なぜ「BABYMETAL」は海外で成功して「Perfume」や「きゃりーぱみゅぱみゅ」は失敗したか

BABYMETALの成し遂げた偉業

BABYMETALについて名前しか知らなかったが、最近ネットで話題になっていたからいろいろ見た。彼女らの偉業というのが2つ挙げられている。一つはイギリスのウェンブリーアリーナという場所で単独ライブをやったこと、もう一つは日本人として53年ぶりにビルボードにランクインしたこと。この2つは一体何がどう偉業なのだろう。

 

ビルボードってのはアメリカで最も権威のある音楽ランキングで、簡単に言えばオリコン世界版みたいなもの。そう、アメリカだけでなく世界である。僕が日本を出て知ったのは、日本の音楽シーンがいかに狭いかということだった。今まで出会ったどの国の人も、音楽についてはだいたいこのビルボードランキングをフォローしていた。ビルボードランキングが世界中の人にとっての音楽シーンの指標だった。ここに入ったってことはすなわちアメリカだけでなく世界中の人に届いている、そして世界中のアーティストたちはここにランクインすることを目指す。日本のアーティストはどうだろうか?そんな人いる?日本とそれ以外の国々において、音楽の指標はそれぐらいギャップがあった。当然ながらそういうところに日本の音楽がランクインすることは滅多にない。だって53年ぶりなんでしょ。BABYMETALがランクインしたことがいかに偉業なのか、音楽に疎い僕にもわかりやすい。

ビルボード - Wikipedia

もう一つはイギリスのウェンブリーアリーナで単独ライブをやったこと。これの何が凄いのかわからなかったから調べた。まずこのウェンブリーアリーナ、ロックミュージシャンの聖地らしい。ビートルズを初めとした数々のアーティストがコンサートを行ってきた。日本のロックバンドに限らず、ここでライブをやることは夢だそうだ。「それってそんなに難しいの?」というのが素朴な疑問だった。いくら聖地とは言え、コンサートをやるだけなら会場を借りるだけで済む。難しいのは、そこの客を埋めることらしい。日本人アーティストが会場を借りたとしても現地の客は入らない。日本から1万人ぐらいファンを連れてこないと埋まらない。果たしてイギリスまでファンを1万人連れてこれる日本人アーティストがいるだろうか。しかし、BABYMETALについては日本人客が500人ほどだったそうだ。現地の客で埋まった。それが偉業らしい。

ウェンブリー・アリーナ - Wikipedia

歓喜のツイッター民たち

ここまではネット上に既にたくさん書かれている前置きで、ここからは他の日本人アーティストと比較してみる。よく、日本人アーティストも海外進出を目指して挫折している。BABYMETALが成功して他が失敗した理由とはなんだろうか。その差は、違いはなんだろうか。その一例としてPerfumeときゃりーぱみゅぱみゅを持ってこよう。Perfumeもきゃりーぱみゅぱみゅも海外である程度評価を受けているが、BABYMETALほど飛び抜けてはいない。

日本の市場向けに振り切った

Perfumeが最初注目された時の印象は「よくわからないけどなんか凄い」だった。当時のJ-POPシーンにはテクノ色なんてなかったから新鮮だった。同時期に、Perfumeの音楽プロデューサーである中田ヤスタカのcapsuleは、FLASHBACKというアルバムを出しておりiTunes上で海外ウケしていた。Perfumeのよくわからない凄さを中田ヤスタカが海外向けに売り出せば「これ、いけるんじゃね?」と思った。でも実際はそうならなかった。ポリリズムで火が点いてからのPerfumeは、思いっきり日本の市場向けに売り出された。テレビに出まくって音楽番組に出まくって、CMに出まくった。日本では確かに一斉を風靡した。でも僕は、あのままの路線で海外行けば良かったのに!!とすごく残念に思ったことを覚えている。ただPerfumeの時代にはyoutubeから注目される環境も整っておらず、厳しかったかもしれない。


海外進出が意識されたアルバムのタイトル「JPN」

きゃりーぱみゅぱみゅも同じだった。きゃりーぱみゅぱみゅについてはそもそも、初めyoutubeで海外に注目されたのがスタートだった。そのままの路線で行けば良かったのに!!何故かまた日本の市場向けに振り切った。確かに日本では紅白に出たりして売れた。でも世界に知れ渡ったのは最初の一曲で終わった。youtubeで注目という土壌がせっかく出来上がったのに、日本の市場に振り切ってしまったのが原因だろう。両方とも中田ヤスタカが音楽プロデューサーを務めている。中田ヤスタカ自身、日本のPOPSにこだわりがあるようでどうしてもそこに目線が行くのかもしれない。それ以上に日本の音楽レーベルが海外を中心に売り出そうなんて発想にならなかったのだろう。


