう?僕は地元で働いたことがないから見当がつかない。わかりやすい京料理の店なんてあるのか?あるんだろうけど、行ったことがない。そういう堅苦しい付き合いが今後あるとは思えないから、あまり考えなくていいのかもしれない。友人が市外から来たら、京料理などではない近所の店に連れて行くと思う。