バイト中の話

土曜日の朝から農場でバイトがあった。朝8時に作業員の集合場所へ集合し、ビニルハウスへと移動した。今日の作業は枝から葉っぱを取っていく作業だと聞いていた。そろそろ実の収穫が始まるということで、収穫の際に邪魔な葉っぱを事前に除去していくということらしい。聞く限り簡単だと思っていた。しかし現場に着いて受けた説明は、幹の根元から膝の高さぐらいまでというかなり低い位置の葉っぱを取る作業だった。立ち仕事だと思っていたのに、どうやら地面を這いずりまわって作業しないといけないみたいだ。それを朝8時から夕方5時まで。なかなかつらい。

夕方5時までということだけど、それは飽くまで目安の時間であり実質5時を過ぎようが終わるまでやらなければいけない。ビニルハウスは計6棟ある。作業には、いつも作業をする男性が僕も含めて4人来ていた。4人がそれぞれの配置に付き、地面に膝をついて葉っぱを取っていく作業を始めた。これがとても大変で、かなり低い位置から始めるため自動販売機の下に落ちた100円玉を取るような態勢で作業しなければならない。ずっと立膝で作業しているため、2時間も経てば膝がもげそうに痛くなる。赤く腫れ、膝の表面と骨の間にゲル状の層ができる。葉っぱの枝はそこそこ硬いが、手で折れるため軍手で作業する。そして別の枝を間違って折ってはいけない。3時間ほど作業してふと手を見ると、軍手が一箇所破けている。もちろん始めた時は破けていなかった。枝を折る際によく使う部位だった。

昼の12時、ちょうど4時間経ったがビニルハウスの3棟目に差し掛かったところで作業はまだ半分も終わっていない。這いずりまわって枝を折り、葉っぱを除去していく作業を4時間続け、僕たち4人は既に満身創痍だった。近くで作業をしていた一人が

「あーもう疲れた!もう限界だ!」

と嘆いていた。しかし作業はまだ半分も終わっていない。僕は彼に向かって「まだ半分だよ」と告げた。彼は悲惨な顔をしていた。それでも僕らは作業を続けていた。

僕は彼よりも2週間早くここに来ていたため、少しだけ収穫作業をやったことがあった。ふとその時のことを思い出した。そう言えば「下の方の実は採らなくていい」と言われていたことを思い出した。僕はそのことをつい口に出してしまった。

「あれ、そう言えば収穫の時『下の方の実は採らない』って言われてた気がするんだけど」

近くで作業している彼は、その言葉を聞いて呆然とした顔で僕を見た。

「え、じゃあ俺たち何のためにコレやってんの…?」

口を開け、悲しそうに素朴な疑問をつぶやく彼を見て僕は吹き出しそうになった。