PONPONPONの視聴回数は9千万回

BABYMETALの特異性

日本においてそういうことは普通だと思う。多少海外で評価を得たところで、まず日本の市場をおさえてから海外進出を狙う、というのが今までの日本式スタイルだろう。逆に言えば、それをやるから今まで失敗してきた。BABYMETALについては、先に日本よりも海外で評価された。彼女らを支えるチームがすごかったのは、そこから日本の市場に合わせるのではなく、海外でウケたポイントを掴んでそっちに振り切ったところだろう。これがもし日本でそこそこ評価を得ていると、日本のファン目線や音楽業界のしがらみなどがあって海外向けに振り切るなんていう自由が効かない。Perfumeもきゃりーぱみゅぱみゅも日本の市場に合わせた音楽とキャラクターを提供して日本で売れてしまったばかりに、今さら海外ウケする仕様に振り切ることは不可能だ。BABYMETALがもし先に日本で売れていたら、ただの中堅ヘビメタアイドルで終わっていたと思う。少なくともビルボードのランクインやウェンブリーなんて偉業には到達しなかったはず。

音楽シーンには全く疎いが、日本の音楽市場と世界市場は全く違うということを海外にいて肌で感じている。先程も少し述べたが、僕が海外で感じたのはPOPSは既にグローバル化しているということだった。どこの国へ行っても同じ曲を耳にする、カナダでもオーストラリアでもスペインでもスウェーデンでもそうだった。ビルボードを中心とした英語圏の音楽シーンが世界を席巻している。ヨーロッパのアーティストは英語圏出身ではなくても初めから英語で歌う。中には自国語で歌う人もいるだろうが、POPSで世界的に有名になるのはほとんど英語で歌ってビルボードランクインした人たちだ。これを日本でやったとしたら、絶対に日本の市場ではウケない。日本の音楽市場は世界の市場と全く別物で、大きく解離している。そのため日本でウケるためには日本向けに、世界でウケるためには世界向けに、それぞれ別の手法で売りださなければならない。日本で成功してから海外進出が成功しない理由もここにある。海外でウケるためには日本でウケないことをやらなければならない(例えばKARATEなんていうタイトルの曲で露骨な日本アピールをすることみたいに)。しかし一度日本で売れてしまうと、日本のファンや業界のしがらみなどを切り捨てて海外向けの売り方に180度切り替えるなんていうことはできない。BABYMETALはまだ日本で火が点く前、初期の段階で世界向けに売り出したことになる。それは日本において異例なことだが、日本の音楽業界において一般的な、国内市場に限定した売り出し方が、海外においてはむしろ特殊かもしれない。そもそも海外では国内と世界の音楽シーンが繋がっているんじゃないだろうか。


これはどう見ても海外だけを意識した曲だろう

BABYMETALの今後

最近になりBABYMETALが日本においてもこれだけ受け入れられたことで、一つの心配事がある。ここまで読んでいただいた方ならおわかりだと思うが、BABYMETALがこれから日本の市場向けに振り切らないかが一番の心配事だ。それをやってしまうと今まで築き上げた偉業が全て水泡と化してしまう。ここまで世界的に評価され築いてきたものは、日本のオリコンチャートで1位に輝くことや紅白に出ることなんかが屁に思えるぐらい偉大だ。それを全てかなぐり捨てて日本の市場向けに音楽を提供しようものなら、日本の音楽業界は終わりに等しい。そんなことはやらないと思うが。


このビデオでレディ・ガガに見出された幸運は大きかっただろう

「LIVE AT WEMBLEY ARENA」 BABYMETAL WORLD TOUR 2016 kicks off at THE SSE ARENA WEMBLEY(2016.4.2) [Blu-ray]

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※追記:自分が書こうとしていたのは成功の秘訣ではなくて、成功した人としなかった人でどこが違ったかってところ。ファンの方からコメント頂いたように全然書けてません。自分はcapsule好きだったから、どちらかというとcapsule好きの視点から書いています。DJが世界で活躍していたご時世に乗っかってほしかった。

※ビルボードビルボードと書いたけれど、これも言ってみれば結果論だった。海外の人がビルボードをフォローしてるってのは結果的にという話だった。日本人がオリコン見てCD買わないのと同じ。

※以下のブログで音楽的な見地や戦略など、宇多田ヒカルにも触れて詳細に語られています。