読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

「若き写真家が見る歪んだ世界」シリーズがおもしろい

デジタルカメラやスマートフォンのカメラが普及し、職業写真家でなくとも写真を撮ることが身近である現代において、さらにInstagramなどの表現媒体も広まり、写真家ではない人たちも、忘年会や七五三、結婚式や旅行の記録としての写真ではなく、表現としての写真を撮ることが日常的になった。良い機材とタイミングが合えば良い写真が撮れる。それは一見するとプロがお金をもらって撮る写真とそう大差ないのでは、とさえ思えてくる。違いがわからない。そもそも普段、広告に利用される商業写真以外で、フォトグラファーが撮る写真というのを見る機会に乏しい。彼らは一体どのような写真を撮るのか、きっかけはなんなのか、どういう物の見方をして、どういった作品が出来上がるのか。写真そのものを見る機会もなく、ただ写真を見てもそれがなんなのかさっぱりわからない僕らにとって、写真家自身の経歴と解説を混じえながら作品を紹介している「若き写真家が見る歪んだ世界」シリーズがおもしろい。

若き写真家が見る歪んだ世界 | VICE JAPAN

スポンサードリンク

 

「若き写真家」と題して、ここでは20代から30代の日本人の写真家たちの経歴と、作品の紹介、解説がインタビュー形式で行われている。はっきりとアートを意識したものもあれば、写真を通して自分の内面を写したものや、商業的な目線、社会風刺、ただ面白いと思ったものを撮っただけというものまである。それぞれにおいてだいたい共通するのは、写真を撮るその根底に何かがあり、意識的にしろ無意識にしろ、思いというか思想のようなものが写真を通して表現されているところだったりする。ここが素人と写真家を分ける決定的な違いかもしれない。そういった、写真を見ただけではわからないもやもやとした意識のようなものが、インタビューの文章を読むことで形になって見えてくる。本当は写真を見るだけで読み取れるのが理想であり、評価する人たちの目線はそうなのだろう。

中には感性だけで撮っている 若き写真家が見る歪んだ世界vol.3水谷吉法 | VICE JAPAN ような人もいる

ただ実際のところ、これだけ文章によって解説されていても、それが「わけわからない」という人は多い。そのあたりは「写真を見ただけでわかる人」「文章と合わせてわかる人」「どっちもわからない人」といった段階があるようだ。ここには様々な写真家とその作品が紹介されており、タイプも観念も価値観も一定ではないため、どれか一つぐらいは自分にもわかる、共感できるような人と作品が見つけられるかもしれない。もしわからなくても、好きになれるものはある。興味が湧いたら一通り見て、自分の好きな写真、もしくは写真家を探してみてください。まだ全部読めていないけれど、僕が好きだったのはvol.1のこの人。

無機質な建物と、そこを通りかかる人の後ろ姿、山の中にある開発中の高速道路、カーブを描き並んで生えている木々など、何の変哲もないようだが、どこか薄暗く奇妙な印象を受ける。この人が表現したいものこそまさにそこで、日常的に感じている他愛のない小さな違和感やズレを写真に写している。

矢島さんが感じる違和感というのは、ビジュアル的な見た目の違和感もあるのかもしれないですが、人があたかも自然の物事であるかのように作り出した人工物や、空想上の幸せ感を具現化した薄っぺらさに対して、それを知ったときの違和感という方が強いように感じます。

vol.11、12あたりはわかりやすくて、最初読むのにおすすめです。

若き写真家が見る歪んだ世界 vol.11鈴木育郎 | VICE JAPAN

若き写真家が見る歪んだ世界 vol.12いくしゅん | VICE JAPAN

vol.12のいくしゅんさんはダイアラー